第13話

翌日の撮影で漸くOKが出て、望奈はホッとした。

これも吹石さんのお陰だ……

結局、望奈は劇団あすかで演出家の先生の指導を受ける事になった。

だが、暖との演技稽古も続いていた。

「早い!それじゃまくし立てているだけで何言ってるか分からない!」

暖は5歳から役者をやっているだけあって、演技がとても上手い。特に細かな動きがとても良かった。

望奈は暖に必死に付いて行った。

映画の撮影は順調に進んでいる。


暖は森越学園高校芸能科の3年生である。連日の過密スケジュールで、暖は学校に行けない日も多かった。テレビやCM、人気雑誌の撮影で寝る間もない忙しさの中でも劇団あすかでの演技稽古は欠かした事がなかった。


電話がかかって来た。

莉子からだった。

『あのね、高原君から告白されたの。望奈、ごめんね。私…… 付き合ってもいいかな』

莉子の声は涙で湿っている。

知らず知らずのうちに、望奈の頬を涙が伝って来た。

「勿論よ。莉子、ちゃんと付き合って。良かったね…… 」

『有難う……望奈』

莉子は泣いていた。

「あんまり私の前で惚気ないでよね」

望奈は泣き笑いになって言った。

「じゃあ、まだ仕事残っているから切るね」

もう午後8時である。

丁度演技練習が終わった所だった。

「何かあったのか?」

隠れるように涙を拭っていた望奈に暖が話し掛けて来た。

「親友の恋が成就したの」

「じゃあ、嬉し涙だな」

暖はそう言うと、望奈の頭をポンポンと叩い

た。

「お疲れ様」

暖はそのまま稽古場を後にした。

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