第2回舞踏会祭

日差しがとても強く降り注いでいる。

期末試験もついに終わり、もうすぐ楽しい夏休みが待っている。


「でも…」


神様…いや、先生はどうして夏休みをただ平穏に過ごさせてくれないのか。


「どうしてまたやるの、なんで?!」


掲示板に貼ってあるポスターを見て、私は絶叫した。


「第2回ナーメルリス舞踏会祭り」


あの地獄のようだった舞踏会祭りをまたやるというポスターが、さっき貼られたばかりだった。


「先輩に聞いたんだけど、本当は1年に1回だけやるんだけど、今回は事件が起きてちゃんとできなかったから、もう一度やるんだって。」


ニールが気まずそうに笑いながら言った。


「事件が起きたなら、やらない方がいいじゃないか。また同じことが起きないとは確信できないんだから。違うか?」

「多分、外部に向けてのアピールじゃないかな?」

「どういうこと?」

「ポスターをちゃんと見なかったんだね…」


私はすぐにポスターをもう一度じっくりと読んだ。

以前と変わらないポスターを下まで読んでいき、最後の一文に目が止まった。


[今回の舞踏会では、皆さんのご両親を招待して一緒に進行する予定です。]


「ご…ご両親を呼ぶって…?」

「どうやら最近事件が多発しているからね。最近でも教会の事件があったし。」


教会の事件。

2週間ほど前のことだ。

教会で起こった殺人事件。

学校には、異端者だったライカル司祭が教会の人々を皆殺しにして逃げたと伝えられている。


「ライカル司祭がそんなことをするとは思わなかったけど…」


ミサの時間に見たライカル司祭の温厚な表情を思い出すと、そんなことをするなんて想像もつかなかっただろう。


「それはともかく、それでご両親を呼ぶってわけか?」

「事件が相次いでいるから、最近転校していった生徒も何人かいるらしいよ。」


転校していった生徒がいるというくらいだから、もう言葉が出ない。


「それなら、父さんも来るのか?」


特に連絡したわけじゃないから分からないけど、恐らく学校側が全員の親に通知を送ったんだろう。


「だめだ…」


来ないようにしないと。


パートナーが見つからなくて一人でいる姿を見られたら、父さんが激怒するに違いない。


「エドワード?」

「あああああっ!」


絶対に来ないでくれと父さんに手紙を出さなきゃ。

今すぐ出せば、学校からの手紙より先に届くだろう。


「ニール、頭が痛いからさ、今日は寮で休むって先生に伝えてくれないか。」

「ちょ…ちょっと待って、エドワード!」


&&&


翌朝、私は教室で頭を抱えていた。

私が頭をかきむしっているのには理由がある。

昨日冒険者ギルドに行ったときに聞いた話のせいだ。


「手紙を送るのに150シルバーもかかるってどういうことだ?!」


冒険者が1日に稼げるお金が50シルバーと言われているのに、4日分の値段で手紙を送るのに150シルバーを要求される。

それも値引きしてくれた価格だと言うのだ!

