第5話 彼女の妹②

「エッチしちゃったね……」

「ああ、そうだな……」

「アタシの体、どうだった?」

「凄く良かったよ」

「えへへ、そっか。なら良かったよ」

「……」


 今日、優菜の妹と肌を重ねてしまった。


 はぁ……何やってんだ俺はっ。

 今更後悔してしまう。

 絶対後悔すると分かってたのに、体が言う事聞いてくれなかった。

 どうしてもこの子とシたかった。

 実際、涼花ちゃんの体は気持ちよかった。


 気持ち良すぎていつも連続で出来ないのに、今日は連続で涼花ちゃんを求めてしまった。

 しかも、涼花ちゃんは初めてだった。

 その証拠にベッドのシーツに赤い血が付着していた。

 それを見て罪悪感を感じる。


「涼花ちゃん……初めてだったんだな」

「う、うん……」

「ごめんな、初めてが俺で」

「ううん、別にいいよ。アタシ、和樹くんのこと好きだし」

「……」


 涼花ちゃん俺のこと好きなんだ。

 ここは嘘でも「俺も好きだよ」と言ったほうがいいのかもしれない。

 けど言えなかった。

 この子には嘘つきたくなかった……。


「和樹くんはまだお姉ちゃんのこと好きなんだよね?」

「たぶん好きだと思う……」

「そっか……」


 俺の返事に涼花ちゃんは悲しそうに俯く。

 辛そうだった。


 あんなことされたのに、俺はまだ優菜のことが好きだった。

 だって俺達2年も付き合ってたんだぞ。

 二年だぞ? それって結構長いと思うぞ。


 2年間、俺達は色んな思い出を作った。

 本当に幸せだった。

 結婚まで考えてた。

 優菜とは死ぬまでずっと一緒にいると思ってたのに。

 

 早く優菜のこと忘れたいっ。

 アイツのこと忘れて楽になりたいのに。

 だが、俺の心はアイツのことをすぐに忘れられるほど単純じゃなかった。


「ねぇ和樹くん……」

「ん? どうした?」

「そのさ……またムラムラしたらアタシのこと呼んでね。いつでもヤらせてあげるから」

「……いいのか?」

「うん、いいよ。アタシ和樹くんとエッチすんの好きだし。和樹くんはアタシとすんの嫌い?」

「いや、嫌いじゃないよ……」

「ふふっ。ならいつでもアタシのこと呼んでね。たくさんヤらせてあげるから」

「お、おう……」





 ◇◇◇




 ––次の日––



 昨日、俺は涼花ちゃんとエッチした。

 しかも彼女は初めてだった。

 未経験の女の子とエッチするのは初めてだったから本当に緊張した。

 俺なんかが初めてでよかったのかな……?

 本人は凄く喜んでたけど。


「やばいっ、なんかムラムラしてきた」


 昨日の行為を思い出し、体の一部が熱を帯びる。

 最近までEDだったとは思えないほど元気だった。


 くそっ……ムラムラが止まらんっ。

 このムラムラを涼花ちゃんにぶつけたいっ。

 もう一度あの子とエロいことたくさんしたい。


 だが、俺と涼花ちゃんは恋人じゃない。

 ただの友達だ。

 大切な友達とそんなことしていいのかな?

 いや、絶対ダメだろ……。

 これ以上、あの子とセックスしたら友達からセフレに成り下がってしまう。

 それだけは避けないと……。


 けど、もう我慢できねぇ……。


 我慢できなくなった俺は家に涼花ちゃんを呼び出す。

 彼女はすぐに来てくれた。


「またアタシとヤりたいの?」

「うん……ダメかな?」

「ふふっ、ダメじゃないよ。アタシも和樹くんとシたいし」

「そっか」

「うんっ」


 俺達は自然と顔を近づける。

 気づいたら唇が重なっていた。

 恋人のようなキスを楽しむ。


「んっんっんっ……」


 大人のキスをしながらお互いの服を脱がせ合う。

 床に服や下着が散らばる。

 やっと俺達は全裸になった。

 

