第22話 舞い降りる死神
復活してどこかへ行った神は一旦放置することにして、魔物の大群の様子を見る。
小型の速い魔物がだいぶ町の近くまで行っているようだ。
小型は弱い魔物が中心だから、今はまだ持ちこたえられるだろう。
「ルフト様。魔物の大群はどうなりましたか?」
「小さい魔物はかなり町に近づいているな。町の方もさすがに冒険者を集めていると思うが、ここからではよくわからないな」
「町の方へ行きましょう」
「わかった」
ルーナが心配そうな顔をしている。
確かにあの大群では国ですら滅ぶ可能性が高い。
町では勝ち目がないだろう。
あまり目立つつもりはないが、ルーナの望みならば仕方ない。
俺たちは町の方まで飛んだ。
♢ ♢ ♢
町に来てみると、思っていたよりも多くの冒険者が集められていて、魔物との戦いの準備をしていた。
町の住民も、避難しているのはごく少数で、ほとんどが町で普通に生活しているようだ。
ただ、緊張感が張り詰めていることからも、魔物の大群が来ていることはわかっているらしい。
なぜパニックになっていないのかはわからないが、このままでは死ぬだけだろう。
「かなり多くの冒険者の方がいますね」
「あぁ、魔物との戦いに備えているようだな。ちゃんと陣形もとっているようだし、多少は持ちこたえられるだろう」
「あの、ルフト様. . . . . .」
「あぁ、わかってるよ。危なそうならちゃんと止めるから。ルーナは死人を出したくないんだろう?」
「はい。ありがとうございます」
ルーナの望みならば、ここで死人を出すわけにはいかない。
最初から出ても怖がられるだけだから、こういうのは危ないときに出て、恩を売る方がいい。
下に目をやると、最前線で群がられている男がいた。
なるほど、もしかするとこの町がパニックになってないのも、冒険者たちが勝てると思い込んでいるのも、あの男が原因か。
確かに魔力量は多く、気配もそれなりの強さではあるが、あの大群には勝てないだろう。
そもそも、改造された魔物すら相手にできない。
あれがこの町一番の冒険者なら、この町はかなり脆弱だな。
「ルフト様。あそこにいる方は有名な方でしょうか?」
「いや、俺も知らないが、おそらくこの町一番の冒険者だろう。この町の住民が避難せずパニックにもなっていないのはあの男がいるからだと思う。もしかして、ルーナは興味があるのか?」
「え? いえ、全くありませんよ。確かに魔力量は多いですし私よりは強いかもしれませんが、ルフト様と比較にならないですから」
よかった。
ルーナがああいうのが好みとか言われたらどうしようかと思った。
あの程度の雑魚ではルーナに相応しくないからな。
「そうか。まあ、あれでは改造された魔物を相手にできない。弱い魔物の大群なら蹴散らせただろうが、強い魔物が200もいれば終わりだろう」
そんな風に話をしていると、魔物が到着した。
最初は小型の速い魔物がバラバラと森から出てきたが、ある程度近くになると、先頭の男が魔法を放った。
――ドーン
「あの魔力量であれほどの威力を出せるものでしょうか?」
「いや、あの魔道具が原因だろう。魔物が来る前に魔力をため込んでいたようだ」
「なるほど。しかし、これでは大型の魔物をやれませんね」
「あぁ、その通りだ」
大規模?の魔法を放ち、大量の魔物が焼け死んだが、それでも森からは次々に現れてくる。
後ろの魔法使いの部隊が遠距離からの攻撃をしているが、やがて魔法では対処しきれなくなり、近接タイプの冒険者たちが前に出た。
数分間は拮抗した形になっていたが、魔物のレベルが上がってくると、すぐにそれも崩れ去り、町の方へ押され始めた。
幸い、まだ死者は出ていない。
「ルフト様。そろそろ. . . . . .」
「あぁ、そうだな」
そう思い、下へ降りようとしたとき、森から改造された魔物が現れた。
周りの魔物とは違い、一体だけ異質な存在感だ。
その魔物はもはや最前線に取り残されてしまった男に見向きもせず、町の方へ突っ込んでいく。
冒険者たちは、さすがに勝てないことを悟ったのか、棒立ちでこの状況を見ていた。
「ルフト様っ!」
「あぁ、大丈夫だ」
さすがにこれ以上は死人が出るな。
――ゾワッ
俺は下へ向けて殺気を放ち、下にいる全ての生き物の周囲の空気を止めた。
つまり、下にいる奴は誰一人として動けなくなった。
俺はルーナと共に、改造された魔物がいる場所へゆっくりと降りていく。
全員の目がこちらへ向いており、そのどれもが畏怖の念を宿している。
――死神、と誰かが呟いた。
おそらくあの冒険者の誰かだろうが、それはどうでもいい。
「ルーナ、どうしようか? 改造された魔物は調べる価値があると思うが」
「そうですね。他の魔物は全員消していただきたいですが、あの魔物は捕らえておきたいです。しかし、もし調べているときに暴走してしまったら私では手に負えません」
「大丈夫だ。それ用の魔道具ができるまでは俺が拘束しておくから」
「ありがとうございます」
さて、これほどの魔物を殺すのは簡単だが、後片付けを考えるときれいな状態の方がいいだろう。
俺は手を広げて下に向け、少し力をためながら狙いを定める。
そして一気に手を握りしめた。
――ザシュッ
控えめな音と共に、そこにいた魔物は全て眼の光を失った。
改造された魔物以外の脳天に風の槍を突き刺したのだ。
止めていた風を解除すると、一斉に魔物が倒れ、頭から血が流れだした。
「こいつは貰っていく」
改造された魔物を宙に浮かせて、ルーナと距離を空けて運ぶ。
ルーナに敵意がいけば殺しかねないからな。
「じゃあ、ルーナ。帰ろうか」
「はい」
ルーナと手を繋いで加速していく。
戦場に残されたのは、未だに死神の去った方を見つめる冒険者たちだけだった。
――――あとがき――――
まずは、誠に申し訳ありません。
私用で更新日が空いてしまいました。
読者の皆様には大変なご迷惑をお掛けしたと思います。
お詫びになるかわかりませんが、もう一作品を投稿始めました。
まだストックを増やせてないので、また日が空くかもしれません。
反省しているのか! と思うかもしれませんが、頑張って今日から継続するつもりですので、ご容赦ください。
本当に申し訳ありませんでした。
また今後も読んでいただけると嬉しいです。
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