第5話 学校の七不思議

「よくわからないが、本当に魔法はかかっているのか?」


「うん、大丈夫。どんな魔法もこの『魔法不可干渉』の前には、無にも等しい。…はず」


「対策されてるかもって話だからな」


「そう。まあ、とりあえずもう魔法を解くよ」


 ここまでの殺気を向けてくる相手だ。成功する確率はほぼ100%とは言ったが、正直五分五分ってところだと思っている。


「じぁあ解くね」



『封印庵勤』解除



 脆いガラスのように、封印庵勤の黒い壁が割れていく。

 さて、柘榴はどうなる…?


「…よかった。俺は無事だ」


「そうなんだ」


「どうした?随分とあっさりとした反応だな?何かまだ腑に落ちない事でもあるのか?」


「封印庵勤の中で、私たちはどんな会話をしていたか、覚えてる?」


「あぁ、なるほど、今の俺を疑っているのか。だが大丈夫だ。俺は操られていない。俺が狂っていた間の記憶の事や、結界を解いた後の話をした。この通りだろう?」


「…よかった!多分大丈夫だね!」


 こうして、私の最初の授業が終わった。柘榴はこの後もしばらくは魔法にかかったままでいてもらう。


 ~そしてその日の昼休み~


「凄かったね、蜜奈」


「囁華、今までずっと修行してたからさ。でも授業終わったのに、まだ浮かない顔してるよ?」


 デコピンスパァン‼︎

 え結構痛い!?


「あったりまえでしょうが!蜜奈って何者なの!?うちで最強だと散々唄われてきていた浅条が、急に転校してきた少女にボコボコにされたんだよ!?それはもうボッコボコにね!平静じゃいられないっての!」


「ちょ、近いって!近い近い!驚かせてごめん!本当に!隠してるつもりはなかったから!」


「全く…常識が何か分からない1日だよ…」


 しまった。クラスメイトに引かれてしまう事は予想していなかった。


「まあまあ落ち着きましょうよ?ね?それにしても蜜奈ちゃん、本当に凄かったですね。どこでそんな修行を積んだのですか?」


「胡桃ちゃん…。えっとねー、まあ、両親の賜物…かな?」


「よっぽど強い方なんですね!私も1度会ってみたいものです!」


「…うん。まあいつか、紹介できたら紹介するね!」


 ガラガラガラッ


「おーい、蝶乃いるかー」


「はーい。なんでしょうか?」


「ちょっと一旦こっち来い。少し話がある」


 なんだろう?…まぁ、1時間目の事なんだというのは予想できるけど。


「校長先生からお呼びがあったぞ。何やら超重大な何かっぽいぞ。」


 まじか。まさかとは思うけど、退学とかじゃないよね…?やめてよね!?入学早々退学とか意味わかんないから!!


 ~校長室前~


「それじゃあ俺は教室に戻る。お前は校長と2人で話してくれ。それじゃ、頑張ってー」


 雑だなぁ…。でもなんだかんだ励ましてはくれてるし、いい先生なんだよな、意外と。


「あー、どうか退学だけはありませんように」


 そうして私は校長室に入る。

 部屋の奥には、かなりの貫禄を放つ男性がいる。横幅はぷにぷにとした広さだが、筋肉がついていたような感じがある。


「やあ。私がこの学校の校長、箒 東相だ。君の実力の話は聞いたよ。常識を外れた力でうちの生徒会長をボコボコにしたそうだね。」


「…はい」


「君には、1つ頼み事をさせてもらおう」


「え?頼み事、ですか?」


「ああ。ん?なんだその顔は?もしかしてだが退学させられちゃうかも!とかでも思っていたか?」


「え?あ、はい」


「わっはっは!そんな訳なかろう!あの2人の娘だ!最高に歓迎させてもらうに決まっておるではないか!」


「えっ、え!?」


「あの2人、言っていないのか?私は昔、香田羽に助けられた事があってな。暗殺の依頼はしないが、仲良くさせてもらっているのだ!まぁあちら側としては、ただの情報網の1つなのかもしれないが、それでも仲良くさせてもらっていると言う訳だ!」


