第11話 魔法の開発

 この辺りの研究所を全て潰してから、全員で住める建物を造りつつ、研究所にあったものと町で買った本で魔法の勉強をした。

 手に入れた風神の知識には魔法のことがほとんど無かったのだ。

 どうやら風神は神のごとき魔力量と固有能力を持っているが、魔法はほとんど使えなかったようだ。

 まぁ、使えなくてもこの能力で大体のことはできるが。

 一気に空気を圧縮すれば火を生み出すことができ、地面を抉れば土の魔法ができる。

 無理やり空間を歪めることも可能だ。

 唯一できないのは水を生み出すことぐらいだろう。

 ただそれでも、今の時代は魔法を使えたほうがいい。

 そもそも他の子供にも教えられないし、ルーナとも鍛錬ができない。


 そういうわけで、魔法の勉強を始めて4年が経った。

 俺は今9歳であり、ついに新たな魔法の開発に成功した。

 もともとこの風神の知識をかなり応用できたため、他の人よりも理解ができたようだ。

 俺が開発した魔法は2つ。

 1つは転移魔法だ。

 これはかなり魔力を持っていかれるが、とても便利な魔法である。

 王都には既にできているらしいが、巨大な魔道具を使い、何人もの魔法使いがいなければ使えないらしい。

 俺は使う必要がない、というか使えないが、ルーナは使えたほうがいいだろう。

 できるだけ使用魔力を削減して、ルーナでも1日5回は使えるようになった。

 もともとルーナの魔力量は、おそらく世界でもトップクラスになっているだろう。

 実験の副作用ではあるが。


 そしてもう1つは、魔法破壊だ。

 これは魔法と言っていいかわからないが、魔力を使っている以上、魔法に分類したほうがいいだろう。

 この魔法は消費魔力が少ない代わりに高い魔力操作の技術が必要で、今のところ使えるのは序列10位の奴までだ。

 才能的には20位ほどまでは使えるようになるだろう。


 ここで少し魔法について説明しておく。

 この世界では、全ての生き物が魔力を持っている。

 その中でも、魔力量が多い、かつ自分の魔力を操作する才能(適性)を持った者のみが魔法を使える。

 魔法は現在、火、水、風、土、光、闇の基本6属性に加え、空間属性と時間属性がある。

 基本6属性は得手不得手があるものの、基本的に人間ならば全員適性があり使える。

 ただ、空間属性と時間属性は少し違い、使える者がかなり限られる。

 まず空間属性についてだが、これはほとんどの人が適性をもっているらしい。

 しかし、この属性の魔法は全てにおいて難易度が高く、神話の時代ならば多くの生物が使っていたが、今の時代では使えるものはほとんどいない。

 もし使えたら、国でもトップクラスの魔力操作ができている証拠になるらしい。


 そして時間属性。

 これは適性を持つものが滅多に生まれない属性だ。

 神話の時代でも持っている奴はあまりいなかった。

 歴史書にたまに使っている魔法使いが出てくるが、全員がほんの少し時間を止めるくらいで、まったく実用的ではなかった。

 この属性は適性を持つ者が少ないだけでなく、魔力操作の技術も空間属性より高いのだと思っている。


 そして俺が開発した魔法は、転移魔法は空間属性であり、魔法破壊は属性のない、単なる魔力操作によるものだ。

 俺はこの属性の無いものを無属性魔法と呼んでいる。

 無属性魔法は他にもあり、既にハイレベルな冒険者が必ず使っている身体強化が身近な例だ。

 あれは身体強化魔法と呼ばれていて、強化属性なんて言われているが、ただの魔力操作である。

 俺は魔力の操作は化け物じみているために魔法破壊は簡単にできるが、転移魔法は空間属性の適性がなく、使えなかった。

 ここの子供たちは全員適性がありそうだから、魔力量さえ増やせば序列15位とかまで使えるかもしれない。

 現在使えているのは序列6位までだが。


 ちなみに今この組織には500人近くの子供がいる。

 俺たちがいた遺跡近くの研究所だけ数が少なかったようだ。

 おそらく、一回の実験にかかる時間が長いからだろう。

 他の4つの研究所の子供たちも1年間でかなり成長しており、特に今いる南の研究所の子供たちはほとんどが序列の上位に入っているらしい。

 この序列は変動制で、上の者と戦って入れ替わっていくらしいのだが、俺ではなく不動の序列2位~5位が管理している。

 つまりルーナが統括しているのだが、俺は他の者には興味がないため、ルーナから話さない限りはどうでもいい。


 転移魔法が使える他の4人は、1人ずつ研究所を担当している。

 南の研究所は俺とルーナがいるため、あまりやることは無いが、他の所は全員をまとめる必要がある。

 大変な仕事なのでやりたくないと言い出すかと思っていたから、管理する奴は俺が直々に鍛錬してやると言ったら途端にやる気を出した。

 もちろんこれはルーナの発案である。

 この組織をまとめられるのはルーナだけだろう。


 「ルフト様。この組織もかなり成長してきましたから、なにか組織の名前が欲しいんです」


 「名前か」


 これはまた難しいものだな。

 ルーナが欲しいなら何が何でも気に入る名前を付けるが、俺の頭で思いつけるかどうか。


 「ミランダに聞いてみるか」


 ミランダは序列5位の女子で、研究所の管理人の中で最も弱いが、おそらく一番頭が良い。

 俺のいる南の研究所にいて、たまに頼っている。

 ちなみにだが序列4位はトエルという男子で、序列3位はリアーナという名前の女子だ。


 「できればルフト様の考えたものがいいのですが」


 ルーナがそういうのなら、俺自身で思いつかなければならないな。

 俺の持つ知識をフル活用して、良さそうな名前を捻りだす。


 「. . . . . . 夕凪ゆうなぎはどうだ?」


 「素晴らしい名前です。さすがはルフト様ですね」


 気に入ってもらえたようで良かった。

 笑顔のルーナをみて、つい頭を撫でてしまうのだった。

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