ストレンジシティ

Adeami

「化け物たちの生存競争」

『——スキーマ・レィディオゥ!!』


 無骨でかわいげのない電波放送機から流れる快活な声は、憂鬱な朝を吹き飛ばす着火剤となるだろう。事実、温かい室内でコーヒーを片手に新聞紙を広げている人種に対しては、良い目覚ましとして機能するはずだ。


 ただ、世の中の大半の人間がそうというわけではない。朝とはつまり夜の延長戦、明けない夜を体感している人種からしてみれば、決まった時間に流れるラジオなど、規則正しい生活を送ることができない人間に対しての当てつけのようなものだ。


 ——そういったものには、なるつもりなかったんだけどな。


 眼前に無数に鎮座する高層ビル群を眺めながら、ジョニー・ランドゥーは残り一本になったタバコに火を着けた。薄汚れた金髪を、それなりの容姿に見えるようオールバックでまとめ、社会人としては最低レベルのビジネスマナーかぶれのスーツに身を通している。


 とある高層ビルの一角、哀愁に包まれた姿は誰の目にも映ることなく、唯一彼の隣に座っているのは、快活な声を流し続けるラジオだけだった。


『よおブラザー、今朝は最高にロックなニュースを持ってきたぜ。ゲームのようなハリウッドのような、まさに悪魔的ニュースさ』


 どうでもよくなった俗世のことを思い深める。思えば単調な人生だった。殺して、殺されそうになって、また殺して。そういった毎日の連続。いつからこうなっただろうと聞かれれば、多分生まれた時から。幼い頃から自分は、パンにジャムを付ける生活ではなく、シャツに血を付ける生活だった、ただそれだけ。


 鉄格子をゆっくりと上り、一歩前へ出た。空気が波打っている。冬のニューヨークは朝も冷える。耳たぶの感覚がだんだんなくなってゆく。

 次第にラジオの声が遠くなってゆく。だんだんだんだん、すべてが遠くなってゆく。周りの情景、気温、音、視界、他人、それでもって、自分。


 あと一歩前へ出れば、すべてが終わる。これまで煩わしかった人生の、そのすべてが。

 何も感じない、感情も沸かない、そんな世界へと——


「——なあ兄弟、一つアドバイスだ。スリルを味わいたいならバンジーじゃなくてギャンブルがいいぞ。金は命より大事ってのはよく言ったもんで、命なんていうちっぽけなモンをかけるよかよっぽどエクスタシーさ」


 瞬間、ジョニーはその存在に気が付かなかった。音もなく、気配もない。これはただ単に今わの際だからというわけではなく、本当に、それは何の気配もなく虚無から顕れた。


 驚愕で踏み外しそうになる足をなんとか踏みとどめる。心臓が強く脈打っている。体温が戻り始める。自分は、生きている。


 狼狽しながら右を見た。結果後悔することになったが、今のジョニーにはそんな細かい感情の足し引きは気にしない。ただ一度その存在を仰いでしまったら、感情などというちっぽけな固定概念は消え去ってしまう。


 体長は、約二メートル程あるだろうか。一見中年男性に見える顔立ちは、しかして年齢などという「人間の尺度」で測れるものではないと感じる。肌の節々に見られる皺は、彼がそう見せているから、その気になれば、少年にでも、モナリザのような美女にも、何にだってなれる。そう感じさせるほどの神秘が、確かにそこには在った。


 そして何より目を引いたのは、彼の肩甲骨辺りから大きく伸びるその「翼」だ。

 くろくておおきい、そんな抽象的な感想しか出てこないのは、今までその存在を見たことがないから。他のものにも例えようがないので、子供並みの感想になるのも仕方がない。


『そう、悪魔的ニュース!もしかしたらいるかもしれないってよ、このニューヨークにな。何がって?そりゃアレだろ、人間の血を吸い絶望を啜る、悪魔って奴がな!!ガハハ!』


 空気の読めない快活な声が、音のない空間にこだました。


   ※ ※ ※


『ナイトポップ・ファミリー』。主に麻薬の製造、販売を生業とするアメリカン・ギャング。構成員はおよそ三百人。それなりの大組織が故に、そこにこびりついた血の匂いは少し消臭スプレーをかけただけでは落ちるハズもなく。


