不倫

なぜ、まだ見たこともない景色を見ようとすると悪事に手を染めることになるのか。


などと、被害者ぶるつもりはない。

私はまた意図的に自分をそういった場に追いやっていた。


相手は私より一回りは優に越えている。

だから私のすることは彼女には何でも新鮮で可愛く映るのだ。

同年代であればこうはいかない。

私の未熟な人間性に嫌気が差し、すぐにつまらない現実に気づいた筈だ。

或いは、年嵩の彼女は年の功で上手く現実から目を背けているのかも。

そっちの方が現実的だ。


彼女は話し合えば何でも分かり合えるがモットーだったが、私はそうは思わない。

別れたいと言えば、話し合えば分かると言う。

そうやって相手を言いくるめようというのだ。

それなら私は、お前から一生逃れられないのか。


それだけ歳上と付き合えば何かこちらに旨味でもあるのかと勘繰られそうなものだが、実際には何もなく、それどころか疲弊し尽くした。


特に面白いこともなく、自分勝手で奇妙な、かといって深く観察したいとも思えないような幼稚な精神構造の人間に振り回された記憶しかない。


私には十分すぎる相手だとは思うが、あんな関係を続けることが彼女の本意なのだとしたらそれはそれで悲しい人生だと他人事ながら思う。


したがる人間に碌なのがいないから不倫はつまらない。


それが感想になった。

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