第30話
望奈は16歳の誕生日をドラマの撮影現場で迎えた。
撮影スタッフがケーキを用意してくれた。
いちごたっぷりの生クリームケーキ。
望奈の顔が輝いた。
「16歳の誕生日、おめでとう!望奈ちゃん!」
「有難う御座います」
望奈は感激で胸が一杯になった。
切り分けられたケーキを全員で食べた。
とても優しい味がした。
望奈は胸があったかくなるのを感じていた。
望奈が全ての仕事を終えてマンションに戻って来た時、マンションの入り口に人影があった。
咄嗟に直樹は望奈を庇った。
「望奈」
声を聞いて驚いた。
其処に立っていたのは暖だったのである。
「誕生日おめでとう」
暖は望奈に小さな箱を渡した。
「これを渡したくて」
「有難う。そのために待っていてくれたの?寒かったよね」
2月の夜9時。風は刺すように冷たい。
「入って。あったかいものでも飲んで」
「いや、俺これからドラマの撮影があるんだ。だから行かないと」
「そうなんだ。それなのに来てくれたのね」
望奈は涙ぐんでいる。
暖の気持ちが嬉しくて、胸が一杯になってい
た。
「どうしても今日渡したくて」
「有難う……!」
望奈は堪らずに暖に抱きついていた。
直樹は車に戻って行った。
暖も望奈を抱き締めた。
少しの間、お互いに想いが流れ出すのに任せていた。
自分の部屋に入って直ぐに、望奈は暖から貰った箱を開けた。
中には銀色に輝くブレスレットが入っていた。四つ葉のクローバーが付いている。チェーンは細身のものだった。
一緒にカードが入っていた。
"HAPPYBITHDAY
16歳の誕生日おめでとう、望奈
暖"
望奈は早速ブレスレットを左手首に付けた。
電灯の光に照らされて四つ葉のクローバーが輝いている。
望奈は思わず笑顔になった。
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