第7話

「暖、ありがとう」

「どういたしまして」

暖は望奈を和田山大学近くの喫茶店、ミルクキャンバスに連れて来ていた。

「マスター、俺の友人の菅野望奈さん」

暖は望奈をマスターに紹介した。

マスターはびっくりして銀のトレイを床に落としてしまった。

「菅野望奈ちゃん⁈本当に?」

望奈は驚いた目でマスターを見ている。

「マスターは望奈の大ファンなんだ。後でサイン書いてあげて」

暖が笑いながら言った。

丁度夕方で他の客はいなかった。

前田双葉が笑いながら銀のトレイを拾った。

双葉はこの喫茶店のアルバイトで、暖と同じ和田山大学の学生である。

そして高校1年生の時の恋人だった。

暖と2人で学校から帰っていたのを、暖のファンに見られ、翌日双葉は襲撃されたのである。その後、ネットに誹謗、中傷を書き込まれ、精神的に追い詰められた双葉は自殺未遂を起こしてしまう。

結局は暖が双葉とは無関係の旨を記者会見で発表して、漸く落ち着いたのである。

今はこの喫茶店で話をするだけの関係だった。

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