第5話

望奈には映画のヒロインの話が来ていた。主役は吹石暖である。

暖は望奈より2歳年上の17歳である。

5歳の時に子役デビューしてから、ずっと俳優として活動して来たが、15歳の時、英会話スクールのCMに出た事で人気は急上昇した。それからは超人気スターの道をひたすら走って

いる。

顔合わせの前に、午後から学校に行く事が出来た。

望奈は放課後、悠真に屋上に呼び出された。


望奈はもう心臓が飛び出しそうなほどドキドキしていた。

「話っていうのはさ、川島って誰か付き合っている人いないのかな…… 」

悠真はかなり緊張している様子だった。

いつもの太陽のような陽気さは成りを潜めている。

え?

望奈は弾かれたように悠真を見た。

「菅野って川島と仲良いから、そう言う事知っているんじゃないかと思って」

「そんな人いないよ…… だって莉子は高原君の事…… 」

望奈は胸が破れるぐらいの苦しさを感じてい

た。

大きな力で握り潰されるようで息も出来ない。

「えっ?」

「莉子に告白したらいいと思う」

何とか息を飲み込んで望奈は言った。

目尻が熱くなるのを何とか堪えている。

「私、もう行かなきゃ……!」

望奈は堪らずにそのまま屋上を飛び出し掛け

た。

「有難う。菅野」

悠真の言葉が背中に大きな矢となって刺さる。

嬉しそうだ。

望奈は涙を堪えながら走って行った。

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