属性に関する調査

「いらっしゃいま…あ、坊ちゃま、お帰りですか?」

「反応がなんか変じゃない?」

「何がですか?」

「なんか無感情すぎるってこと。」

「チャロンの立場ではお客さんでもない方にこのくらい挨拶すれば十分礼儀正しい方ですよ。」


チャピが頬杖をつきながら舌打ちをした。

ここ数日、俺はチャピのところに通い詰めている。

もちろん理由もなく来ているわけではない。


「いつ届くって言ったっけ?」

「昨日もお伝えしましたが。」

「聞かれたことだけ答えればいいだろ、なんでこんなに余計な話が多いんだ?」

「はあ…」


チャピのやつが深いため息をついた。


「今日届きます。」

「そうだな。」


鼻歌が自然に出てしまう。

俺がここで待っているのは、魔法書数冊と技術書数冊だ。


「ところで魔法書や技術書はなんで買うんですか?」

「それがどうした?」

「坊ちゃま、今お嬢様と一緒に魔法学校に通ってるじゃないですか。」

「そうだな?」

「だったらそこで学べばいいんじゃないですか?」


言ってることはもっともだ。

魔法学校で学んでいるのに、わざわざ魔法書を買って学ぶのは時間の無駄かもしれない。

だが、学校で学ぶことには一つ問題がある。


「そこで俺が学びたい魔法は教えてもらえないんだよ。」


数日前、シャルロットが誘拐された時、追跡魔法がなくて村中を探し回った。

また同じことが起きるかもしれない。

いつ学べるかわからないものは、早めに学んでおかないと必要な時に使えないだろう。


『もちろん使えればの話だが…』


俺が使う奇妙な魔法も一応魔法だから、俺の体にマナがないわけではないだろう。


『もし他の魔法や技術まで変なものが出たら…』


そうなれば俺自身が魔法書を全て探して、自分に合った形で研究するしかない。

頼むからそんな事態にはならないでほしい。


チリン、チリン。


「こんにちはっ!」

「来ましたか!」


別のチャロンが現れる。

今度のやつは丸い帽子の上にゴーグルをかけている。


「頼まれたもの、全部持ってきましたよ!」

「お疲れさまです、チャラム!」

「チャピさんもご苦労さまです!」


そしてすぐに外へ駆け出していった。


「なんでそんなに急いで出ていったんだ?」

「チャラムはうちの店以外にも期限内に配達しないといけないんです。遅れるとクビになるんですよ。」

「へえ…」


商会というところが配達一回遅れただけでクビになるとは初耳だ。


『まあ、身近に商会で働いてる人がいないしな。』


「さてさて。」


チャピがカウンターの下から紙を持ち出し、箱に近づいて開けてみる。

ちゃんと物品が届いたかチェックしているらしく、羽ペンでリストを一つ一つ確認しながら笑顔を見せた。


「全部届きました。」

「じゃあ俺の魔法書も来たのか?」

「その通りです!」


チャピが俺に近づき、6冊の本を渡してくる。


「坊ちゃまが頼んだ魔法書と技術書です!」

「おお。」


思ったよりもずいぶん分厚い。


「ありがとう。」

「他の人には絶対に話さないでくださいよ!外で魔法書を売買するのは違法なんですから!」

「心配するなよ。」

「特に領主様には絶対に言わないでください!いや、たとえ話すにしても、私から魔法書を手に入れたとは絶対言わないでください!」

「わかったって。じゃあ、行ってくる!」

「お疲れさまです!」


&&&


静かな森に風が吹いてくる。

チャピが修理してくれたマホガニーの杖を手に握り、俺は目を閉じた。

風が吹いて顔を撫で、手に意識を集中する。


「ファイアボール!」


ウィーン—


呪文を唱えると、壊れる前と同じように杖が振動し始める。

そして、目の前に透明な陽炎のようなものが現れ、風を巻き起こしながら発射される。


ドカーン!


