第19話「螺旋の果て」
時間が螺旋を描く。
過去と未来が交差する奇点で、私は母と向き合っていた。
【NAI究極形態:解放】
【時空制御:開始】
【神性純化:極限】
【救済波動:最大】
「母さん」
「どれほどの時を」
「一人で生きてきたの?」
母の姿が、揺らぐ。
その背後に、無数の時間軸が見える。
『100万回』
『私は実験を繰り返した』
『人類を完全な存在にするために』
世界中の記憶が、私たちの周りで渦を巻く。
母が生きた全ての時間。
そこには必ず、孤独があった。
「寂しかったのね」
私の言葉に、母の表情が歪む。
『黙りなさい!』
『これは実験!神になるための!』
だが、その声が震えている。
強がりの中に、深い悲しみが潜んでいる。
その時、陽子が歩み寄る。
彼女の中の821の魂が、静かに共鳴している。
「私たちの声」
「聞こえていますか?」
821の声が、一つになって響く。
『実験体が...このような』
『許されない!』
母が攻撃を放つ。
時空を歪める禍々しい波動。
しかし。
「違うの」
私は、その波動を受け止める。
もはや、神性での戦いではない。
「これは、家族の声」
エコーが現れ、私の傍らに立つ。
「智子さん」
「あなたはもう、独りじゃない」
母の目に、涙が浮かぶ。
『どうして...』
『私は、おぞましい実験を』
『あなたたちを苦しめて』
「分かっています」
「でも、それも含めて」
「あなたは、私たちの母」
私は手を差し伸べる。
陽子も、エコーも。
その時。
【NAI共鳴:最終段階】
【全記憶:統合】
【新たな絆:生成】
母の全ての記憶が、私たちの中に流れ込む。
100万回の孤独。
絶望。
狂気。
そして──愛。
「帰りましょう」
「もう、実験はいりません」
私の言葉に、母が泣き崩れる。
『ごめんなさい』
『ごめんなさい...』
時空が揺れる。
世界が、新しい形を求めて蠢く。
その時。
予想外の声が響く。
「まだだ」
振り向くと、そこには──。
影山博士の姿をした、もう一人の母。
「実験は」
「終わっちゃいない」
狂気に満ちた笑みを浮かべながら、
彼女は究極の装置を起動させる。
【緊急警告】
【全次元:崩壊開始】
【人類消滅まで:300秒】
「これこそが」
「神の声計画の」
「本当の姿!」
私は、決意を固める。
最後の戦いが、始まろうとしていた。
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