掃討③



凛真の動きは、まるで時を操るかのように速く、周囲のモンスターたちは次々に倒れていった。巨大な触手を持つモンスターが足元に迫った瞬間、凛真はその触手を一刀で切り裂く。倒れるモンスターたちが次々と地面に沈み、風のように素早く立ち回る凛真の姿が、奈々美の目にはまるで神のように映った。


「すごい…こんなに速いなんて…!」


奈々美は呆然としながらも、その力強さに圧倒されていた。目の前で繰り広げられる光景は、まるで別世界の出来事のようだ。凛真は、まるで魔王の名にふさわしい戦闘力を披露している。


「後ろから気をつけろ」


突然、凛真の冷徹な声が響く。その声に反応した奈々美は、すぐに後ろを確認するが、すでに間に合わなかった。背後から巨大な影が迫り、奈々美はその圧倒的な力に圧倒されて一瞬、動きを止めた。


だが、次の瞬間、奈々美の目の前で凛真の姿が現れ、その手でモンスターの攻撃を無傷で受け止める。まるで鉄壁のような防御を見せた凛真は、ゆっくりとその姿勢を整えると、冷ややかに言った。


「…邪魔だ」


その言葉とともに、凛真はそのまま手を振り上げ、光の刃を作り出す。凛真の魔力が一気に放たれ、空気が震えると同時に、目の前のモンスターが一瞬で粉砕された。


「凛真さん…!」


奈々美は驚愕し、目を見開く。それでも凛真は一切動じることなく、次々と現れるモンスターたちに冷徹に対応していく。


「後ろに注意しておけ。俺が片付ける」


凛真は冷静に言うと、さらに魔法を駆使して周囲のモンスターを次々に倒していった。何も動じず、ただ効率よく戦うその姿は、まるで機械のようだった。


「まるで…怪物みたい…」


奈々美は思わず口に出してしまう。その力強さ、冷徹さ、そして無敵ともいえる戦闘能力を目の当たりにし、彼が何者かであるのか、少しだけでも知りたくなった。


「…力があるだけだ」


凛真は無表情でその言葉を返す。目の前でモンスターたちが倒されていく中、彼の姿はまるで戦闘マシンのようだ。それでも、奈々美はふと気づく。彼がこうして戦うのは、ただの力だけではなく、何か強い意志があるように感じられる。


その後、しばらくして、すべてのモンスターたちが倒されると、奈々美はようやく落ち着きを取り戻し、凛真に駆け寄った。


「すごい、凛真さん…あんなに速くて強いなんて…!」


「…暇だから、遊んでるだけだ」


凛真は無表情で、淡々とした口調で答えた。奈々美はその言葉に少し驚き、彼の冷徹な態度が一層謎めいて感じられる。力の使い方にも意味があるように見えるが、彼はそれをただ「遊び」として片付けてしまう。


「遊び?でも、こんなにすごい力を持ってるのに…」


「そうだ。お前が思っているほど、深い理由はない」


凛真は無感情に続けた。その態度は、まるで何もかもが退屈であるかのように感じさせる。奈々美はその言葉に少し戸惑うが、同時に何かを感じ取る。


「でも、どうしてこんな世界で戦っているんですか?」


「面倒だから、放っておけ」


凛真は何の躊躇もなく答え、さらに歩を進めた。奈々美はその後ろ姿を見ながら、少し考え込む。彼の言動に隠された真意を知りたくても、それは簡単に明かされることはなさそうだった。


「それでも、私、あなたに付いて行きます。私も戦いますから」


「…無理しなくていい。お前はまだここに馴染んでないだろう」


「私は、あなたを信じてます。それに、私は戦いたい。だから、絶対に後ろから足手まといにはならないようにします」


凛真はその言葉を聞いて少しだけ顔を上げ、無表情のまま言った。


「…なら、付いてこい。だが、俺が命じたこと以外には手を出すな」


奈々美はその冷徹な言葉にも、少し安心したような気持ちを抱き、頷いた。彼が完全に心を閉ざしているわけではないと感じたからだ。


「はい、わかりました」


その後、二人は再び歩き出し、次の目的地へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る