第9話

「暖」

劇団あすかでの演技練習が終わった後で暖と望奈はビルの前でタクシーを待っていた。

「何?」

もう午後の10時前であるが、通りは行き交う人々で賑やかだった。

「ありがとう。今日付き合ってくれて」

望奈は真剣な表情で言った。

「お礼ならもう聞いたよ」

暖は柔らかく微笑むと、望奈の頭に手を触れ

た。

タクシーが止まった。

「じゃあ、望奈。また明日」

「うん。明日ね」

望奈はタクシーに乗ろうとして、そっと暖の頰にキスした。

そしてそのまま後部座席に乗った。

暖が見送る中、タクシーは夜の光の中に消えて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る