掃討④



凛真と奈々美がモンスターの巣を掃討した後、二人はしばらく歩きながら休憩を取ることにした。周囲にはモンスターの死体が散らばり、血の匂いが漂う中、凛真はあまり気にすることなくその場に腰を下ろした。


奈々美も少し距離を取って、周囲を警戒しながら座る。さっきの戦闘では、彼女もそれなりに戦ったつもりだったが、凛真の強さに圧倒され、何もできなかったことを痛感していた。


「凛真さん、すごいですね…どうしてあんなに強いんですか?」


奈々美がふと口にした言葉に、凛真は一瞬だけ視線を向ける。その目は、まるで何も感情を読み取ることができない冷たいもので、奈々美は少し怖く感じた。


「…別に、特別なことじゃない。戦いにおいては、ただ力を使っているだけだ」


「でも、あんなに速くて…あの力をどうやって身に付けたんですか?」


凛真は一瞬黙って考えると、少しだけ面倒くさそうに答えた。


「長い時間をかけて、いろいろな経験をしてきたからな。力を使いこなすには、時間と経験が必要だ。特別な修行なんてものはない」


「そうなんですね…」


奈々美は少しだけ納得するような顔をして、再び周囲を見渡した。凛真の強さがただの力任せでないことは感じ取れる。彼は、その力をまるで日常的に扱うかのように、無駄なく使いこなしていた。奈々美には到底真似できない、圧倒的な能力だ。


「それで、これからどうするんですか?」


奈々美は再び凛真に質問を投げかける。モンスターの巣を掃討したことは終わりだが、まだ彼らの目的は果たしていない。


「次は、情報を集めに行く。俺たちが倒したモンスターの背後に何かがあるはずだ。それを追わない限り、この街の人々はまた襲われるだろう」


凛真の言葉に、奈々美はうなずく。確かに、今回のモンスターたちは明らかに組織的に動いていた。単なる偶然ではないだろう。


「それじゃあ、私もお手伝いします!」


奈々美は意気込んで言った。自分にできることが少しでもあれば、それをしたいと思ったのだ。


「…お前は戦闘には向いていない。無理に関わるな」


凛真は冷徹にそう言い放った。その言葉に、奈々美は一瞬驚き、そして少し傷ついた。しかし、すぐに気を取り直して、再び凛真の言葉を受け止めた。


「でも、私は何かをしたいんです。何もしないのは嫌なんです!」


奈々美は真剣な表情で凛真を見つめた。その眼差しに、凛真は少しだけ動揺したような気配を感じ取ったが、すぐに無表情を取り戻して言った。


「お前がついて来るなら、俺の指示に従え。勝手なことはするな」


「はい!わかりました!」


奈々美は力強く返事をし、凛真が立ち上がるのを見守った。彼の言葉に対して、彼女はただ従うしかないことはわかっていた。しかし、その従順さの中には、凛真への信頼と、強くなりたいという自分の意思が込められていた。


二人は再び歩き出し、次なる目的地へ向かう。凛真はその歩調に合わせて歩きながらも、周囲の気配を敏感に感じ取っていた。何かが近づいている、そんな予感がしたからだ。


「凛真さん、何か感じますか?」


奈々美が気づいたように尋ねる。凛真は無表情でうなずき、周囲を見渡した。


「気配はする。だが、まだ視界には現れない」


その言葉通り、しばらく歩き続けると、やがて前方から一団のモンスターが現れる。その数は多く、すでに凛真と奈々美の前に立ちはだかるような形で出現した。


「来たか」


凛真は冷徹な表情を崩さずに言った。これからの戦闘も、また一方的なものになるだろう。


奈々美は少しだけ緊張した様子を見せるが、すぐに気を落ち着け、凛真の後ろに隠れる。


「凛真さん、頼みます…!」


「任せておけ」


その言葉とともに、凛真は再び戦いの舞台に立つ。彼の目の前には、強大な敵が立ちはだかる。しかし、彼にとっては、それもまた「遊び」の一部に過ぎないのだった。

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