第二章 刻まれる詩

『声』


星の光降り注ぐ地で――。


地平の果ての火を掻い潜り。

薄く張った水を揺らして。

誰でもない誰かが



何処どこでもない何処どこかで――。


欲でもない欲と。

渇いてもいない飢えと。

望んでもいなかった、願いが叶う。



寂れた空席を見渡して――。


心もないのに慟哭する。



己の真芯に突き刺さった刃を――。


愛しく撫で。

指で弄び。

そっと、そっと、優しく引き抜く。




――時が来た。




遙か遠方から――。


直ぐ間近から――。


肉薄するほど遠くの近くから――。




声が聞こえる――。




必死に叫んで血を吐きながら。


大地を踏みならし喝采を上げながら。


醜悪な黒を滴らせ、欺瞞の奥で下卑た笑みを浮かべながら。



世界の何処かで――。


誰でもない誰かを呼ぶ声が。


声が――。




――声が聞こえる。

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