第12話

「有難う御座いました」

劇団近くのハンバーガーショップで、暖と望奈は向かい合わせに座っていた。

「いいや。これで明日は大丈夫。後はもっと堂々としたらいい」

稽古の時とは全く違う柔和な表情と、柔らかな雰囲気を感じて望奈はホッとした笑顔になっていた。

「お腹空いただろう?」

「もうペコペコです」

望奈はそう言ってハンバーガーに齧り付いた。

「菅野さんはどうして芸能界に入ったの?」

「クラスメイトが私の事をテレビ番組に応募して…… それがキッカケです」

「女優になりたいわけではないの?」

暖は真面目な顔をしている。

怖いぐらい真剣だった。

この人には誤魔化しは利がない。

望奈は本心を打ち明けた。

「こんな事言えば怒られるかもしれないけど、まだよく分からないんです。でも芸能界は誰でも入れるわけじゃないから、私の出来る事をやってみたくて…… 」

望奈はおずおずと口を開いた。

「そう」

暖はそれだけしか言わなかった。

「でも明日も来てもいいですか?私、もっと演技の事知りたいです」

望奈がそう言うと、暖は満面の笑みを浮かべ

た。

「頑張ろうね」

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