第7話 第7の不思議

 七不思議を暗殺することになった私だけれど、情報が少なすぎる。このまま挑むのは少し心もとない。だから色んな人に聞いて回ろうか。


「まって、授業バックれてたんだった!」


 まずいまずい!転校してからあまり日が経っていないから普通に不良だと思われる…!そうしたら…クラスメイトの信用が…!信用がぁぁぁぁぁああ!

 そして私はもう全力で教室へ向かった。


 ガラガラガラッ‼︎


「よーしセーフ!」


「おうセーフじゃねえぞ早く座れー」


「すみませーん」


 よかった。この程度の説教で済ん


「なんでバックれたかあとでみっっっちり聞かせてもらうからなー」


 …済まなかった


 そして来た放課後。職員室の隣にある理科室でみっちり説教されている。


「なんでそんな勝手な事しちゃうかな君もういい年してるんだからある程度の自制は効かせれるようにしておいてくださいそれともなんですか俺があなたに合わせろって事ですかそうですかそうですかそれは実に暮らしやすいでしょうね貴女にとってはですけどねなんで転校早々バックれる用事ができちゃうんでしょうね柘榴くんボコボコにしたので授業なんか受けなくてもいいって事ですかそうですかそうですよねどうせ俺の授業なんか基礎応用全部できてる貴女にとっちゃ退屈で退屈で仕方がありませんものね失礼しましたねほんとにねでもねしっかり授業受けてもらわないと周りのみんな動揺しちゃってまともな授業受けられてなかったですよどうしてくれるんですかねこれが1番大きな問題ではありますけれどもでもね貴女自身の成績にも関わってくるんですよねテストや実技だけじゃ測れない態度などをしっかり見させていただいているのでねまあそんなこと気にせずどこかにピューンと出かけられると困るんですよね今度からは紙に書くなり口頭で全て伝えるなどして許可が得れ次第出かけてくださいね有名人さんそれから」


 長い、長いよぉ…ごめんなさいって言ってるのにずっとねちねちしてるよこの人…。




 ~3時間後~




「反省しましたか?」


「…すみませんでした」


 もうね、ほんとにきつかった。眠くなってくるのに寝てはいけない空気、ごめんなさいといくら言っても許されない罪悪感でもう地獄だった。


「あと1~2時間くらいここで反省してなさい。次からは課題や反省文を出しますから、覚悟してくださいね?」


 ガラガラガラ ピシャッ


 ああ…辛かった…もう本当に反省します…。

 というか電気も消されるんですね。暗くて不安で仕方ないですよほんとに。ってかあの人って怒ると怖いんだな…。なんだからやる気無いような、うでーんってしてる人ようなだなって思ってて正直舐めてた…。


 取り敢えず理科室に2時間いよう…。




「随分とまぁ怒られていたな」


 ふと万妖麗寿が声をかけてくる。


「あんたは良いよね。対して怒られる訳でもなく、のんのんと鞘に収まってるだけで良いんだから」


「いやでも逆に?私が喋ったら変だろう?いやいや、それは蜜奈が強くなるためであってー、とか、私の口から言えると思うか?」


「いやいやもういいよそれで良かったよ言えよ言っちゃえばよかったんだよもう」


「…」


「なんか言えよおい」


 そんなこんなで、薄暗い理科室で2時間反省する羽目になったのでした…。









































 カランッ





「ッ!?」


 なんだ、今の音…!?誰もいなくて風も無いこの部屋でこの音は流石に不自然すぎる。何かがいる?

 そうか、第7の不思議、理科室の動く骸骨ってコイツか。万妖麗寿のおかげか、勘が冴える。勘が冴えるからこそ、背後から近づく何かに早く気づける。


(もう気づくか。元がいいのだな)


(まぁね。でもこれって…なかなか強くない?)


(そうだな。相当のやり手だろう)


