第33話
「嘘…… 」
莉子は絶句している。
突然の事に気持ちが全く付いて行けていない。
放課後の屋上には悠真と莉子の他には誰もいない。
悠真は決まり悪そうに莉子から目を逸らしていた。
「もう一度言って…… よく分からなかっ
た…… 」
「ごめん、別れてほしい。他に好きな子が出来たんだ」
悠真はもう一度同じ言葉を繰り返した。
「好きな子って誰?」
訊きたくもないのに勝手に口を突いてその言葉が出て来た。
莉子の脳裏に書店の雑誌コーナーで、ずっと望奈の出ている雑誌を見ていた悠真の姿が浮かんだ。
「望奈……?望奈なの?」
漸く口を突いて出て来た声は震えていた。
悠真は口ごもると静かに頷いた。
莉子の瞳から涙が零れ落ちた。
「望奈には付き合っている人がいるわ」
胸の苦しさが言葉を尖らせていた。
「分かってるよ。でも好きなんだ」
悠真の苦しそうな目を見ているだけで莉子にはもう堪らなかった。
莉子はそのまま駆け出してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます