第13話

暖はミルクキャンバスに来ていた。

カウンター席で、いつものモカを飲みながら、流し台で、洗い物を片付けている双葉を見ていた。

「どうしたの?」

双葉が洗い物の手を止めた。

「今日、ドラマのクランクアップだったんだ。花束貰ったんだけど…… マネージャーに渡しちゃったな」

「クランクアップの度にお花くれるよね」

「ウチに飾るより、ここの方がお客さんに見てもらえるし」

「吹石君の部屋にお花合うと思うよ」

「そうかな」

「そうしたら私、見に行こうかなあ」

双葉は洗い物をしながら、何気なく言った。

丁度客が切れた所で、店内には暖と双葉以外誰もいない。

マスターも奥の部屋で休憩中だった。

「あ、ごめん。私、何言ってるんだろう」

双葉は洗い物を止めると、急いで手を洗った。

「今の無し。ゆっくりしてね」

双葉は慌てて奥に引っ込んだ。


双葉は暖簾の陰で顔の火照りを抑えていた。

私ったら一体何を言ってるんだろう。

あの頃の2人に戻れる筈はないのに……

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