「涼花ちゃん……凄くキレイだよ」

「う、うん……ありがと」


 彼女の体は美しかった。

 雪のような白い肌。

 大きな胸と引き締まったお腹。

 安産型の大きなお尻。

 メリハリのある体にドキドキが止まらない。


「涼花ちゃんっ」

「和樹くんっ」


 再度俺達は唇を重ねる。

 キスしながら涼花ちゃんの体を触る。

 色んな箇所に触れると、涼花ちゃんは「んっんっ」と甘い声を漏らす。 


 行為中、俺はあることに気がついた。

 

「あっ、やばいっ……」

「ん? どうしたの?」

「俺、ゴム持ってないんだけど……涼花ちゃん持ってる?」

「アタシもないけど……」

「……」


 まじかよ。涼花ちゃんも持ってないのか。

 ぶっちゃけ生でしたいけど、流石にそれはダメだよな。

 赤ちゃんできるかもしれないし。

 仕方ない、近くのコンビニで避妊具買うか。


「アタシ、別に生でもいいよ」

「え……?」


 この子、今なんて言った?

 なんか凄い言葉が聞こえてきた気がするけど。

 気のせいかな?


「涼花ちゃん、今なんて言った?」

「だから……生でもいいよ?」

「ま、まじで?」

「うん、和樹くんならいいよ……。生でする?」


 生でするのはダメだ。

 だって俺たちまだ学生だぞ?

 赤ちゃんできるかもしれないし。

 もし赤ちゃんできたら絶対生でエッチしたこと後悔する。

 そんなこと分かってるのに、俺は欲望を抑えられそうになかった。


「本当にいいのか?」

「うん、いいよ……きてっ」

「……」

「え!? きゃっ♡ ちょ、ちょっと!? 和樹くんっ……んっんっ、あっあっ」

「……」

「そんなにアタシと生でしたいの……? あっあっ……んっんっ、も、もうエッチなんだから♡」


 理性を失った俺は涼花ちゃんを押し倒し、生でしてしまった。

 そして、最後は彼女の中で終焉を迎えた。


 俺は優菜と何回もエッチしたことがある。

 けど生でしたことは一回もなかった。

 俺が「生でやらせてくれ」と頼んでも彼女は「無理」と断ってきた。

 そりゃ断るよな。赤ちゃんできるかもしれないし。

 理解はできるけど、ちょっとだけ不満だった。


 けど涼花ちゃんは生でヤらせてくれた。

 この子は俺の全てを受け入れてくれた。

 最高だっ、この子は本当に最高だっ。


 俺は次の日も涼花ちゃんを呼び出し、何度も彼女の体を味わった。

 優菜の事を忘れるために、涼花ちゃんを貪りまくった。


 こんなにヤってるのにまだ俺達は付き合ってなかった。

 そう、恋人じゃないのにほぼ毎日こんなことしてるんだ。

 今の俺達は……セフレってヤツなのかな?

 

「あっあっ……か、和樹くんっ」

「……」

「んっんっ……和樹くんっ、す、好きっ、大好きっ」

「……」

「愛してるよっ、和樹くん愛してるよっ……んっんっ」


 

 涼花ちゃんは本当にいい子だ。

 俺が「これしたい」と言ったらなんでもヤらせてくれる。

 ちょっぴりハードなプレイにも付き合ってくれたし、中出しまで許してくれた。

 最高だ。


 この子のおかげで今の俺は本当に幸せだった。

 いや、違う。

 そう思い込んでるだけで、実際は全然幸せじゃなかった。


 傍から見ると今の俺は幸せに見えるんだろうけど、全然心が満たされない。


 やっぱり優菜じゃないとダメだ。

 涼花ちゃんじゃ満たされねぇ。

 くそっ、俺はまだあのクソビッチのこと好きなのか……。

 あんな酷いことされたのに。


「涼花ちゃんっ……もうそろそろだっ」

「んっんっ……いいよっ、和樹くんなら中に出していいからね」

「……」


 ラストスパート俺は涼花ちゃんを激しく求めて、最後は彼女の中で終焉を迎えた。

 行為が終わり、涼花ちゃんが抱きしめてくる。

 俺も彼女を抱き返した。


 すると、彼女は「えへへ」と幸せそうに笑う。

 その笑顔は姉の優菜にそっくりだった。


「今日も中に出してよかったのか……?」

「和樹くんなら別にいいよ……」

「け、けど赤ちゃんできるかもしれないし」

「その時は生むよ」

「……」

「あっ、別に責任とか取らなくていいよ。勝手に生んで勝手に育てるから……和樹くんは気にしなくていいからね」

「……」


 涼花ちゃん、なんで君は俺に優しくしてくれるんだ……。

 意味わかんねぇよ。

 いや、理由はわかってる。


 この子は俺のことが好きなんだ。

 大好きだから俺の望むこと全て叶えてくれるんだ。

 本当にいい女だ……。

 顔はよくて、スタイルもよくて、優しくて、俺の言う事なんでも聞いてくれて。

 