爆発音が響く。

しかし、煙は上がらない。

以前は爆発と同時に煙のようなものも出た気がするが、今回の魔法では煙は立ち上らない。

強力なエアガンのような感覚に、俺は壊れた木の方に歩いて行った。


ファイアボールを使ったにもかかわらず、熱気のようなものは全く感じられない。

木の前で俺は壊れた木を調べてみた。

陽炎のようなものが木から立ち上っている。

何かと思って手を近づけた。


「う…うわっ!」


驚いて手を引っ込め、そのまま地面でこすりつけた。

熱いわけではない。

熱いわけではないが、ネズミやハムスターのような齧歯類が指を噛みちぎっているような感覚がする。


「なんだよ、一体?」


聞いたことも見たこともない魔法だ。

何かを噛み砕く魔法なんてあるわけがない。


ガリガリ。


木は炎に包まれた火花のように次々と削られ、灰のようなものは残らず、まるで消滅するように音を立てながら壊れた木が消えていく。


『もう一度試してみよう…』


俺は目を閉じた。

杖に意識を集中し、再び呪文を唱える。


「ファイアボール。」


ウィーン—


陽炎が立ち上る。

そして素早く飛んでいき、目の前の木にぶつかる。


今回も同じだ。

煙は上がらず木が砕け散り、残った部分を削り始める。

そしてそれは地面に落ちた草にも移り、草まで削り始めた。


『一体何の魔法なんだ…』


俺はその場に座り込み、腕を組んで考えた。

だが、魔法学校入学後半年。

俺の魔法に関する知識には限界がある。


「ダメだな。」


これは俺がいくら考えてもわかるものではないらしい。

頼れる人でもいればいいんだが。

多分そんな人はいない…


「あ。」


一人いた。

シャルロット先輩の父親、ヒューズテラさんだ。


黄金の暁研究会の会長であるヒューズテラさんなら、この魔法が何かを知っているかもしれない。

だが、信用できる人なのかどうか。


「悩むな…」


ヒューズテラさんにこの魔法について話すのは一旦保留。

少し悩んだ末に、頭にもう一人浮かんだ。


「父さんだ!」


&&&


コンコン。


「誰だ?」

「父さん、エドワードです。」

「入れ。」


執務室の扉を開けた。

中では父さんが眼鏡をかけたまま本を読んでいる。


「どうした、エドワード。」

「ちょっとお聞きしたいことがありまして。」

「聞きたいこと?」


眼鏡を外した父さんは、ソファの前のテーブルに本と一緒にそれを置いた。


「そうか、言ってみろ。」

「父さん、昔魔法学校に通っていたっておっしゃってましたよね?」

「ああ、そうだったな。」


思い出に浸るように懐かしそうな表情を浮かべる。


「あの頃は本当に楽しかったなあ。よく喧嘩もしたものだ…それで、どうした?」

「あ、ええっと…」


俺は唾を飲み込み、真剣な表情で父さんを見つめた。


「もしかして父さん…魔法学校に通っていた時、本当に魔法を使えなかったんですか?」


今の俺の体にはエステル家の血が流れている。

エステル家の現当主である父さんなら、この魔法について何か知っているかもしれない。

いや、きっと知っているだろう。

当主には代々家の歴史を記憶し、それを子孫に伝える義務があるのだから。


「それはなぜ聞くんだ?」

「実は、私も魔法が使えなくなってしまったからです。」

「魔法が使えないだと?」


父は腕を組んで、憂いを帯びた表情で外を眺めると、大きくため息をついた。


「やはりそうか…願わくばお前が母さんに似て魔法を使えるようになってほしかったが…結局俺に似てしまったのか!」


拳を机に叩きつけながら嘆く。


「大丈夫ですよ。顔はお父さんに似てますから。」

「まあ確かに。お前の顔はこの父親に似て…」

「女の子たちには全然モテないですね。」

「…」


父は目を細めてこちらを見つめる。


「それをどうして知ってるんだ?」

「お母さんが言ってましたよ。お父さんが女の子に全くモテないから恋愛は楽だったって。」

「なぜ妻はそんな余計なことを…」


まあ、何にせよ。

重要なのはそこじゃない。


「それより、お父さん。」

「何だ?」

「お父さんはこれまでの人生で、一度も魔法を使ったことがないんですか?」

「うーん…使えなかったと言えるかな…」


曖昧な答えだ。


「使ったなら使った、使えなかったなら使えなかったでしょ。『使えなかったと言える』って何ですか?」

「お前の母さんにも言ったことがないが、一度だけ魔法を使ったことがある。」

「えっ…?」


父が魔法を使ったことがあるなんて信じられない。

それなら、なぜ男爵の地位に留まっているのだろう。

子爵くらいには上がれたはずだ。


「確か、3年生の実習のときだったな。そのとき友達と喧嘩になって、魔法を使ったことがある。その一度きりだ。」

「その魔法って何だったんですか?」

「うーん…エアカッターだったかな…」

「エアカッターですか?」

「そうだ、中級魔法のエアカッター。2年生の2学期くらいに習ったはずだ。」


ここからが重要だ。


「そのとき、何か特別なことはありませんでしたか?」

「特別なこと?」


父は目を細めてこちらを見つめる。


「例えば、魔法を使ったとき、別の魔法が出てしまったとか…?」


しばらく考え込んでから、父は首を横に振る。


「そんなことはなかったな。ちゃんとエアカッターの魔法が発動した。」

「そうですか…」


エアカッター。

名前からして透明感がある。

よりによって火炎魔法でも氷魔法でもなく、風の魔法だなんて。


父は私の隣に来て肩をぽんと叩いた。


「お前の祖父も祖母も魔法を使えなかった人たちだから、魔法が使えないのは当然だが、お前には魔法学校でも優秀な成績で知られた母さんがいる。努力さえすれば必ず魔法が使えるようになるだろう。」

