第4話

暖が私を好き……

劇団あすかでの演技稽古が始まっても、望奈の頭の中には忍の言葉が残っている。

「望奈!お前何、稽古中にボーっとしてるん

だ!」

尽かさず暖の声が飛んだ。

望奈は慌てて演技に入った。

「情感が籠もってない!もう一度!」


「お前、今日全然気持ち入ってなかったぞ。一体如何したんだ?」

劇団近くのハンバーガーショップで、暖はにんじんシェイクを飲んでいた。

「昨日、友達にね。暖が私の事好きだって言われたの」

その言葉を聞いて、暖は思わずにんじんシェイクを吹き出しそうになった。

「そんなわけないだろ!」

暖はナプキンで口元を拭った。

「だよねー。そんな事あるわけないよねー」

望奈は漸くホッとしたように、胸を撫で下ろした。

「あーびっくりした」

「俺達は……いわば親友だな」

「うん。親友。私、絶対暖は失いたくない。恋人なら別れてしまえば終わりだもん」

望奈は真剣な目で暖を見ている。

「だよな。それで今日お前、練習に気合いが入ってなかったの?」

「ごめんなさい」

望奈は素直に謝った。

「望奈、無理に忘れようとしなくていい。自然に思い出に変わる時を待てばいいんだよ」

暖の目が、望奈を温かく包み込むように見ている。

望奈は涙が滲んで来た。

「俺なら幾らでも付き合うからさ」

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