第10話 南の研究所
南以外の研究所を潰し、遺跡近くの研究所にいた残りを均等に配置して、俺たちは最後の南の研究所に来た。
序列3~5位をそれぞれの場所に配置しておいたから、なんとかなるだろう。
南の研究所は最も町から離れていて、魔物がかなり出てくる危険地帯だ。
今回は俺とルーナだけだから、飛び回りながら研究員を刻んでいく。
ルーナはだいぶ飛ぶ速度を上げても大丈夫になっていた。
もちろん、細心の注意は払っていたが。
そしてこの研究所はあの研究員の言った通り、魔物が使われていた。
しかし、魔物に風神の細胞を取り込むのかと思っていたが、どうやら子供たちと魔物を合体させようとしていたようだ。
こちらも研究員を生け捕りにして吐かせたが、知っている情報ばかりだったので、すぐに刻んだ。
ほとんどの子供が尻尾やら耳やらが生え、ある者は顔自体が魔物のものに変わっていた。
ルーナはそんな子供たちを見て気の毒そうな顔をしていたが、見た感じ他の研究所の子供たちよりは健康そうである。
ただ、1人だけ面倒な奴がいた。
♢ ♢ ♢
研究員を刻みながら飛んでいると、最後の大きな部屋の中に、1体の大きな魔物がいた。
すぐに刻もうかと思ったが、どうやら自我があるらしく、後ろで怯えている研究員に鞭で打たれていた。
「何をしている! ほら、この侵入者をさっさと殺すのだ!」
なにやらあの鞭に細工がしてあるようで、命令に背けないらしい。
「ルフト様、あの子をどうにかできませんか」
「わかった。とりあえずやってみようか」
ルーナに頼まれたのだからあの子は助けないといけない。
おそらく、魔物と合体させられて、体のほとんどが魔物になってしまったのだろう。
「グルゥッ」
いきなり襲い掛かってきたが、俺の寸前でそいつの周りの空気を止め、動けなくする。
「何をしているのだ! そいつを殺せ!」
「黙れ」
「ヒッ」
うるさく騒ぐ研究員に殺気を向けて黙らせ、魔物化した奴を観察する。
「おい、こいつを元には戻せないのか? 早く答えろ」
「は、はいっ。無理ですっ」
「少しも元には戻らないのか?」
「はいっ、無理で. . . . . .」
──グシャッ
同じ答えを言ったので、もう用はないから切り捨てる。
一応こいつは自我があるようだから暴走しないならばこのままでいるしかないだろう。
念のためにこの研究所を調べてみようと思うが、さっきの研究員が即答していたことからも、おそらく元には戻れない。
とりあえずは他の子と同様に様子見だな。
♢ ♢ ♢
研究所の制圧が終わり、最初の研究所と同じように子供たちを集めて、同じように訓練させた。
他の研究所同様、全員実験台にされたようで、魔力が跳ね上がっていた。
まだ子供ということもあって、呑み込みも早く、体も発達するだろう。
そして他の研究所と違って、合体させられた魔物の力を使えるものがいた。
多くは身体能力が上がったり、若干の耐性がつくぐらいだが、体の大部分が魔物になっている子はほとんど魔物と遜色ない力を使っていた。
さっきの魔物化してしまった子供だけでなく、他にも2人いた。
これならば、知識を与えてすぐに全員強くなれると思う。
「ルーナ、これからはここで生活していこうと思うが、それでもいいかい?」
「はい。私はルフト様と一緒ならばどこでも構いません」
「俺もだよ。たまに他の研究所の奴らと連絡は取った方がいいだろうから、あの遺跡を改造するのもありかもしれないな」
「全員が住める大きさの建物があると便利だと思います」
「そうだね。ルーナは全員で一緒に住める場所が欲しいのかい?」
「はい。その方が全員と交流できますし、ルフト様が飛んで行かれる必要もありません」
ならばさっさと造ろうか。
俺の知識をもってしても時間がかかるだろうが、ルーナが欲しいのなら造るしかないだろう。
ともかくこいつらを育てて、戦力になってもらわないとな。
♢ ♢ ♢
全員の場所を作るために俺はまず、電話を作った。
俺の持ってた知識を使って、魔力を波として利用した無線式のものだ。
これならば他の研究所とも連絡が取りやすいだろう。
そしてその電話を渡す際に造りたい建物のことを話すと、自分たちで造ると言い張っていた。
できるだけ俺の手を煩わせたくないらしいが、さっさと造ってほしいので初めは俺だけで造ろうと思う。
一応、割り振った子たちはそれなりに強くなって、冒険者登録している者もいるから建築はなんとかなるだろう。
「ルーナ、どんな建物にしようか?」
「ルフト様の知識にある中で一番かっこいいものはどうでしょうか?」
「そうだな。一度それをベースにしてみるか」
しかし俺にはかっこいいものなどわからない。
知識にある中でそれなりに強大な神が住んでいた神殿をいくつか描き出し、ルーナに選んでもらった。
しばらくはこれを造るのに時間を費やすとしよう。
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