「ありがとうございます、お父さん。」

「ほかに聞きたいことはないのか?」

「はい、大丈夫です。」

「そうか。勉強頑張るんだぞ。」


私は一礼して外へ出て、廊下を歩きながら考えた。


『結局わかったことといえば…』


父が過去に一度だけ魔法を使ったということ。

つまり父にもマナが全くないわけではないのだろう。

そもそもマナがなければ、一度も魔法が発動するはずがないのだから。


結局これは父方の家系の遺伝の可能性が高い。

エステル家。


それ以外なら母方のプレアロフ家の遺伝だろうが…その可能性は低い。

母方のプレアロフ家は魔法に造詣が深い家系なのだから。


『書斎に家系図があるだろうか…』


調べたところで損はないだろう。

書斎はどこだったかな。


&&&


「おい、お前。」


静かな地下室に食べ物を食べる音が響いている。


「ふぅ~、最高だ!もう一杯!」

「バカ騒ぎするな。」


カオスウェーブの奴らはみんなこんな感じなのか、それともこいつだけが特別おかしいのか。

牢獄を自分の家のように思い、休暇に遊びに来た人間のようにくつろぎながら飯を平らげている。

ただ厨房に残っていた食べ物を適当に持ってきただけなのに、一体普段何を食べているのか。

すごい勢いで二、三杯はあっという間に平らげてしまう。


「ははは!美味すぎてついな!」


本当にため息しか出ない。


ここ数日間こいつを吐かせて得られた情報はごくわずかだ。

アバンチェという奴がもともといた本拠地や部下たちの名前。


『それと目的…』


カオスウェーブの目的は、この世界の根幹を成すトリニティ教の壊滅、そしてカエルのための征服。


これだけだ。

学校にまだ潜んでいるカオスウェーブの仲間たちは誰なのか、本拠地の首領は誰なのか、直属の上司の名前は何なのか。

そんな質問にはすべて「下っ端だから知らない」と言い張るばかりだ。


どうにかして、ここに居座らせておくより処理するしかないだろう。


私は腰の短剣を抜いた。


「さて…」


鉄の扉を開けて中に入ると、アバンチェの表情が一瞬硬直し、不自然な笑みを浮かべる。


「ちょ、ちょっと待って、何するんだ?」

「何をって?もう情報は吐かせたし、予定通り処刑するだけだ。」

「処刑?待ってくれ!情報を話したら解放するんじゃなかったのか?!」

「俺がか?何のために?お前は知ってはいけないことを知りすぎた。放せばまたカオスウェーブに戻るだろうが、そんな危険を冒して放すわけないだろう?」

「分かった!」


分かった?何が分かったっていうんだ。

死を受け入れるという意味か。


「話せばいいんだろ、話せば。」

「お~何を話すっていうんだ?」


奴が片方の口角を上げて笑う。


「お前が知りたい…カオスウェーブのトップについてだ。」

「トップだって?」


かなり興味をそそる話だ。

どんな組織であれ、トップを処理すれば大きな組織は分裂するか、内部抗争で自滅するものだ。

だからこそ、私はキム・ジョンウンを殺すために訓練を受けた。

