第19話

「ランニングを始めたんですか?」

直樹が車を運転しながら訊いた。

「そうなの。暖と一緒に早朝練習をしているんだけど付いて行けなくて、筋肉痛」

望奈は苦笑いしながら言った。

「今日はティナの撮影がありますが大丈夫ですか?」

ティナとは女子中高生に大人気のティーン雑誌である。

「大丈夫。まさか湿布貼って撮影に臨むわけには行かないでしょ」

望奈は笑った。

直樹は薬局の前で車を停めると、直ぐに湿布を買って来た。

「今のうちに貼っておいて下さい。ちょっと触りますよ」

直樹は望奈のふくらはぎに湿布を貼った。

冷たくて気持ちいい。

「如何ですか?」

直樹が心配そうに望奈を見上げる。

「うん、楽」

直樹は再び運転席に座ると、車をスタートさせたのである。


カメラの前で望奈は溢れるような笑顔を見せている。

「いいねー。望奈ちゃん、その笑顔」

カメラマンはそう言いながら次々に望奈を撮っている。

胸までのストレートロングに、ピンクのレースのミニワンピースを可愛く着こなしていた。

今撮っているのは表紙の撮影だ。

この後、服を変えてカラーページの撮影とインタビューが残っている。

直樹はマネージャーとして離れた場所から見守っていた。

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