第11話 復讐

 優菜と付き合って一ヶ月が経った。

 一ヶ月経っても俺と優菜は仲良しだ。


 コイツは俺のこと大好きだし、俺もコイツのことが大好きだ。愛してる。

 昨日もデートしてからホテルでたくさん体を求め合った。

 口でしてもらったし、胸でもしてもらった。

 俺がしたいプレイ全てヤらせてもらった。

 ほんと、優菜はいい女だよ。


 コイツ、俺がしたいこと全部ヤらせてくれるんだ。

 前なんかメイド服着てエッチしたし、ハードなやつもヤらせてくれた。

 ア○ルプレイまで許してくれたよ。

 優菜もお尻は初めてだったからめっちゃ緊張していた。もちろん俺も初めてだったから緊張したよ。

 あれは最高だったなぁぁぁ~。また今度ヤらせてもらおう。


「晴人!! んっんっ……」

「優菜! 優菜!!」


 現在、俺達は保健室のベッドで体を重ねていた。

 俺が求める度に優菜は甘い声を漏らす。

 色んな表情を見せてくれる。


 俺、やっぱりお前のこと大好きだ。絶対孕ませてやるっ。子どもができたら二人で育てようなっ。


 突然、ベッドを囲っているカーテンが開かれた。


 ちっ……なんだ? 

 俺達はプレイを中断してカーテンを開けた犯人を探す。

 犯人はすぐ見つかった。

 俺も知ってる男だった。名前も知っている。

 佐藤和樹。優菜の元カレだ。

 コイツがベッドを囲っていたカーテンを開けたんだ。

 

 俺と優菜の邪魔しやがって!! 絶対許せねぇっ!!

 俺は佐藤を睨みつけ、口を開いた。


「なんだよお前!? 俺と優菜の邪魔すんなよ!! 今いいところだったのに!?」

「……」


 もうすぐフィニッシュを迎えそうだったのにっ。

 お前のせいであの高ぶっていた気持ちが沈んでしまった。

 もうすぐだったのにっ。くそっ、邪魔しやがってっ……。

 コイツの顔面、殴ろうかな?


「俺さ、復讐は意味ないと思ってるんだ。だって復讐しても何も生まないし、過去も変わらないし。スッキリはするのかもしれないけどはっきり言って時間とエネルギーの無駄だ。俺はどんなに辛いことがあっても絶対復讐なんかしないと心に決めてたんだ。俺、無駄なこと嫌いだし。実際、初めは優菜と高峰に復讐するつもりなんかなかったんだ。お前たちのことは忘れて前を向く予定だったけどな……」

「……」


 え? なんだ? 急に佐藤が語りだしたぞ……。

 ふと優菜を窺うと彼女も混乱していた。

 混乱している俺と優菜を無視して、佐藤は話を続ける。


「優菜に浮気されたのがトラウマで……最近全然寝れないんだ。目瞑ると優菜に浮気されたこと思い出して、気分が悪くなるんだよ。酷いときは優菜の顔想像しただけで食べたもの全部吐いちゃうんだ。昨日も食べたもの全部吐いちゃったよ……。あと、優菜に浮気される前は毎日7時間以上寝れてたんだ。結構寝てるだろ? 俺寝るの好きだからさ。けど今は毎日2時間ぐらいしか寝れねぇよ。あんなに寝るのが好きだったのに、お前たちのせいで今は寝るのが怖いよ……大袈裟だ、と思うかもしんねぇけどマジで寝るのが怖いんだ……。お前たちのせいでまともな生活すら送れねぇよ。なのに、なんでお前らは幸せそうなんだ? 俺はこんなに苦しんでるのに、なんで加害者のお前らは幸せそうなんだよ!! おかしいだろ!! 普通逆だろ!! 悪いのはお前らなのに!! 許せねぇ!! お前らだけは絶対に許せねぇ!! 復讐は無意味? 過去は変わらない? 何も生まれないし時間とエネルギーの無駄? だから何なんだよ!! そんなのどうでもいいんだよ!! お前らが不幸な目に遭うだけで復讐する価値があんだよ!! 殺してやる!! お前らをここで殺してやる!!」


 話し終えると同時に佐藤は金属バットを俺達に見せてくる。

 は? なんであんなの持ってるんだよっ……。それで何するつもりだよっ。

 まさか俺達のこと殺す気か?