ラブリンス鍛冶屋で買った短剣が300コパーだったから、150シルバーは15000コパー。


「バカバカしい、手紙を送るのに50倍もの金を使うか?!」


今の手元には150シルバーどころか、50シルバーもない。

もちろん郵便局に頼めば1シルバーにも満たない価格で送れることは送れるけど、たぶん届く頃には両親が学校へ向かって半分は来ている頃だろう。


「それなら…」


父さんに怒られないためには、やるべきことはただ一つ。

パートナーを見つけることだけだ。


「やあ、エドワード。」

「ニール!」


ニールが来るなり、私は彼の両手を握った。

驚いたニールが大きな目をして私の顔を見つめる。


「な…何事だ?」

「女の子を紹介してくれ!」


昼休み。


「誰なんだろう…」


ニールに頼んだらすぐに紹介してくれた。

どんな女の子だろう。

不安でもあり、少し期待もしている。


「こんにちは?」


椅子に座って足を震わせながら緊張して待っていると、誰かが目の前に来て挨拶をしてきた。


「君がエドワードだよね?」


顔を上げて前を見た。

ショートカットの髪に、私より頭二つ分くらい小柄な、可愛らしい女の子だった。


「うん、そうだ。君がマガレットだよね?」

「そう、マガレット・ウィスパー。」


「くぅ…ありがとう、ニール!この恩は必ず返す!」


かなり気に入った顔だ。


「男爵家の人だったよね?」

「そう、エステル男爵家の一人息子だよ。」

「ふーん」

「君も男爵家なの?それとも…」

「何だと思う?」


私が尋ねると、彼女は私の答えを期待しているかのように、目をキラキラさせて私を見つめた。


「うーん…」


ここで間違って言って振られたら大変だ。


「他の貴族のようにデ、ルみたいなのが付いてないから…僕と同じ男爵家かな?」


この世界の名前の付け方は爵位によって異なる。

私のような男爵やそれ以下の爵位、例えば騎士などの場合は、後ろに称号が付かない。

称号が付くのは子爵以上からで、名前の後に称号が付き、その称号の後に家の姓が付く。

マガレットは称号がなく名前と姓だけなので、おそらく子爵ではないだろう。


「男爵…?」


私が不安そうに見つめると、マガレットがフンと顔をそむけた。


「ブー!違うもん!」

「男爵じゃないとすると何だ…?」


男爵の下にある爵位と言ったら、騎士くらいのはずだが、そうするとここに座っている彼女は騎士の娘なのか?

可能性がないわけではないが…


「気になる?」


マガレットが両手で頬杖をつき、微笑んだまま私を見つめながら尋ねた。


000


「気になるな.」

「ウィスピア商会って聞いたことある?」

「ウィスピア商会?」


ウィスピア商会。 エル・ハウンドのほとんどの雑貨店を支配している商会。 田舎中の田舎である我が家門のアルセルにも店を構えて商売している商会として知っている。 この状況で彼女がウィスピア商会について尋ねてきたということは…


「まさか…」

「その通り。」


彼女がにっこりと微笑む。


「私はウィスピア商会のマスター、ヒュー・ウィスパーの娘、マーガレット・ウィスパーよ。」


「商会の娘もこの学校に通えるのか。」


いつも貴族ばかり見ているせいか、商会の子が通っているとは思ってもいなかった。


「商会の子が貴族の学校に通っているのが変なの?」

「いや、いや、変というわけじゃない。ただ…いつも貴族ばかり見ているから、商会の娘を見ると新鮮なんだ。」

「そうなの?」


『それじゃ、この学校に他の商会の子も通っているのかな?』


マーガレットだけが特別に通っているわけじゃないだろう。 きっと他にもいるはずだ。


「大丈夫?」

「何が?」

「貴族の子じゃない私とペアになるの。」

「俺はそんなの気にしないよ。」

「本当に?」


疑わしげな表情をしている。


「本当だってば。」


マーガレットがくすっと笑う。


「まあ、ニールが私を紹介してくれたんだから、そういうの気にしない子だろうね。」

「君こそ大丈夫なの?」

「え?」

「学校には子爵や伯爵のような高位の生徒も多いじゃないか。男爵である俺とペアを組んで大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。子爵でも伯爵でも、皆性格が悪いだけだから。」


「な…なんだって?」


マーガレットが隣に座り、腕を組む。


「その子たちと違うあなたなら、ペアになってもいいかもね。」


腕に男子なら誰でも関心を引かれるものが触れる。


「あら、顔が赤くなってる。」


マーガレットが私の赤くなった顔を見て、おもしろそうに笑う。


「それじゃあ、いつから練習する?」

「君が都合のいい時間でいいよ。」

「都合のいい時間って…明日の放課後に会ってするのはどう?」

「俺は大丈夫だよ。」

「じゃあ、明日の放課後に決まり!」


マーガレットが立ち上がり、学校に向かって走っていく。


「それじゃあ、私は友達との約束があるから!明日の放課後に会おう!」

「おー」


俺は手を振った。


「そうだ、これこそが俺が望んでいた普通の生活だ。」


どれほど普通なのか。 前世では女と言っても、俺と同じように戦闘兵器として育てられる女ばかりだった。 ちょっとでも油断すると訓練中にボコボコにされて血だらけになる日も多かった。 あんな狂った女たちを見た後、こんな爽やかな女の子を見ると涙が出そうになる。


