第33話

「嘘…… 」

莉子は絶句している。

突然の事に気持ちが全く付いて行けていない。

放課後の屋上には悠真と莉子の他には誰もいない。

悠真は決まり悪そうに莉子から目を逸らしていた。

「もう一度言って…… よく分からなかっ

た…… 」

「ごめん、別れてほしい。他に好きな子が出来たんだ」

悠真はもう一度同じ言葉を繰り返した。

「好きな子って誰?」

訊きたくもないのに勝手に口を突いてその言葉が出て来た。

莉子の脳裏に書店の雑誌コーナーで、ずっと望奈の出ている雑誌を見ていた悠真の姿が浮かんだ。

「望奈……?望奈なの?」

漸く口を突いて出て来た声は震えていた。

悠真は口ごもると静かに頷いた。

莉子の瞳から涙が零れ落ちた。

「望奈には付き合っている人がいるわ」

胸の苦しさが言葉を尖らせていた。

「分かってるよ。でも好きなんだ」

悠真の苦しそうな目を見ているだけで莉子にはもう堪らなかった。

莉子はそのまま駆け出してしまった。

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