第12話

喫茶店に入り、コーヒーを頼んだ後、暖は水を二口飲んだ。

「お話と言うのは…… 」

「吹石さんにはどなたかお付き合いされている方はいますか?」

はるかは胸の高鳴りを必死に抑えながら口を開いた。

「いいえ。特には」

「もし、良かったら私と付き合って頂けませんか?」

そこでウエイトレスがコーヒーを運んで来た。

「あの…… 望奈からはるかさんには好きな人がおられると聞いていたんですが」

「それ、あなたの事です。望奈に相談しましたから」

はるかは真っ赤になっている。

「何だ。そうだったんですか!好きな人がいるとは言ったものの、相手を聞いてなかったので……」

暖は照れ臭そうに笑った。

「あの…… 望奈とはそんな所まで話をしているんですか?」

「ええ。望奈とは何でも話していますよ」

暖はあっさりと話した。

「吹石さんは望奈の事が好きなんですか?」

はるかはおずおずと口を開いた。

「彼女は大事な親友です」

暖の声が真剣なものになった。

「親友って……男女間でそういう事があるんですか?」

「僕はあると思っています」

「では望奈の事は女性としては見ていないんですね」

「はい」

暖はまた柔らかな笑顔に戻った。

春の陽射しのような暖かみのある顔だった。

はるかは暫くその顔に釘付けになっていた。

「あの……返事は急ぎませんので、私の事を考えて頂けませんか?」

はるかはそう言うとコーヒーのカップを手に取った。

暖もゆっくりとコーヒーを啜った。

「はい、分かりました」

暖はカップを置くと、真っ直ぐにはるかを見

た。

「時間をくれてありがとう」

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