「あーなるほど。確かにそう考えると入学もなんとなくすんなりしていたよな」


「私の権力行使だな!…まぁそんな話はまた今度すればいい。それよりも、今学校では相当危険な事が起こっている。」


「危険な事、ですか」


「ああ。それも、かなりの力を持っているようなのだ。」


「それは一体?」


「それはな…」





   「学校の七不思議だ」






「…」


「…」


「…は?」


「うむ。その反応が自然だろう」


「いや、自然っていうか、生徒たちのお遊びなんじゃないですか?それ」


「うむ。私もそう思っていた。今でもそうあってほしいと思っている」


「それ、生徒に騙されているだけなんだと思うんですけど…?」


「そうだな。そこまで違和感を覚えるのは分かる。でも実際、死者も出ているのだ」


「なっ、死者まで?それは本当ですか!?」


「うむ。その被害に遭い、仲間は死につつも生き延びた生徒ら数名から聞いた話では、やり口が7通りあったのだ」


「なるほど、だから七不思議ということですか」


「そうだ。そして、それらの殆どは実力者を主に狙っているように思える」


「まぁここまで話を聞けば何かくらいはわかるけど、一応聞きますよ。頼み事とはなんですか?」


「うむ。君が思っている通り君には、七不思議の全てを暗殺してもらいたい」


「人外の可能性は?」


「あるとは思う。だが、それでも他に頼める者がいないのだ。」


「…なるほど」


 人外の可能性があるのか。幽霊とか?…えまって、普通にめっちゃ怖いわ。幽霊より怖いものなんてこの世に存在しないよね?でも、死者が出てるんだ。悪人、悪霊だったとしても、


「いいですよ。その依頼、承りました。」


 そして私は、七不思議を暗殺することになった。この七不思議の原因は悪だ。殺すしかないよね。


「助かる。一応情報を伝えておくぞ」


「助かります」


「第7の不思議、理科室の動く骸骨。これは動く骸骨に殺されるらしい。朝にその骸骨を見ると、手足や口元に血が付着していたと聞く」


 なんとも残酷でむごい骸骨だな。


「第6の不思議、歴史資料室の高鳴る赤べこ。からからと音がなったと思ったら、友達に穴が空いていたらしく、後日調べると赤べこに血が付着していたとの事だ。」


 素早い動きで殺しにかかってくる?はたまた…


「第5の不思議、金工・木工室の人体実験。金工室では胴体が一刀両断され、木工室では木槌で頭を潰されるとの事。これらは同時に起ることが多いことから、1つにまとめられている」


 まあなんともグロテスクなことだよ。


「第4の不思議、体育館の襲いかかるボール。バレー、バスケット、野球ボールなどの全ての種類のボールが襲いかかってくる。そして脳震盪や頚椎破裂などを引き起こし、絶命させられるらしい」


 意思があるボールって事?


「第3の不思議、被服室の踊るドレス。とある喧嘩の強い不良が全身に切り傷を付けられて殺されたらしい。近くには血の付いたドレスが落ちていたらしいあまりにも強い不良が一方的にやられた様な感じであったと聞くが、その他に関しての事件は起こってないと聞く」


 第3の不思議はあんま悪い不思議では無いんじゃないのかな?


「第2の不思議、図書室の狂う時計。餓死や干からびた生徒がよく見つかったことから、時間操作がされていると考えられている。また、たまたま生き延びた生徒が言うには、時計が狂ったように回っていたという。」


 時間操作…気づかれたらお終いって事なのか?


「そして第1の不思議、従わなければ殺される声。とにかく従い続けた生徒が言うには、殺し合い、間接的な自殺や他殺などを行わせたらしい。その他にも、従わなかった友達が目の前で血を吹いて亡くなったとの話も聞く」


 なるほど。これは柘榴にかかってた魔法みたいなものかな?それともこの不思議が原因なのかも?


「これで全部ですか」


「うむ。1の数字に近づくほど強さは強くなるとのことだ。そして第1の不思議はとてつもないと考えられる。心してかかってほしい。」


「はい。承知しました。それで、報酬の方は」


「まぁそうだろうな。」


「はい、形だけでも請求しておかなければ、親に怒られてしまいますよ」


「ははは、現金だな。だが、既にもう報酬の件は考えていた」


「本当ですか?」


「ああ。実は七不思議とは別に、この学校の地下には秘剣が眠っているのだ。これは都市伝説でもなんでもない事実だ」


「秘剣…!」


 私はこの秘剣に、絶対的な運命を感じた。

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その暗殺者は蜜の味 つばーきき @tubaki-flower

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