 足を洗おうとしたやつはことごとく脳天をぶち撒ける羽目になる。その底なし沼を脱出する方法など、他人に脳天をぶち撒けられるか、自分で脳天をぶち撒けるか、そんな違いしかない。


「ほう、つまりにいちゃんは後者を選んだってワケだ」

「ああ。でもそれすらも、アンタに止められたワケだけど」


 手入れのされていない黒の長髪をたなびかせ、『彼』は鉄格子にしゃがんでいる。

 驚異的な光景だが、ジョニーはそこまで驚かなかった。たった今今生に別れを告げようとしていたからなのか、どれだけ現実離れした光景でも、感情の波打ちがない。


 そしてそれを、彼も理解していた。教会の牧師のような調子で、ジョニーの悩みの種を聞いていた。


「昨日、人を殺したんだ。それも、子どもを」

「ガキか。取引現場でも見られたか?」

「いいや違う。アイスをボスの側近にぶち撒けたんだ。それで、オレに殺せって」


 元々見知った少年だった。近所の家でいつも大型犬と戯れているものだから、そこを通る度に笑みがこぼれ、愛情に似た何かも感じていた。


 それを、手渡された銃で、いとも簡単に。


「もう嫌なんだ。殺すのも、殺されるのも。

 あの顔はオレを見てた。あいつは自分を殺した奴の顔をはっきり覚えて逝ったんだ。オレもその顔を目に焼き付けた。いつ天罰が下ったっておかしくない。そうなる前に、オレは」

「なるほどなあ。つまりにいちゃんは自分がイヤになって死ぬんじゃなく、天罰が下るのがイヤだから死ぬのか」


 え、と声が出た。コイツは今、なんて?


「いや、ちがくて、俺は…………」


 彼は「うーん」と喉を唸らせた。


「自分が殺したってことより、その少年が自分をどう思うかってのが怖いんだろ?わかるぜ」


 違う、と、そうは言えなかった。この男は、自分自身ですら気がつかなかった感情の奥底にあるそれを理解している。屈辱ではあるが、つまりはそういうこと。


 自分は、死にたいのではなく、だれかに殺される恐怖を味わいたくなくて死のうとしていたのか。


 自覚した瞬間顔の奥がかあ、と熱くなるのを感じた。


 自分はいったい、どこまで。


 今度こそだ、今度こそ飛び降りてしまおう。そう思ってもう一度足を一歩踏み出すが、それすらも彼によって止められた。


「まあ待てよにいちゃん。兄ちゃんが死ぬ必要なんてどこにもねえだろ。」

「いやだ、もうイヤなんだよ!殺してくれよ早く、誰でもいいから!」

「……へえ」


 空気が変わった。先ほどのような朗らかな陽気はどこへやら、全身を突き刺すような殺気が放たれる。

 彼はジョニーの襟首を片手で掴み上げ、鉄格子に叩きつけた。その衝撃に思わず咳き込むが、それすらも許さないとでも言いたげに彼の眼光が光る。


「『誰でもいい』か。じゃあ俺でもいいよな?」

「あ……え……?」

「にいちゃん、名前は?」

「……ジョニー・ランドゥー」


「そうか。いい名だな」


 彼はジョニーの襟首から手を放し、今度はその両頬を鷲掴みにするとそのまま顔を引き寄せて言った。


「俺はシャーディス、みての通り悪魔だ。今からにいちゃんが所属するファミリーの連中を全員皆殺しにするけど、いいよな?」


 彼はそう言うと、返答を待たずにジョニーを抱きかかえ空へと羽ばたいた。


 シャーディスはジョニーを抱きかかえたまま、風を切るようにその翼を上下させる。羽ばたく度に、冷たい冬の風が容赦なく二人を襲う。しかし彼はそんな寒さになど意を介さず、ただ一直線に空を駆ける。


