掃討②



凛真と奈々美は、森の中をさらに奥へと進んでいった。先ほどのグールの巣を掃討した後も、他のモンスターの影がちらついているのを感じる。だが、凛真の冷徹な目はそれを見逃すことはなかった。どんな小さな変化でも、彼の経験と魔王としての直感が反応する。


「次の巣は近い…」


奈々美が少し不安そうに言ったその時、凛真は足を止め、静かに耳を澄ませる。そのまま無言で進み、歩みを早めた。


「気をつけろ。先に何かが動いた」


凛真の言葉に、奈々美は警戒を強め、すぐに槍を構え直した。その直後、茂みの向こうから、目を引くような足音が近づいてきた。


「またか…」


奈々美は小さく呟きながら、前方に視線を送る。すると、そこから出現したのは、先ほどのグールとは比較にならないほど大きな影だった。それは、見たこともないような巨大なモンスター、頭には角が生えており、体はまるで岩のように硬そうだった。


「…オーガ?」


奈々美は目を見開きながら、そのモンスターを見つめた。その姿に、凛真もすぐに反応し、周囲を冷静に観察する。オーガは、間違いなくこの辺りでは一番の強敵だろう。


「どうする、凛真さん?」


奈々美が不安そうに問いかけるが、凛真はそれに対して無表情で答えた。


「大丈夫。俺がやる」


「そんな…でも!」


「心配するな。お前は後ろで見ていていい」


凛真の冷静な言葉に、奈々美は何も言えずに一歩後ろに下がった。彼女はその姿に、ただただ信頼を寄せるしかなかった。こうして、凛真は一歩前に出る。


「よし、来い」


凛真が静かに言うと、オーガは怒りの咆哮を上げ、足元を揺るがしながら突進してきた。その速度と力は、普通ならすぐに人間の隊員では捌ききれないほどだった。しかし、凛真にとっては、その力はまるで小さな波のようなものだった。


オーガの拳が凛真に向かって振り下ろされた瞬間、彼は軽く身をよけ、相手の動きに合わせてその拳の軌道を外した。そのまま、凛真はオーガの懐に飛び込み、素早く手刀を一閃。次の瞬間、オーガの大きな体が崩れ落ちる。


「…!」


奈々美は驚愕の表情でその光景を見守った。オーガの巨体が地面に倒れ込む音が響く。まるで力を使うことなく、彼は一撃でそのモンスターを倒してしまった。


「終わりだ」


凛真は冷たく言い放ち、倒れたオーガを一瞥する。その目はまるで、日常の一部を片付けたかのように無感情だった。


「…凛真さん、すごい」


奈々美は、思わずその場で膝をつきそうになった。あまりにも圧倒的な力に、言葉を失ってしまう。


「すぐに片付けられる。さっさと先に進もう」


凛真は淡々とした口調でそう言うと、再び歩き始めた。奈々美はその背中に従い、黙って後ろをついていった。もう、言葉では表せないほどの驚きが彼女の心に広がっている。


数分後、二人はついに目的の場所に到着した。そこは、モンスターの巣の中心部。辺りには腐敗した空気が漂い、異常な気配が充満している。


「これが最後か」


凛真が呟いたその言葉に、奈々美は慎重に前に出て、周囲を警戒しながら答える。


「はい、でもここにいるモンスターたちは、これまでのような簡単な相手ではないかもしれません…」


その瞬間、凛真の目が鋭く輝いた。


「そうか…なら、行くぞ」


凛真は立ち止まり、周囲を一瞥した。すぐに、その場に魔力を込めた風のような圧力が広がり、地面を揺らす。それに応じて、森の中から異形のモンスターたちが現れる。姿は不定形、目に見えないような形のものもあれば、巨大な触手を持つものもいる。


「これで終わりだ」


凛真の声が響き渡る。その言葉に、奈々美も覚悟を決めて槍を構え直した。


だが、凛真が動き出すと同時に、周囲のモンスターたちは一斉に襲いかかってきた。どれも強力なモンスターたちだが、凛真はまったく動じない。


その瞬間、まるで風のような速さで動く凛真の姿が目の前から消え、次の瞬間にはモンスターたちが次々と倒れていく。

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