第14話 町の教会(1)
宿に戻り、襲ってきた男たちが言っていた教会とやらを電話でリアーナたちに伝えた。
おそらくこれで、子どもたちは何とかしてくれるだろう。
「ルーナ、教会を潰しに行こうか?」
「そうですね。早く子供たちを助けてあげたいです」
ルーナがそう思っているのなら、俺はすぐにでも教会を潰そう。
ちなみに今は夜の8時ぐらいであり、まだ外には人が多くいるが、教会に行く者は少ないだろう。
司教とやらも教会にいるようだ。
教会の最上階にそれなりの強さの気配を感じる。
いつかの冒険者ギルドのギルドマスターと同じレベルだな。
「リアーナたちももう来てるみたいだ。宿に帰ってきたばっかりだが、もう行こうか?」
「リアーナたちが来たのなら、少し待ってから行きましょう。いきなり行ってしまっては、子どもたちがびっくりして転移できないかもしれません」
さすがはルーナだ。
子供たちのことをちゃんと考えている。
確かにリアーナたちなら子供たちも安心できるだろうが、俺のような化け物が来たら怖いだろう。
「確かにな。俺みたいな怪物が来たら怖がるだろう」
「ルフト様は怪物ではありません。強くて優しい御方です」
ルーナはそう言ってくれるが、客観的に見て俺は怪物だ。
なにしろ、神がこの体に宿ってるのだから。
「お、リアーナたちが地下に入って暴れてるみたいだな。一応子供たちにはバリアを張っておくか」
改造された子供たちは、魔力が他とは少し異なっているため、遠くからでもわかりやすい。
ちなみにだが、ここから教会まで1500mぐらいある。
すでに俺の感知できる範囲は1kmを超えていた。
「ここからでも張れるのですね。さすがです」
「まあ、あまり強いものではないよ」
「ですがこの世界にそれを破れる人はほとんどいないでしょう」
「そうか? それならいいんだがな。さてと、夜は遅くなるかもしれないし、ルーナは少し横になった方がいい。昨日からあまり寝てないように見える」
「ルフト様は何でもお見通しなんですね」
きっと組織のためにいろいろと動いていたのだろう。
リアーナも大変そうだったし、ルーナはもっと忙しかったのかもしれない。
俺は組織のことは興味が無くて全て任せっきりだったから、少しは反省しないといけないな。
せめてルーナの仕事を減らさないといけない。
だがまぁ、今できるのはルーナを休ませてあげることだ。
「さあ、ルーナ。寝れないかもしれないが、横になって目を瞑るだけでもいいから体を休ませなさい」
「はい. . . . . . あの、ルフト様。1つだけ我儘を言ってもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ」
「手を握ってください」
俺はベッドに腰かけ、ルーナの手を握った。
「ふふっ、ルフト様の手は大きいですね」
「ルーナを守るためだよ」
「嬉しいです。ずっと守ってくださいね」
「もちろん」
俺はルーナの頭を撫でながらそう言った。
しばらくすると、可愛い寝息が聞こえだした。
やはり寝不足だったのだろう。
しばらくはこのまま休ませておくか。
♢ ♢ ♢
今日発ったばかりのルフト様から連絡があり、町の教会の地下に子供たちが囚われているという情報をくださった。
たった一日で突き止めるとは、さすが我が夕凪の主だ。
私はすぐに精鋭を集め、転移を使ってルフト様のいらっしゃる町へ行く。
町にある教会はすぐに見つかった。
どの建物よりも大きいからだ。
今は夜になっており、私たちの隠密行動に気づくのは至難の業だろう。
ルフト様は気づいているだろうけど。
そうして、教会の地下への入り口を探す。
ここまで近づけば子供たちの気配もつかめる。
地下への入り口を探すのはそこまで難しくなかった。
鍵がかかっていたが無理やり壊し、中にいた研究員を片っ端から消していった。
子供たちに平気でこんなことをする者は、もはや人間ではないと思う。
地下にいた子供たちは、私たちが研究員を消していくのを見てかなり困惑していたが、私たちが微笑みながら転移の魔道具へ避難を促すとすぐに従ってくれた。
ルフト様のこの魔道具は本当にすごい。
そのままどんどん避難させていくと、上の奴らも気づいたのか、下へ降りてくる気配がした。
ほとんどの奴らは大した強さもなく、1人で余裕だったけど、降りてくる奴らの中に1つかなり強い気配があった。
全員でやれば勝てるだろうが、子供たちを守りながらでは分が悪すぎる。
アレが下りてくる前に子供たちを避難させなければ。
「みんな、早くここに避難して!」
「リアーナ様。アレはまずいです」
「わかってるわ。だから急がないと」
「俺が足止めを!」
「それはダメよ。あれには全員でかからないといけないわ」
そうして、ある程度子供たちが避難し終えたとき、その気配が来た。
――ドガーン
「よくもこれほど荒らしてくれたな」
「っ、ミランダは残りの子をお願い! 他はこっちに来て!」
「いったんこの研究所はリセットさせてもらおうか」
そう言うと、ここの司教は子供たちに向かって魔法を放った。
「くっ、きゃあっ」
その魔法をリアーナが間一髪で受け止めたが、そこへ司教が切り込んでくる。
ぎりぎりで弾いたものの、斬られてしまった。
――ガキンッ
「何っ?!」
司教は、確実に斬ったはずの剣が、ルフト様の加護によって防がれたことに驚いている。
「おらっ」
トエルがそこに魔法を放ちつつ切り込むが、魔法は避けられ、剣も空振りに終わる。
「ふんっ」
「グハッ」
空振ったところを蹴られ、トエルは壁際まで吹き飛ばされた。
ダメージは負っていないが、衝撃はそこまで吸収できない。
「ハアッ」
――ギーン
そこに序列7位である獣人のミカが短剣を突き立てるが、難なく受け止められてしまう。
「子供にしては上出来だが. . . . . . おっと、危ないな」
そこに渾身の風魔法をリアーナが放つが、それも避けられてしまった。
「ガッ」
「きゃあっ」
ミカが奴の剣を受け止めたが壁まで吹き飛ばされ、リアーナにぶつかった。
「お前たちも実験に加えてやろう」
そう言って剣を持ち、リアーナたちの所へ向かってくる。
ダメージは全く負っていないが、実力の差がありすぎる。
このまま戦っても、じり貧になってしまうのは明らかだ。
「どうすれば. . . . . .!」
「やはりリアーナたちでは此奴はきつかったか」
「?! 誰だお前は?」
音もなく司教の背後に現れたのは、我らが夕凪の主、ルフト様だった。
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