第2話 浮気②

 夜、お風呂から出た俺はドライヤーで髪を乾かす。

 乾かしたあと、俺は自分の部屋に戻ってきた。

 さて、明日も学校だしもう寝るか。


 あっ、その前に、優菜に電話しよう。

 俺は優菜に電話してみる。

 だが繋がらない。


 あれ? 繋がらないぞ? 

 もう寝たのかな? 

 けどまだ22時だぞ? 

 流石にまだ起きてるだろ。


 俺はもう一度優菜に電話してみる。今度はすぐに繋がった。

 よし、繋がった。

 俺は優菜に話しかける。


「もしもし優菜」

「どうしたの、和樹」

「お前の声が聞きたくて」

「えへへ、そっか。アタシも和樹の声聞きたかったよ」

「お、おう」


 優菜の何気ない言葉にドキッとしてしまった。

 やっぱりこの子は可愛いな。

 この子と付き合えて本当に良かった。

 心からそう思った。

 こんな可愛くて素直な子が浮気なんかするわけないよな。

 そうだよ、優菜が浮気するはずがない。

 俺が勘違いしてただけだ。


 だが、一つだけ疑問が残る。


 日中に電話したとき、男の声が聞こえてきた。

 あれは幻聴だったのか? 

 それとも……。


「なぁ優菜……」

「ん? 何?」

「お前、俺に隠し事してないか?」

「え? 隠し事? いや、別にしてないけど」

「本当か?」

「うん、本当だよ」

「そっか……」


 嘘をついているようには見えない。

 やっぱり浮気は俺の勘違いだったのか?

 じゃああの男の声は何だったんだ? 

 俺の幻聴だったのか?


 ……本当にそうか? 

 幻聴にしてはリアルだったぞ。


 ずっと考えていると、優菜が話しかけてきた。


「ねぇ今日の和樹、ちょっと変だよ? 何かあったの?」

「いや、何もないよ」

「ならいいけど……え? あっ!? う、嘘……も、もうっ、あっあっ」


 突然、優菜が甘い声を漏らす。

 まただ……。

 また様子が変になったぞ?

 一体何が起こってるんだ?


「優菜、様子が変だけど、大丈夫か?」

「う、うん……大丈夫だよっ、気にしないでぇ……んっんっ、あっあっ」


 行為中、優菜はよく甘い声を漏らす。

 そのときの声と酷似していた。


 もしかして俺と電話しながら謎の男とヤってるのか?

 そ、そんなバカな……。

 あの優菜がそんなことするとは思えない。

 けどそうとしか思えない。


 やはり優菜は浮気してるのか……?

 俺のこと騙していたのか?

 いや……けどあの素直で優しい優菜がそんなことするか? 

 とてもそんなことするようには思えないけど。

 

 突如、スマホのスピーカーから『彼氏より俺の方がいいだろ?』と男の低い声が聞こえてきた。

 まただっ、また男の声が聞こえてきたぞ……。

 これは幻聴か? 

 いや、違うっ。

 絶対違う。

 今の声は絶対幻聴なんかじゃない。


「優菜っ……そこに誰かいるのか?」

「え? だ、誰もいないよ? 何言ってるの?」

「けど今さっき男の声が聞こえたぞ?」

「っ……き、気のせいだよっ」

「いやっ、違う。絶対気のせいじゃないっ。お前、やっぱりなんか隠してるだろ? なぁそうなんだろ?」

「な、何も隠してないよっ……んっんっ、あっあっ。ご、ごめん、和樹っ……今忙しいから電話切るね」

「は? お、おい、待てよっ。まだ話は!!」


 俺の制止を無視して優菜は電話を切った。

 あのクソ野郎!! 電話切りやがったぞっ!!

 ちっ、クソがぁぁぁ!!

 

 イライラしすぎてスマホを床に叩きつけてしまった。

 スマホの画面がバキバキに割れてしまう。

 蜘蛛の巣みたいに割れてしまった画面を見て、俺は冷静さを取り戻す。

 やべぇ……スマホ割っちゃったよ。最近買い替えたばっかりなのに……。

 全部優菜のせいだ。

 アイツのせいでこんなことになったんだ。


 さっきの電話で確信した。


 優菜は浮気してる。

 相手は誰かわからないけど。

 あの声、どこかで聞いたことあるんだよな。

 一体、誰なんだ? たぶん、俺も知ってる男だと思うが。


 にしても謎だ。

 優菜は一体いつから浮気してたんだ? 

 全然そんな素振りなかったのに。

 俺が鈍感なだけか?


 今頃優菜は俺以外の男とヤッてんのかな?

 俺以外の男のアレ舐めたりしてるのかな?


 ちっ……なんだよこれ。まじで辛いんだけど。

 好きな女を奪われただけなのに、こんなにダメージを受けるなんて。

 やべぇ……辛すぎて涙まで出てきたぞ。


 ちっ、好きな女を奪われたぐらいで泣くなよ。恥ずかしくないのか?

 泣きたくないのに、体が言う事聞いてくれない。

 目から涙が溢れて、ボロボロと床にこぼれ落ちる。


 しばらくして涙が収まった。

 たくさん泣いたおかげで沈んだ心も少し回復したよ。


 はぁ……なんか疲れたし今日は寝るか。

 優菜の浮気は明日考えよう。


 俺はベッドに寝転んで目を瞑る。

 すると謎の男とエッチしてる優菜を想像してしまった。

 見たくもない浮気の妄想が勝手に浮かんでくる。

 

『あっあっ、和樹より気持ちいいっ!!』

『ははっ、そうだろ? 彼氏よりいいだろ!!』


 気持ち悪いっ、気持ち悪いっ。

 あんなに可愛かった優菜が、今は気持ち悪くて仕方ない。

 こんな妄想してる俺もキモすぎるっ……。

 本当はこんな妄想したくない。だが、脳が勝手に浮気している優菜を映し出すんだ。


「くそっ、全然寝れねぇな。漫画でも読むか」


 全然寝れないので俺は漫画を読み始めた。

 今読んでいるのはNTR系の漫画だ。


 昨日までこの漫画読んだら凄く興奮できたけど、当事者になった今は全然興奮できない。

 浮気の被害者に感情移入してしまい気分が悪くなる。

 

 ダメだっ、気持ち悪すぎてこれ以上読めねぇ……。


 この漫画、結構面白いんだよ。

 救いはないけどストーリーは面白いし、興奮するし、NTR好きからすると堪んなかった。

 昨日もこれで抜いたし。

 けど今は気持ち悪くて仕方ない。


 緻密なストーリーも気持ち悪さに拍車を掛けていた。

 俺、もうNTR系の漫画読めねぇかも……。


 結局、この日は一睡もできなかった。

 全部あのビッチのせいだ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る