 こんな子、なかなかいないぞ……。

 それでも俺は優菜のことが忘れられなかった。


 ちっ、早く忘れてくれよっ。

 あんなカス野郎、もう思い出したくもないのにっ。


 いつまでもウジウジしている自分にイライラしてくる。

 なんで俺はこんなに情けないんだっ。

 いつまでウジウジしてるんだっ。

 早く立ち直れよっ……。

 アイツのこと忘れて涼花ちゃんのこと心から好きになれよっ。

 どうしてそれができないんだっ。

 くそっ、くそっ、くそっ。

 

 はぁ……最近自己嫌悪してばっかりだな。

 たぶん、俺は自分のことが大嫌いなんだ。

 今の俺を愛してくれるのは涼花ちゃんしかいない……。


 もしこの子にまで裏切られたら俺は……自殺するだろうな。


「涼花ちゃんは……ずっと俺の味方だよな?」

「うん、味方だよ」


 俺の言葉に涼花ちゃんは即答してくれた。

 それだっ、俺はその言葉が欲しかった。

 この子はいつも俺がほしいものを与えてくれる。

 完璧な女の子だ。


 俺は涼花ちゃんの胸を揉む。

 もちろん彼女は俺の行動を受け入れてくれた。


「ふふ、おっぱい好きだね」

「おっぱい嫌いな男なんかいないよ。なぁそんなことより、もう一回シていいか?」

「もちろんいいよ……アタシの体むちゃくちゃにしてっ。乱暴にしてもいいよ?」

「乱暴はしたくないよ……涼花ちゃんのこと大事にしたいし」


 俺がそう言うと涼花ちゃんは目を丸くする。


「ほんと和樹くんは優しいな……お姉ちゃんが羨ましいよっ」


 俺が優しい? 

 涼花ちゃんそれは違うよ。

 俺は優しくなんかない。

 どちらかというと最低な人間だ。


 涼花ちゃんは俺の表面的な部分しか見てないから『優しい』と評価できるんだ。

 俺の内面を知ったらこの子も俺のこと嫌いになるんだろうな……。


『あっあっ』

『彼氏のよりいいだろ?』

『うんっ……和樹のより気持ちいいっ!! もうアイツの体じゃ満足できないよ! あっあっ』


 突如、高峰とエッチしてる優菜が脳裏に浮かんだ。

 ちっ……またか。


 最近こういう妄想ばっかりしてしまう。

 こんなの想像したくないのに、勝手に下品な映像が浮かび上がるんだ。


 昨日は夢にも出てきた。

 なぁ……もうやめてくれよ。

 頼むからやめてくれっ。こんな夢見たくねぇよ。

 優菜の顔すら見たくない。

 お前の顔見てると気分が悪くなるんだっ。

 酷いときは食べたもの吐いちゃうんだよ……。

 

 くそっ……。

 なんで俺がこんなに苦しんでるのに、優菜と高峰は幸せそうにしてるんだ。

 どうして被害者の俺がいつまでも苦しんで、加害者は幸せな生活を送ってるんだよ。

 普通逆だろ。

 おかしいだろ。


 許せねぇっ。やっぱりアイツら許せねぇよっ。

 俺がやるしかない。

 この俺が優菜と高峰を地獄に落とすんだ。

 復讐してやる。アイツらの幸せな生活を俺の手でぶっ壊してやる。


 ははっ、はははっ……。


 そうだっ、そうだよっ。

 復讐すればいいんだっ。

 あのカス野郎を地獄に落とせばいいだけだったんだ。


 優菜、高峰。

 お前らの幸せ、俺が壊してやる。

 何もかも絶望に染めてやる。

 あぁぁぁ~、楽しみだっ。

 早く明日にならないかな。

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