第6話 地下に眠る秘剣

「地下に眠っている秘剣、それが報酬だ。報酬は先払いということで、是非地下に言って欲しいと思う。だがその秘剣は実力者しか抜けないと言われている。そなたの実力なら抜けるとは思うが、万が一抜けなかった場合の報酬も一応用意している。その場合は後払いで良いか?」


「はい、異論はありません」


「わかった」


 私は一礼をした後、校長先生から離れる。


「それでは、失礼しました」


 校長室のドアを閉める。地下に眠っている秘剣か…。どんな剣なのか楽しみ!早速抜きに行ってみるか!

 そして私は走り出し、まず教室に向かった。


「先生!5時間目休みます!」


「え?あ、え?ちょっと待っ」


「では!」


 入学早々こんな事してたら不良として見なされてしまいそうだけども、まぁ別にいいか。校長先生の人脈があるし。

 そうして私は1階のとある門の前へとやって来た。


「ここが地下への門か」


 大きな鉄の門があるが、鍵などが着いている訳でもない。気味が悪いから誰も近づかないだけで、立ち入りは禁止されていないという。


「私はこういう雰囲気も好きだけどな」


 そうして大きな鉄の門を開く。中は横に松明があるだけであり薄暗い岩の洞窟のようになつ、早速下への階段がある。

 そして1段、また1段と降りていく。コツ、コツと自分の足音が響く。吐息すらも響いて聞こえてくる。

 私は流石に気配は消さなければと思い、足音を消し、吐息を殺した。


 下が見えてくるほどまでに降りてきた。下は舗装されていない土だ。その土を踏みしめると、目の前には入口のような大きな扉があった。

 魔法が掛かっている訳でもない扉は普通に開いた。すると、とても小さな部屋に出た。


「なんだここ、狭すぎだよ?っと、台座に剣が刺さってるな。これが秘剣?」


 ざっと5畳といった小さな部屋の中は白いレンガのようなもので敷き詰められていて、その中央にはレンガ1個に刺さっている剣があった。


「早速抜いちゃおうかな」


「待て」


 剣を抜こうとした時、急に男性のような声が聞こえた。声が聞こえた。


「汝、我を抜くと言うのかね?」


「まぁそうですけど…」


「まぁそうですけど、か。ほぅ、面白い小娘だ。では良い。我は汝を気に入った。抜いてみるが良い。抜けたその時は我は汝の剣となる事をここに誓おう」


「でも、抜かせる気はないよね?」


「一目で見抜くとは、やるな。ここには我の魔法が掛かっているから簡単には抜けないぞ?簡単に抜かれてしまっては面白くもないし、汝の実力も測れないだろう?」


「…」


「なんだ?怖気づいたか?」


「なんか、面倒くさいね」


「…は?」


「いやなんか君の性格に疲れちゃって、別に君がいなくても良いかなって」


「え?それ本当に言ってる?」


「うん」


「…」


「…」


「ちょごめんって!久しぶりの人間でカッコつけただけだって!普段私自分のこと我とか言わないし汝とかも言わないから!」


 秘剣と呼ばれたこの剣が、急に情けなく見えてきた。さっきまではボイスチェンジャーを通したような声だったのに、中学生とか高校生とかみたいな男の子の声になった。


「でも性能は確かだし、私はお前の素質を見抜いた上で抜かせようとしただけだから!」


「わかったよ、抜くから、抜いてあげるから!そんな半泣きみたいな感じですがりつかないで!」


「自分で自分を封印したんだけど、出力ミスしちゃって全魔力込めちゃって、自分どころか、古代の大魔道士でも抜けないほどになっちゃったんです!だから抜けるかはわかんないけど、お願いします!」


 私はこの秘剣を掴み、上へと力を込めた。


「あ、思ったより硬い。…けど」



『封印魔法解読』



『反魔法展開』



 弱らせられる部分をとことん弱らせる…。


「せいっ!」



 ザッ!



