第32話:女皇からの手紙
「女皇陛下から封書が届きました」
セバスの持っている封書には皇帝専用の封蝋印が押されており、この印は女皇以外が使用した場合厳重に処罰されるため、これはほぼ本物だと言っていいだろう。
「女皇か……」「じょ、女皇陛下から⁉」
リュウは嫌な予感を覚え、レナは単純にそのビッグネームに驚いた。
「首都に行った際、偶然女皇陛下と知り合ったって言ってましたもんね、お兄様」
「ああ。その時に目を付けられたんだろうな、悪い意味で」
「時期的に勇者関連な気がします」
「俺もそう思う」
リュウが机上で封書を開き、三人で覗き込む。
『アストリア帝国皇帝イリス・アストリアだ。面倒な挨拶は省かせてもらう。北のガルシア王国が勇者を召喚した事はお前も知っているな?それに対抗し西と東も勇者の召喚に踏み切った。だが我が国は現在勇者を召喚する
「と、友⁉お兄様って陛下の御友人だったんですか⁉すごい‼」
「さすがはリュウ様です……ここまでご立派になられて、このセバス感激でございます……レストラン云々の部分はイマイチわかりませんが……」
「お、おぉ」
(女皇め……レストランの件を掘り返しやがって……。しかもなぜか文章中で『お前』、『其方』、そして『友』の順にグレードアップしてるし。読み手によっては心を掴まれているところなのだろう。だが残念ながら俺はそうはいかないぞ。それはさておき、まずはグレイス辺境伯軍に関してだな)
今代のグレイス辺境伯は中央とあまり馴染めていないことで有名であり、万が一戦争が勃発した際に、兵を出し渋られても困るので、予めリュウを取り入らせたいのだろう。以前、帝国は軍事力が優れていることから、大抵は帝国魔術師と皇族軍でどうにかなると説明したが、敵が勇者擁する列強の場合、話はまた別なのである。
「要求されていることは大体理解した。セバス、至急母さんを呼んでくれ」
「了解致しました」
「レナ。すまんが魔法の練習は明日以降に持ち越しで頼む」
「わかりました!女皇陛下の依頼頑張って下さいね!」
「おう、任せておけ。幸か不幸か、
(ともあれ、やはり女皇はすごいな。誰よりもこの国を長い目で見ている。そりゃ賢帝と恐れられるわけだ。戦争はアードレンの立場から見ても美味しくないし、今回ばかりは頑張らせてもらうか)
女皇帝は手紙の中で、『我が国は現在勇者を召喚する術がない』と綴っていた。これに関して、おそらく帝国は少なくとも二、三百年前には召喚技術を失っていたのだろう。また、今回のように他の列強が勇者を召喚した場合、帝国が劣勢になるのは自明の理。女皇が帝国魔術師という精鋭部隊を独自に作り上げたのも、この時に備えてのことだったのだろう。
(女皇はデカい何かを成し遂げようとしているっぽいし、たとえ召喚技術を失っていなくとも、帝国魔術師は作ってたと思うけどな)
その後、リュウは母アイリスと合流し、女皇からの手紙を見せた。
「貴方、いつの間に陛下と友達になったのよ。それにレストランの勘定?……なによ、これ」
「まぁそれは置いといてだな。今は早急にグレイス辺境伯をおとす方法を考えなくてはならない。母さんにも手伝ってほしい」
「はいはい、しょうがないわね~」
母は息子に頼られたのがよっぽど嬉しかったのか、嬉しそうに席に着いた。
幼い頃からリュウは誰にも頼らず全部一人で解決する癖があったため、自発的に声を掛けられるのはかなり貴重なのである。
「まずグレイス辺境伯軍を動かすこと自体はそこまで難しくない。パッと思い浮かぶだけでも案はいくつかある」
「さすが私の息子」
「しかし、ただ辺境伯に取り入るだけなのは面白くないというか、勿体ない気がしてな」
「どうせならアードレン領の発展に繋げたいってことね」
「要するにそういうことだ」
「母さんから見て、元マンテスター領は今どんな感じだ?」
「大体三分の二の領民がアードレンを受け入れていて、それ以外は残念ながら、反抗とは言わないまでも、未だ心の中に怨恨を抱えている感じかしら」
「やはり難しいな、戦後処理は」
「ええ、まったくよ」
「どうすればいいと思う?そういうのは母さんの方が得意だから、もっと意見を聞かせてもらいたい」
「アードレンに併合するというよりは、アードレンとマンテスターで力を合わせて新領地を築き上げていく、みたいな指針を掲げた方が上手く行くかもね。これはかなりの理想論だけど」
「新領地か……」
リュウはしばし黙り、考え込んだ。
(グレイスの思い出は正直パンが美味かったくらいしかないんだよな。パンと言えば小麦畑が綺麗だったな……)
そして。
「あ」
「何かいい案でも思いついた?」
「とびきり良いのを閃いた。今のアードレンならきっと実現できるはず……」
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