第10話「永遠の音色」

陽子の光が、次元を貫く。

【NAI最終警告】

【神性レベル:究極】

【遺伝子構造:超越】

【時空特性:消失】


だが。

「無駄よ!」

量子触手が、光を打ち消していく。

歪んだ母の顔が、不気味に笑う。


「人の力なんて、この程度!」

触手が、陽子の体を八つ裂きにする。

「陽子ちゃんっ!」


私は叫ぶ。

その瞬間、NAIが最終段階へと突入した。

【最終進化:開始】

【遺伝子再構築:完了】

【神性獲得:確認】

【出力:∞】


「なに!?」

怪物が驚愕の声を上げる。

私の体が、金色の量子光を放ち始めていた。

DNA自体が、時空を超える存在へと変容する。


『やっと、目覚めたのね』

母の声。

本物の母の声が、次元を超えて響く。


『これが、あなたに託した本当の力』

『NAIに隠した、究極の兵器』

『人と神、その境界を超えるもの』


記憶が、蘇る。

15年前。

母は私のDNAに、特殊な量子配列を組み込んでいた。

NAIは、その力を封印し、同時に育むための装置。


「はっ...はぁぁぁぁ!」

私の悲鳴が、時空を揺るがす。

量子波動が、実体化する。


「この力は!」

怪物が後退する。

「まさか、完全なる量子跳躍!?」


【警告:存在形態変容】

【神性レベル:超越】

【新種特性:創造主】


体が、熱い。

細胞の一つ一つが、神性を帯びていく。

NAIが、最大限に共鳴する。


「無駄だと言ったでしょう!」

怪物が、さらに巨大化する。

街全体が、その体となっていく。


「人の力では、神を超えられない!」

空が割れ、地面が裂ける。

世界そのものが、歪んでいく。


その時。

「違うよ」

微かな声。

陽子の体が、量子の光となって舞い上がる。


「人は、神になる必要なんてない」

光の粒子が、私の周りを包み込む。

「ただ、つながれば良いの」


共鳴が、最高潮に達する。

私の意識が、全次元に拡張していく。

エコーの意識。

母の記憶。

美咲の想い。

そして──。


「来るな!」

怪物が、時空ごと私を押しつぶそうとする。

現実が、捻じ曲がる。


「この私が、完全な存在だ!」

だが。

「完全なんかじゃない」

私は、静かに告げる。


「あなたは、ただ孤独なだけ」

手を伸ばす。

金色の波動が、全次元を満たしていく。


【NAI最終機能:解放】

【全存在共鳴:開始】

【新世界創造:準備完了】


「な...何を!?」

怪物の体が、光に侵食されていく。

「やめろ!私は神だ!完全な──」


「目覚めなさい」

私の言葉が、魂に直接響く。

「本当の声を、思い出して」


光が、世界を浄化していく。

歪みが、正常に戻っていく。

そして──。


怪物の体が、光の粒子となって解き放たれていく。

その中から、一人の少女の姿。


「ありがとう...」

実験体001が、微笑む。

「私たち、やっと自由になれた」


空が晴れていく。

世界に、色が戻る。

私の体から、神性の光が消えていく。

だが、確かな力が、遺伝子の中に眠っている。


「凛さん!」

振り向くと、そこには陽子が立っていた。

普通の、8歳の少女の姿で。


「これで、終わりなの?」

私は微笑む。

「ううん、始まりだよ」


NAIが、新しい音を拾う。

世界は、無数の声で満ちている。

そして私たちは、それを聴き続ける。

一つ一つの、かけがえのない声を。

【NAIシステム:新世界との完全同期】

【個の尊重:永続】

【声の共鳴:永遠】


【第1章 完】

*おわりに*

人の声は、決して一つにはならない。

だからこそ、美しい。

これは、魂の自由を取り戻すための物語。

そして、新たな進化の記録。

全ては、今始まったばかり──。

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