キム・ジョンウンさえ死ねば、北朝鮮の兵士たちは自ずと瓦解するか、実権を握ろうとする者同士で争い、自然に自滅していくだろうから。


「その前に。」


奴が条件を出す。


「必ず助けるって約束をしてほしい。」

「さっき言っただろ。お前が俺にくれる情報次第だって。」

「カオスウェーブのトップの情報なら、俺の命の価値は十分に支払われると思うけど?」

「はっ。」


思わず鼻で笑ってしまう。

こいつ、自分がどんな状況に置かれているのか分かっていないようだ。

だからこそ、こんな馬鹿げた交渉を持ちかけているのだろう。


「話せよ。そのトップってやつは誰なんだ?」


タクッ!


「…」


腰に差した短剣を取り出し、相手の顔を掠めて壁に突き刺す。


「最後の警告だ。今から無駄な戯言を一言でも口にすれば、次はお前の首だ。」


アバンチェは乾いた唾を飲み込み、こちらを見つめた後、深く息を吐く。


「頑固な野郎だな…わかった、教えてやるよ。我々カオスウェーブのトップ、それはジェガナ…」


ゴゴゴ…。


ヤツが話している途中、頭上から得体の知れない不気味な音が聞こえてくる。

その音を聞いたアバンチェが天井を見上げると、青ざめた顔で呟く。


「まさか…ルア…!」


ドカーン!


天井を突き破り、強烈な雷がアバンチェに直撃する。

アバンチェだったものが四散し、周囲に散らばる。

破れた屋敷の天井越しに空を見上げると、黒い雲が垂れ込めている。雷が落ちたとしても不思議ではない状況だが…。


『助けに来たんじゃなくて、殺しに来たのか。』


私が地下室に来る前までは、空は雲一つない晴天だった。

しかし、私が地下室に入りアバンチェと会話を交わした数分の間に突然黒雲が現れ、その黒雲から落ちた雷がアバンチェの頭に直撃する確率が一体どれほどあるだろうか。

意図的でないなら、その確率はほぼゼロに等しい。


そして最後にアバンチェが口にしようとしていた名前。


「まさかルア…」


名前を正確に聞き取ることはできなかったが、その「ルア何とか」という人物がアバンチェを攻撃した可能性が高い。


『はあ…』


正直なところ、今すぐにでも駆け出して、上層部の情報を話そうとしたアバンチェを殺したヤツを捕らえて、この地下室に連れ戻したい。

だが、空から雷を落とすほどの強力な魔法を使う人間が相手なら、私に勝ち目はない。

何より、どこで魔法を使ったのか、その位置すらわからない。


「こんなタイミングで、ぴったり攻撃してくるなんてな…」


どうして話そうとした瞬間を察知したのだろう。

まるで遠くからアバンチェが口を開くのを待ち構え、彼が話し始めた途端に攻撃を仕掛けたかのようだ。

この周囲に隠しカメラや監視カメラのようなものはないはずだが…。

いや、魔法で作ることは可能だろうか?


「な、何が起きたんだ?!」


屋敷内から父の絶叫が響いてくる。


申し訳ありません、お父さん。

今回の件は、私にもわかりません…。

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