第6話

ミッドフィルダーとして高原悠真はこの試合に参戦している。

望奈は悠真が走る姿を見て、もう涙が止まらない。

暖はそんな望奈を気にしながら、隣で応援していた。

洲央高校対南条学園の試合である。

現在1対1の同点である。

望奈の目はフィールドでボールを蹴る悠真に釘付けになっている。

「ねえねえ、あれ菅野望奈じゃない?

隣にいるのは吹石暖?やっぱあの2人付き合ってるの?」

2人が観客席のベンチで応援しているのを見ながら、若いグループの子が囁いている。

「そういえば望奈って洲央だったよね」

そんな周りの雑音も望奈の中には一切入ってなかった。

悠真が走っている!

またサッカーをしている!

良かった……

こんなにサッカーが大好きな悠真が、2ヶ月間もサッカーが出来なかった。

どんなに辛かっただろう……

「望奈、良かったな。またサッカー出来るようになって」

暖がまるで望奈の気持ちを忖度するかのように声を掛けた。

「うん…… 」

望奈の瞳から一粒の涙が落ちた。

これで諦められる。

きっと高原君の事、諦める事が出来る……

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