「お、」


「や、」


 魔法を打ち消して封印を脆くしたら案外スっと抜く事が出来た。


「やっと抜けられたああああああ!」


「よりゃ良かった良かった」


「助かったよ。えーっと…」


「私は蜜奈。蝶乃 蜜奈。よろしく!」


「私は万妖麗寿まんようれいじゅ。よろしく、蜜奈」


 美しい桃色が艷めく刀。鍔の無い刀であったがとても美しい。光具合で白や青色、赤色が見えるような刀身だ。持ち手は金色のひし形が並ぶように黒い麻のような物で巻かれていれ、不思議とピッタリ手に馴染む。


「!?なにこれ軽すぎじゃない?」


「そうだろう?魔法だけではない。特殊合金加工という技術に、世界に一つしか無かった鉱石を使用して造られた魔剣だ」


「へー」


「しかも、持つだけで使用者の勘を極限まで高める力、自由な形に変形する事ができる」


「なるほど、ここまで手に馴染むのもそういう事なのか…いいね!面白そう!」


「私はこの世にある剣の中でも2番目に強いと言われている。十二創剣、五大聖剣、三大魔剣、といったように、どのような数え方をしても私がいる」


「凄い剣なんだね…!自分で封印魔法を掛けたって言ってるあたり、自身で魔法も使えちゃう感じ?」


「まぁそうだな」


 もの凄い剣を手に入れてしまったな。勘を高めるって一体どんな感じなんだろうか。


「じゃあ教室に戻るかな」


「ちょっと待て、私に足りない物があるとは思わないか?」


「…??」


「わからないか?」


「うーん、わかんないな」


「本当にわからないか?」


「はいはいしつこいって、何が欲しいの?」


「鞘が欲しい」


「あー」


「…」


 「要らなくない?」


「いやいる」


「要らなくない…?」


「要るってば」


「そっか、欲しいって言ってるんだから要るよね。いいよ!じゃあ白でいいよね?」


「ああ、よろしく頼む」



『土魔法』 創造



 白い鞘を生成、入り口は金色で、更に黄色の細い縄をその鞘に巻くようにしてつけてやる。

 刀身はその大理石のような美しい白さに収められる。そんな鞘。

 わたしは万妖麗寿を手に持ち、前に掲げる。180度回転させ、刀の先端を鞘の入り口に添える。刀身は少しずつ短くなり、遂には全て見えなくなった。


「じゃ、よろしくね!万妖麗寿!」


「ああ、よろしく頼むぞ、蜜奈」


 こうして私は秘剣と呼ばれる万妖麗寿の所有者となった。



 校長室にて


「校長先生!抜けましたよ!これが?」


「おお…!本当に抜けるとは思ってもいなかったぞ…!その美しい刀身、面妖な魔力、そしてそなたへのとてつもない馴染み…間違いない、その剣が秘剣であろう!そして、その剣の名前はなんと言うのか?」


「この剣が言うにっい痛たたたた!!??」


 お腹の辺りに急につねられた様な痛みが襲ってきた!?


(ちょっと待て蜜奈)


(なんだよ万妖麗寿?普通に痛いんだけど!)


(ああ、すまない。だが、私と意思疎通出来ることは、なるべく内密にした方が良いだろう)


(えー?この人はお父さんとも深い交友関係あるし、大丈夫でしょ…?)


(念の為だ。私の勘が、そう言っているのだ)


(そこまで言うなら…ねぇ)


「どうした?」


「すみません、ちょっと部分的に痛くて…」


「…そうか?で、その剣の名はなんと言う?」


「万妖麗寿です。等身に薄く刻まれていました」


「万妖麗寿とな…」


「知っているのですか?」


「そりぁ、あの有名な五大聖剣の1つなのだから当然だろう?とてつもない力があると見込むぞ?」


「はい。もの凄く感覚が研ぎ澄まされています。上手く言葉に出来ないのですが、こう、胸の辺りから温かい水が全身に流れ込むような、ハッキリとした様子です」


「それはまた凄い物を与えてしまったな…。そなたがそれを使うとなるならば、世界征服も容易いであろう」


「そんなことは無いですよ…!」


「はっはっは。半分冗談だ。そなたはそこまでするような性格ではないと分かっておるぞ?」


「半分冗談じゃないじゃないですか…」


「はーっはっは!これはこれは、度が過ぎましたかな?…とにかく、七不思議の討伐、頼んだぞ?」


「はい!」


 そして私は、七不思議の暗殺をする事となった。

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