第13話 香り付け
「うーん、やれることが多い」
「どうしたのお兄様?」
虚空を見つめながら呟いたシキに反応して、小柄な少女〈SG-070 エイヴェ・サリア〉がこてりと首を傾げた。
服装はシアニスと同じくショートパンツ仕様の軍服だが、上着は長袖ではなく半袖になっている。
そして袖から伸びた両腕は純白の美しい鳥の翼になっていた。
セミロングの髪も毛先は翼同様に純白だが、途中から赤に変わるという不思議な髪色をしている。
「クレジットを使ってスプリガン本体のカスタマイズやアセンブル、コアAIの武装変更が出来るのは分かるが、拠点設備や兵站、工作機器まで買えるのか……。
「ねえお兄様?」
「現状のユニット配置で国防は問題無いんだよなあ。余剰のクレジットや戦力、物資でこれから何をするか考えないと……」
「お兄様ってば!」
「おわっ」
頬を膨らませ可愛らしく怒ったエイヴェが翼を使って飛び上がり、シキが見つめていたメニュー画面の間に割り込んだ。
突然吐息のかかるくらい近い位置に美少女の顔が現れたため、驚いて仰け反るように倒れ込んだシキだったが、背後の柔らかい双丘がそれを阻んだ。
「エイヴェ、マスターの仕事の邪魔をしてはいけません」
「だってお兄様がわたくしのことを無視するんですもん」
シキを抱きしめながらオルティエが注意するが、エイヴェはぷりぷりと怒り続けている。
「ごめんごめん。出来るだけ皆の相手をすると言ったのは俺だから俺が悪かったよ」
「お兄様……えへへ」
シキが謝りながら頭を撫でると、直前まで怒っていたのが嘘だったかのように、エイヴェは幸せそうにうっとりしている。
同衾当番だったセラを転送した後、今日も
昨晩の時点で現在稼働している十二体のコアAIとの顔合わせは終わっている。
エイヴェは本日の出迎え当番だそうで、頭を撫でられ続けて顔を蕩けされているすぐ側には、翼のような飛行パーツを装備したスプリガンが鎮座していた。
「各機体にコンセプトがあるみたいだな。エイヴェは飛行特化か」
「はいっ。上空からの偵察及び強襲はお任せください。お兄様」
「ところでどうして各コアAIで俺の呼び方が違うのだろう?」
「そういう設定だからです」
「ああ設定ね……」
仮に設定だとしても、設定される側のコアAIが設定だと認識しているのはどうなんだろう。
メタいなあと思ってしまうシキである。
「オルティエが他のAIと違って浮いているのも立体映像という設定だからだっけか」
「はい、その通りです」
メニュー内で閲覧できるスプリガンやコアAI、各種武装や換装パーツには
オルティエの説明文はこうだ。
〈SG-006 オルティエ〉
主人公をサポートし、スプリガン及びコアAIを統括する総合支援AIのひとり。
その体は空気中の分子で造形し投影された、質量のある立体映像で構成されている。
見る者を射抜くようなその銀眼は、どこまでも美しくどこまでも冷たい。
だがそれは如何なる時も冷静であり続け、
「オルティエ設定守ってる? キャラ崩壊してない? 大丈夫?」
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