第2話 ルムラ村

「そういえば、俺服着てるな。」よく思い出すと、神様に落とされた時からサオルは、いかにも中世の村人風の服を着ていた。「それで〜♡指輪はどうするの〜♡?」セーラー服のまま、あたりをフワフワと浮いているリロエ。


「お前、飛べるんだったら、さっきの人探せるだろ?見てこい。」と冷静な判断を下す。「え〜〜〜♡でもさっきあの娘に興奮してたよね〜〜〜♡?」とニンマリしながら顔を近づけるリロエ。


「いいわ♡これだけはやってあげる♡」そうしてリロエは両手を前に出して「ハッ!!」と唱えると、先ほどの犬耳少女の履いていたパンティーがサオルの頭上に落ちて来た。


「......なんだこれ。これでどうしろと....?」頭の上に落ちて来たパンティーを手に取り眺める。暖かみはなく、まるで新品である。


「これは私のスキルで出したあの娘のパンティーよ♡

「これの持ち主知りませんかー!?!?」って聞いて回れば♡?」と中々ハードルの高い提案をするリロエ。


「ふざけんな!そんなの出来るわけないだろ!」と当然キレるサオル。「取り敢えず、大きな建物にでも行って、知ってる人がいないか聞くぞ。」そうしてサオルは再び歩み始め、リロエも浮きながら着いていった。


「ここか....??」村の中心部に、役所の様な大きな建物があった。小さな村なためか、老朽化で外見はボロボロである。


中に入ると、図書館も兼ねているのか沢山の本棚と、受付の居るカウンターがあった。

「あの〜すみません。少し人を探しているんですが....。」「どうしました〜?」と受付の女性が出る。


「実は犬耳で、金髪ツインテールの少女に大切なアイテムを盗まれてしまって、何か知っていますか?」とコミュ力を発揮するサオル。


「あ〜。それはプロパちゃんの事ね〜。ちょうど詳しい子がいるわ〜。」「スーちゃ〜〜〜ん、ちょっといい〜〜〜??」と女性は一度奥に引いていった。


(あのセクシーな少女の名前はプロパと言うのか....つまり、先ほどリロエに貰ったパンツはプロパン....)そんなくだらない事を考えながら待っていると、「お待たせしました。」と窓口から声が聞こえた。しかし、姿は見えない。


「よっと。」と声がするなり、小柄な少女が窓口から顔を出した。「司書のオスミと申します。プロパの事に関してはすみません。彼女は珍しいアイテムに目がないんです。えっと.....。」


少女は踏み台の上でつま先立ちをしていたが、次第にピクピクしていき、疲れた様なので降りた。「少しお待ちください。」少し回って従業員出口から出て来たのは、小学生高学年並みの身長の少女であった。


「重ね重ねすみません。プロパは偶にこの村に来る事があるので、その時に返すよう説得します。」見た目と裏腹にかなりハキハキと話す。「そうなんだ....。ところで、君はお手伝いをしているの??」とつい思った事を聞いてしまう。


「子供扱いしないでください。私はちゃんとした役員なんですから。」と大人びた返答をしたが、ムスったした顔になっており、そこは年相応らしい。


「スーちゃんは13歳にしてギルドの役員の資格を習得してるのよ〜〜〜。」先ほどの女性が戻って来た。「やめてママ。お客さんの前で。」と嫌がるオスミ。和むサオル。いないリロエ。


オスミは母親を押して窓口の裏方に戻すと、話を続けた。「こほん。では話を戻します。連絡用にプロフィールカードを見せていただいてもよろしいでしょうか?」


「え゛。そんなのあるの!?」と困惑するサオル。「プロフィールカードをお持ちでない....???」オスミはこちらを伺う。「す、少し待って!!!」とサオルは持ち物を見る。


それらしかない物がない事を確認すると、リロエが何かを知らないかを聞くため、リロエを探した。

「かわいいーーーーーー♡♡♡!!!!!」とオスミを見つめて、はしゃいでいるリロエを発見したが、サオルの声は耳に入らなさそうだ。


「その〜〜〜持ってないです。プロフィールカード。」と観念してハッキリ伝えるサオル。

「なるほど。そうなんですね。了解しました。」オスミはジャンプして窓口のチラシを取った。


「よろしければお作りします。どうしますか?」笑顔で提案するオスミ。(良かった。てっきり怪しまれるのかと....。)緊張が解けて安堵するサオル。


「プロフィールカードとは、私たちのHPやMP、バフ、デバフ類の効果がリアルタイムで見れるカードです。名前欄は本名でも偽名でも良いです。また、所持品、所持金、貴重品に関しても確認出来る他、ご本人様がタッチする事で非表示にも出来ますよ。」


「すごい便利なカードじゃん!是非作ります!!」とサオルは意気揚々とお願いする。


神様から貰った餞別の金から発行料金を払い、書類を書き、指紋を読み取ること10分、(色も選べたけどオーソドックスな黄土色にした。


発行までに時間がかかるとの事なので、役所の中を見渡す。この場所はどうやら「ルムラ村」と言うようだ。森の中に存在する無数の村に住む人がアイテムを買いに来たり、食物や毛皮を売りに来たりする村らしい。


このあたり、ショサンの森全体を含めて、冒険者協会の役所があるのはこの村だけとのこと。森の中には様々な魔物が暮らしているらしく、注意書きが書いてある。


また、5年前にはショサンの森の中にある幾つかの村が、凶悪な魔物によって滅ぼされ、森の一部は立ち入り禁止区域になったらしい。「えげつないな...。こんな世界で魔王討伐か....。いや、俺の童貞を捨てるために、絶対に魔王を倒してやる!!!」と俄然やる気を出した。


(なお、この間もリロエはオスミちゃんの周りを飛んだ眺めていた。)

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