第2話アルバイト

1998年、4月。

大学生の僕はアルバイトを探した。


兼業農家の息子は、仕送りだけで生活は出来ない。

アルバイトを直ぐに探した。

法学部だったので、警察官か、地歴公民の高校教師の夢しかなかった。

だから、塾講師の仕事を探した。


わかな学院だったと思う。

もう、26年前の話しだ。


世間で、中学生が教師をナイフで刺殺した事件が流れていた。

僕の担当は、その犯人と仲が良かった中学生の個別指導を受け持った。

塾長さんから、事件の話しはしないようにと

優しく言われていた。


その子は英会話教室に通っており、担当は英語と数学だったが、数学に時間を割いた。

2年生だったが、基礎が全くダメ。最初の2カ月は小学生6年生から中学1年生の問題をひたすら解かせた。

もちろん、解の求め方の説明はした。


親御さんから、今まで、数学で50点以上取った事がないので、最低70点は取れる様にしてもらたいと、僕はお願いされていた。

中学生1学期の中間テストが行われる事を知った。


範囲は、三角関数。

徹底的に、基礎を叩き込んだ。間違っても、似たような問題を何回も、解かせた。

すると、彼に見えてくるものがあるらしい。


「先生、解りました」と。


そして、今回のその時が来ます。

1998年6月。


中間テスト。

英語は、98点、数学は……96点だった。

これには、本人がびっくりして、僕に自慢げにテストを見せて、間違ったところの解答をした。


迎えにきた、親御さんから、

「先生のお陰です」

と、何度も頭を下げれられた。

あぁ〜、先生ってこんな良さがあるんだな?と、思っていた。

しかし、僕はこの学習塾の講師だけではなく、家庭教師、飲食店と3つ掛け持ちアルバイトをしていた。

大学生は、お金がかかるのだ。


その、知識の貯金があるから、今は息子の数学を教える事が出来る。

息子も来年、高校生。


あの時の生徒より、年上だ。


先生の気分を充分味わえたので、結果的には良かったと言える。

あの頃は、僕は輝いていた。


スーツで授業して、帰宅後、アパートの1階に住んでいたので、カーテンを開け、夜中まで勉強して、生徒の問題を作っていた夜を思い出す。


だが、その姿をカッコいいと思い見ていた、1人の美女がいるのだが、その話しはもっと、ずいぶん後の話し。


その頃、野球サークルを辞めて、女子を集めて、飲みサーを作るのだが。


これも、後の話し。

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その時、トリスは動いた 羽弦トリス @September-0919

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