 背後から迫る気配、危険は感じても死は感じない。1度絶対絶命からの死を経験した私からしたら、


 ブォン

 フッ


「大したことないね!」


 背後から迫ってきた何かが腕を振り、頭を潰しにかかったが、それを難なくかわす。


「ほう…?この俺の気配を読み取ったか?面白い。弄んでやるよ。精々長生きするんだな!」


 理科室にあるはずの骸骨が1つなくなっている。十中八九その骸骨だろう。

 骸骨からの攻撃が始まる。


「どうだこの攻撃!貴様の授業、見させてもらったぞ?筋肉の収縮を見て相手の動きを読んでいると見たぞ?」


 確かに全くもってその通りだ。私の得意な動きの読み方の1つ、筋肉の収縮。グラウンドの柘榴との勝負をコイツは見たのだろう。

 骸骨からの攻撃は、その辺の学生や教師とは比べ物にならないほどに激しかった。


「何なの、君?急に殴りかかってくるなんて、センスないよ?そんなんじゃ好きな子に振られちゃうよ?」


「冗談混じりで俺の攻撃を全て難なくかわすか…。フッ、面白い…」


「面白がってるところ悪いけど、あなたは一体誰なんですか?」


「いいだろう、知って無駄だとは思うが教えてやろう!俺は第七の不思議、理科室の動く骸骨のガグロス!以後、お見知り置きを」


「丁寧な自己紹介ありがとうね?ガグロス君」


「そちらも名を名乗ったらどうだい?」


「君に名乗るほど低俗な名前は持ち合わせてなくてね。残念ながら言う気は無いね」


「ほう…?言うではないか小娘…。では、本領発揮とでも行こうかね!!」


 雑談しながらされていた攻撃が更に激しくなる。

 適当なジャブを難なく弾いたが、ガグロスは右半身を後ろに振りかぶってきた。強烈なパンチが来ると予測して刀を立てて構える。だが実際には左足の強烈な蹴りが腹を貫通…する勢いだったものの、それも見越して限界まで身体をのけ反り躱す。

 躱した反動のままバク転を挟み、距離を取る。


「このフェイントに対応するか…。この私の戦闘スピードの中で…?」


「まあ、君より強いからね」


「調子に乗っていられるのも今のうちだ!」


 ガグロスは私の顔目掛けて蹴りを入れる。それをしゃがんで躱し、蹴りを入れてきた足を切り取るために万妖麗寿を膝あたりの関節目掛けて振るう。


 ザン‼︎


 見事切り取られた膝から下を雑に放り投げる。それでもザグロスは、面白い、といった表情をしている。

 その瞬間、足が再生した。膝の下は少々不自然な白色をしている。


「チッ」


 やはりこの程度では動きは制限できない。多分コイツは、頭もしくは体全体が細切れにバラバラにされない限りは死なないのだろう。


「ほぉうら、まだまだぁ!!」


 百烈の拳を全て刀で受け止める。流石学校が対処できない七不思議の一つなだけあって、大分強い。


「君、思ってたより強いね」


「思ってたより、か。最下辺とはいえ、七不思議を舐めてもらっちゃあ困るなぁ?」


「君の上は一体どれほど強いのかな?」


「そうだね、第六でも君が思っている5倍は強いんじゃないかい?少なくとも俺よりは遥かに強いと思うぞ?」


「じゃあ本当に君は最底辺って感じか。なら、君に割いてる時間は、もうあと10秒で充分なんだよ。今までのは全部、七不思議に対する小手調べってところだからさ」


「は?お前何を言っているんだ?」


「要するに、君は弱いんだよ。世間話しながらでもスって倒せちゃうくらいにはさ」


「何なんだお前?何を仕掛けようとしてきているんだ?」



 〈紺の術〉その九 咲紫さきむら



 頭蓋骨を一突き。気がつけば対象が刀と一体化になっている、とも捉えられる程の高速な突き技。その速さとその衝撃波で、そこにあった骸骨は粉々に砕け散った。


「ごめんね、空気冷めちゃったかな?でも私強いからさ。仕方ないよね」


 左に一振り、右に一振り、円を何重にも描くように刀を振るい、鞘に納める。これが彼女の癖なのだ。汚れを切り捨て、刀を清潔にしようとして振い、汚れを弾き飛ばしたいという意識がこの癖を産んだのだ。


「…強いな」


「なんだい万妖麗寿?急に褒めちゃってさ?」


「刀として意思を持って長いこと生きているが、お前ほど強いものはいなかったと思うぞ?」


「そりゃどうもっ」


「照れが隠せていないぞ」


「うるさいっ!」


 そんなこんなで1体目の七不思議の討伐が終わった。

 そして少々荒れた理科室を片付け終わり、帰路に着く。


「思ったよりも弱かったね?」


「それでも一応油断は禁物だろう。やつが言っていた通りなら、次は更に強い敵が現れてくるのだろう」


「それもそうだよねー。そうだ、七不思議討伐の事を校長に伝えに行った方がいいのかな?」


「必要無いと言えば必要無いと思うが、一応行っておいた方がいいんじゃないか?」


「それもそうだね。じゃあ、早速向かっちゃおっか」


 そんなこんなで、私は校長室へ向かうのだった。

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