第37話

望奈からは言えなかった。

ただ放課後、サッカー部の練習を哀し気に見ていた莉子の隣にいる事しか出来なかった。

「悠真、フォアードに決まったの」

「凄い、花形じゃない……!」

「南ヶ丘高と試合するの」

莉子の声は夕方の風に流されていく。

「南ヶ丘ってサッカー凄いよね。その試合でフォアードするなんてやっぱり凄いね。高原君って…… 」

望奈は、莉子の肩を優しく包み込むように抱いた。

「ずっと見ていたかったな…… 」

不意に莉子の瞳から涙が零れ落ちた。

「見てればいいの。誰にも邪魔なんて出来な

い」

望奈は励ますように力強く言った。

「望奈……!」

莉子は望奈にしがみついて泣き出した。

望奈は莉子の体を優しく抱きしめた。

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