第6話

苦しくて……

苦しくて堪らない。

望奈は体育館の陰で一頻り泣いた。

そして顔を洗うと、手鏡で涙の跡が残っていない事を確かめた。

よしOK!

そして望奈は音楽室に向かった。

望奈が次に学校に行けるのは3日後だからどうしても今日中に伝えなければならない。

莉子は吹奏楽部でフルートを吹いている。

つい先日までは望奈もその中にいた。

莉子と一緒にフルートの練習をしていたのだ。

音楽室からトランペットや、クラリネットなどの混ざった音が聞こえる。

まだ担当の教師が来ていなかった。

今の内だ。

望奈は思い切り深呼吸すると息を整えた。

窓から覗いて莉子を手招きで呼ぶ。

「どうしたの?」

莉子が廊下に出て来る。

「聞いて莉子、さっき高原君に呼び出された

の。高原君、莉子に付き合っている人がいるか私に訊いて来たの!」

望奈は満面の笑顔で莉子を見て言った。

「本当に……?」

莉子は、まだ信じられないように望奈を見ている。

「近く告白されると思うから、ちゃんと受けるのよ」

望奈は念を押すように言った。

「でも、望奈…… 」

莉子はかなり戸惑っている。

「私の事考えてくれるなら、ちゃんと付き合って」

「望奈、いいの?」

莉子は涙を浮かべている。

望奈は堪らずに莉子を抱きしめた。

「勿論よ!本当に良かったね!莉子!」

莉子は泣きながら望奈に抱きついている。

自然と望奈の頬を涙が伝っていた。

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