第11話

「私だって高坂君が好きなのに!」

暖が望奈にお手本を見せていた。

暖の声には悲しみと、親友と同じ人を好きになった切なさが感じられる。

「親友はいる?」

不意に暖が望奈に訊いて来た。

「います」

「じゃあ、彼女の事を思い浮かべて。彼女と同じ人を好きになったらどんな気持ち?」

望奈はきつく目を閉じた。

高原君……

高原君は莉子を選んだ。

でも私だって、入学した時からずっと好きだった。

「私だって、高坂君が好きなのに!」

望奈は胸の痛みと悲しみを台詞に込めた。

もう夢中だった。

「そう!今の感じだ!出来たじゃん」

暖は優しく微笑んだ。

望奈はホッとしたのか、思わず涙が溢れ落ち

た。

「よく頑張ったな」

暖は望奈の頭に優しく手を乗せた。

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