第9話 他の研究所
俺たちは8歳になったが、ここでの生活もだいぶ慣れてきて、他の奴らもなんか序列を作って組織らしくなっていた。
この序列はどうやら力で決まっているらしい。
ただ、力の使い方が上手い奴はだいたい頭が良いので、脳筋でない限りちゃんとしたシステムになるのだろう。
ちなみにだが、俺が序列1位、ルーナが序列2位だ。
ルーナはこの中でも圧倒的に強くなっていた。
毎日頑張っていたからな。
もう研究員が来ても大丈夫だと思うが、まだ魔物を何人かで相手しないと倒せないため、不安である。
こいつらが死んでしまったらルーナとの約束を守れないからだ。
もし、仮に俺がいないときにこいつらが襲われても、このあたりの風は俺の支配下にあるからいつでもわかるし、本気を出せばだいたい10km/
「あの、ルフト様」
「どうしたんだ?」
「本には世界中にこのような研究所があるのですよね?」
「確かにそう書いてあったし、間違いないと思う」
「助けてあげることはできませんか?」
本当に、ルーナは優しい。
ここだけじゃなく他の研究所の子供たちまで助けたいとは。
「全部はかなり時間がかかるが、少しずつなら潰して回れる。ルーナは他の研究所の子供たちを助けたいんだね?」
頭を撫でながら問いかけると、頬を少し染めながら頷いた。
「はい。無茶を言っているのはわかっていますが、それでも私だけ助かってるのはなんだか良くない気がするんです」
「そんなことはない。ルーナはつらい日々を過ごしてきたんだから。悪いのは全て研究所の奴らだ。あの神伝教もそのうち必ず消してやる。だから、もっと楽しく生きてほしい」
「はい」
ルーナは笑ってくれたが、やはり他の研究所の子たちを考えると気の毒なのだろう。
俺にはもうわからないが、ルーナの気分を害するのならその全てを消すのが俺の役目だ。
これからは本にあった他の研究所を潰して回るとしよう。
♢ ♢ ♢
そういうわけで、俺は他の研究所を潰す前に、潰した後の研究所の子供たちの面倒を見れる奴を選抜した。
序列の高い奴が基本だが、知識をかなり身につけたやつも合わせて5人程度を連れていくことにした。
本に書いてあった、ここから最も近い研究所に飛んでいく。
もう皆俺の力を見慣れており、騒ぐ奴はいなかった。
そして着いたのが5kmほど離れたこれまた山奥の研究所だった。
どうやら、あの遺跡を中心にこの辺りは神話の時代の聖地のように捉えられているらしく、研究所がかなり密集していた。
少なくともあと2つはあるはずだ。
聖地と言っても、あの神伝教の一部にとってだが。
そして研究所の入り口を見つけ、見張りらしき男を切り刻む。
そのまま歩いて中に入って行った。
♢ ♢ ♢
「っ、誰だ. . . . . .」
「おいっ、止まれ. . . . . .」
全員、歩いている俺たちに気づいたときには切り刻まれている。
そのまま研究所の隅々を探し、一番偉そうな研究員を1人だけ生け捕りにして、後は消した。
そこにいた子供たちは俺たちの所と同様にパニックになっていた。
「おい、お前の知っていることを全て話せ」
――ゾワッ
そう言って殺気を向けると、生け捕りにした男は血相を変えて頷いた。
周りにいた子供たちも動かなくなってしまったが。
「ここでは何をしていた?」
「ふ、風神の研究を」
やはりこの辺りは風神の研究を目的としているのか。
「お前たちは神伝教だな?何が目的だ。いや、なぜ神話の時代の生物を生き返らせようとしている?」
「神伝教の戦力のためと聞いている。それ以外は知らない。本当だ」
「子供たちを使って何をしていた?」
「風神の、細胞の移植を、していた」
「風神の細胞があるというのか?」
「このあたりには、風神の欠片らしきものが多く見つかっている」
なるほど、だからこの辺りに研究所が多いのか。
「他の研究所も同じなのか?」
「風神の研究は同じだが、遺跡の近くだけは違う」
「それは知っている。それで、他にある研究所の位置を教えろ」
「この辺りにあと4つ、私はそれしか知らない」
「4つ? どこにあるんだ?」
「遺跡を中心に東西南北にそれぞれ5kmほどに一つずつと、遺跡のすぐ近くに1つだ」
あの研究所の本には南の方が書かれていなかった。
何かあるのだろうか。
「南の研究所は何をしている?」
「魔物を使っているそうだが、詳しくは知らない」
これは南の研究所に行かないといけないな。
「知っていることは全部話した。だか. . . . . .」
不要になった研究員を切り捨て、子どもたちを集める。
前回と同様に、空気を操作して声を響かせた。
「これを聞いている者は広場へ集まれ」
♢ ♢ ♢
この研究所には100人近くの子供がいたが、連れてきた5人に任せていったん遺跡近くの研究所へ戻る。
どうやら、南とここの研究所以外は風神の細胞を子供たちに移植する実験をしているらしい。
風神の細胞は多く発見されており、その分、子どもたちも多くが犠牲になったんだろう。
さっさと他の研究所もつぶして、この研究所にいた全員を他の研究所へ割り振ることにした。
さっきの惨状を見て、ルーナがとても悲しそうな顔をしていたからだ。
序列が低い者でもそれなりの知識は蓄えたはずだから、何とかなるだろう。
まぁ、他の場所とそんなに離れてない上に、俺の知識にある“電話”なるものを作ればすぐにやり取りができる。
とりあえず南以外の研究所を潰すとしよう。
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