 いやいや、待て……。

 流石に殺したりはしないだろ。佐藤みたいにヘタレに人を殺す勇気なんかないはずだっ……。

 じゃあどうして金属バットなんか持ってるんだ? あれで何するつもりなんだ。

 俺は内心焦っていた。今の佐藤が怖くて仕方なかった。

 俺は慌てて口を開いた。


「お、お前!? それで何するつもりだ!!」

「何ってお前らを殺すに決まってるだろ?」

「こ、殺す……? 冗談だよな?」

「冗談? 何言ってんだお前。俺は本気だぞ。まさか俺が人を殺すことすらできないヘタレ野郎だと思ってるのか? 心外だな。俺はやると決めたらとことんやる男だぞ」

「……」


 俺を殺す? う、嘘だろ……?

 なぁ嘘だよな?

 佐藤の顔は真剣だった。嘘を言っているようには見えない。本気なのか……?

 本気で俺達を殺す気なのか……?


「ま、まじで俺らのこと殺すつもりかよ……?」

「ああ、殺すよ」

「ま、待ってって……。そんなことしても意味ないだろっ。確かに俺らを殺したらスッキリはするかもしれねぇけど、お前もその家族も不幸になるぞ? わかってるのか?」

「ああ、お前に言われなくてもそんなことわかってるよ。全て分かった上でお前らを殺すんだ」

「……や、やめろっ。そんなことすんなっ。土下座するから許してくれっ。なぁ頼むよ」

「土下座? 俺がそんなの許すと思ってんのか?」

「許してくれないのか?」

「許すわけねぇだろ!! 俺の怒りは土下座なんかで鎮まるほどシンプルじゃねぇんだよ!! 馬鹿かお前はぁぁ!!!」


 突如、腹部に激痛が走った。

 

「がはっ……」


 い、痛いっ……。

 痛すぎるっ。


 俺を腹部を押さえながら床に崩れ落ちる。

 おそらく、佐藤が俺の腹部を金属バットで殴ったんだ。

 クソっ、なんだこの痛みはっ……。

 痛すぎて涙まで出てきたっ。


 ふと佐藤に目を向けると、金属バットを頭上に持ち上げていた。それを俺の右腕に振り下ろす。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 右腕に激痛が走った。人生で一度も経験したことがない痛みだった。

 なんだこれはっ……。

 痛いっ、痛すぎるっ。

 コイツ、まじで俺達のこと殺すつもりなんだっ……。

 本気だったんだっ。

 嫌だっ、こんなことで死にたくねぇよっ。

 せっかく優菜と付き合えたのにっ……。

 くそっ、くそっ。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 今度は左腕から激痛が走った。

 佐藤が金属バットで左腕を攻撃してきたんだ。

 左腕からぼとぼとと血が流れ、曲がってはいけない方向に腕が曲がっていた。 

 左腕に力を入れてもまともに力が入らない。

 もう俺の左腕は使い物にならなかった。

 や、やばいっ。これはまじでやばいっ。このままじゃコイツに殺されるっ……。それだけは阻止しないと。


「お、お願いだ!! も、もうやめてくれ!! 頼むからやめてくれぇぇぇ!!」

「は? やめるわけねぇだろ。今度は足を痛みつけてやるよ」

「お、俺が悪かった!! な、なんでもするから許してくれ!! お願いだから殺さないでくれ!! 俺はまだまだした……あぁぁぁぁぁぁ!?」


 佐藤は俺の右足と左足を金属バットで攻撃してくる。

 何度も何度も餅つきの要領で攻撃してきた。

 

「や、やめてくれっ!? もうやめてくれぇぇぇぇ!? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 俺が「やめてくれっ!!」と叫んでも佐藤は止めなかった。

 奴はニヤニヤしながら攻撃してくる。

 なんでニヤニヤしてるんだよっ。

 お前がやってることは犯罪だぞっ……。

 もっと反省しろよっ。どうして笑っていられるんだよっ。

 くそっ……どうすればいいっ? どうすればこの絶望的に状況を打開できるっ……?

 わからないっ、何をすればいいのかわからないっ。

 時間が経つにつれて痛みが増し、思考力が低下していく。

 もうダメだっ……終わったかもしれねぇ。

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