「よし、明日からだ!明日から必死に練習して父に見せるんだ!」


もちろん父が望むのは伯爵や侯爵家のペアだろうが、仕方ない。 上位の人間が誰も俺と組もうとしないんだから。 ペアが見つかっただけでもありがたい。


&&&


「え…もう一度…言ってくれる?」 「本当にごめんなさい、エドワード!」


目の前にいるマーガレットが俺に向かって頭を下げて謝っている。 今のこの状況に眩暈がしそうだ。 昨日までは一緒にやろうと言っていたマーガレットが、翌日になって学校に来るなり俺に会いに来てできないと言ってきた。


「理由はなんだ?」

「それが…理由も言えないの…!本当にごめんなさい!」

「ちょ、ちょっと待って、マーガレット!」


マーガレットに手を伸ばしてみるが、彼女はすでに教室の外へ走り去ってしまった。


「ははは!」


後ろで誰かが大声で笑う。 そいつはいつも俺を男爵だと馬鹿にしてくる、トなんとかという奴。


「これはこれは。商人と男爵がペアになるかと思ったら、男爵が商人にまで振られたってか。」


その顔に一発でもパンチを入れてやりたい。 だが、パンチを入れた日が俺の退学と家門の滅亡の日になるため、殴ることができない。


「お前、もう退学して戻ったらどうだ?誰もお前とやりたがっていないみたいだし。」

「黙れ。」

「おっと、怖いね〜」


そいつが怯えたふりをしてゲラゲラ笑う。


本当に気が滅入る。 せめて理由くらい教えてくれたら良かったのに、なぜ理由も告げずに去っていくんだ。


「もしかして他のペアができたのか?」


どこの奴が俺の女を奪っていくんだ! 会ってみろ、絶対に髪を引きちぎってやるから…


「エドワード。」


後ろから女子の声が聞こえる。 振り返ると、教室の階段からアリアが降りてくるところだった。


「お前もからかうつもりか?」

「いや、そうじゃなくて…」


なぜかアリアが髪をいじりながらもじもじしている。


「まだ私もペアがいないから、私でよければ…?」

「は?」

「いや、そうじゃなくて!あんたが可哀想だからよ、可哀想で!私より下の貴族が目の前で商人の娘にまで振られたから、可哀想で…」


本当に腹の底から苛立ちが湧いてくる。


「お前、あっち行け。」

「してあげるって言ってるのに?」

「いらない!俺はやらない。もう舞踏会なんて全部参加しないから!」


そう言って怒りに燃えたまま飛び出そうとしたとき、教室の扉から誰かが入ってきた。


「エドワード。」


今回も女子の声。 どうせ全員受け入れないくせに、なんでこうも俺の名前を呼ぶのか。


誰かと思って前を見ると、思わず後ろを向いた。


「あの人、なんで来たんだ?」


俺の名前を呼んだのは、生徒会長のシャルロットだった。


「シャ…シャルロット生徒会長!」


トなんとかが驚いて彼女の方へ歩み寄り、頭を下げる。


「シャルロット生徒会長がこちらにはどのようなご用で…」

「エドワードに用があって。」

「この男爵の奴にですか?」


トなんとかが顔をしかめて俺を見る。


「ゴホン…」


そして咳払いをし、真剣な顔でシャルロットを見つめる。


「その…生徒会長、私も生徒会長に伝えたいことがあります。」

「何?」


顔を真っ赤にし、目をぎゅっと閉じて叫ぶ。


「シャルロット生徒会長、私とペアになってください!」


教室中に響くトなんとかの声。 教室全体の生徒たちの表情が驚きに包まれる。


ペアの提案を受けたシャルロット生徒会長は、トなんとかをじっと見つめ、首を横に振る。


「ごめん。私は別にしたい人がいるから。」

「え…?別にしたい人ですか?」


シャルロットが頷き、俺を見つめる。


「エドワード。私と舞踏会の…」


ガシャーン!


言葉が終わる前に、俺は窓の外へと飛び出していた。

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