 その速度はおよそ時速三百キロほどだろうか。この速度なら、ニューヨークからワシントンD.C.まで約一時間弱といったところだ。

 だがそれは、あくまで人間にとっての話である。


 悪魔にはそんなもの関係ないし、そもそも人間の尺度で測ることすらもおこがましいのかもしれない。


「なあシャーディス、どこに向かってるんだ?」

「あ?さっき言ったように、今から行くのはニューヨークに巣食うギャングどもの本拠地さ」

「本拠地って、そんなとこに行って何するつもりだ?」


 ジョニーの問いに、シャーディスはさも当然と言った様子で答えた。


「決まってんだろ。皆殺しだ」

「…………」


 ジョニーは言葉を詰まらせた。どう考えてもおかしい。なんでったってこんな状況になっている。何故だかわからないが弁明するような気持で、ジョニーは彼に訴えた。


「分からない。オレを殺すならまだしも、ナイトポップの連中を皆殺し?どうしてだ、何故そんなことをする必要がある」

「にいちゃんが難しいことを考えすぎだからさ」

「難しいこと…………?」


 考えを巡らせるが分からない。彼の言っている一言一句が、ジョニーには理解することができない。


 ジョニーがせいぜいできることは、上辺だけの会話を続けることくらいだった。


「皆殺しにするっていうけど、アンタはナイトポップの本拠地を知ってるのか?」

「ああ。その名前はここらへんじゃ結構有名だし、その中の幹部の一人と知り合いなんだ」


 何の気なしにそう言う彼を、ジョニーはまたもや理解できないと感じた。


「いや待て、知り合いがいるのか?ナイトポップに、オレ以外に?あんた…………っていや、そうじゃなくて、知り合いがいるのに皆殺しにするつもりか?」

「ああ。何か問題あるのか?」

「何か問題あるかって……」


 当たり前のように言ってのける彼の姿は、ジョニーにとっては理解できないを通り越して恐怖だった。もはや恐れすらも感じさせる。


「なあにいちゃん、もしかして怖いのか?」

「え……?」


 まるでこちらの心を見透かすかのように、彼は言った。


「まあそう怖がるなって。別にオレはにいちゃんの敵じゃないし、その知り合いにうらみがあるとかそういうのでもねえ」

「じゃあなんで……」

「そうしたいと思ったからさ。俺は思いついたら即行動派でね。にいちゃん、あんたの悩みの種ってのはつまり、あんたにへばりついて離れないしがらみが邪魔ってことなんだろ?」


 じゃあ、と。悪魔は自信満々に言った。


「んなもんぶっ壊しちまえばいいんだよ。組織、人間関係、恐怖、もな」

「ぶっ壊す、って…………」

「そう。ぶっ壊して、それから新しいのを作ればいい」


 ジョニーは、彼の言っていることが理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。


 組織を壊す?人間関係をぶっ壊す?そんな簡単に言うけれど、それがどれだけ難しいかなんて、少し考えればわかることだ。


「なあにいちゃん、アンタは今までその『ぶっ壊す』ってことをしてこなかったのか?」

「え……」

「俺はな、そういう奴らを見るのが大っ嫌いなんだよ。組織、人間関係、恐怖。それらを『ぶっ壊す』ことをしてこなかった奴らってのはな、だいたい自分の保身しか考えてねえのさ。今まで築き上げてきたものを崩してしまうかもしれないっていう恐怖に怯えてな。だから何もしねえんだ」

「でも……オレは……」

「なあにいちゃん、アンタは何をした?今何しようとしてる?」

「……」


 ジョニーは何も言い返すことができない。

 確かに自分は今まで、何かを行動に移したことなどないのかもしれない。「なあ、アンタは今何したいと思った?」


 諭すような口調に、ジョニーの感情も揺れ動く。


 ジョニーは今の今まで『絶望』を味わってきた。その感情は日に日に増してゆき、やがてそれは『死』という形でしか解消できないものになっていた。


 だが今はどうだ? 彼は言った。『ぶっ壊す』ということをしてこなかった奴らは保身に走ると。


 自分はどうだ?今まで『絶望』を味わうことがなかった自分にも、そんな感情が芽生える時が来るのだろうか。そしてそれが爆発したとき、自分が何をするのかが想像できない。


 彼は言った、ジョニーは何をしたいと思ったか?と。ならばきっと、今ジョニーはそれを考えているのだろう。

 恐怖に怯えているのではない。ただ自分の感情に戸惑っているのだ。


「オレは……オレ……」

「なあ、にいちゃん」


 悪魔は笑った。妙に人間らしい、顔つきで。


「アンタは、何がしたい?」

「……オレは」


 ジョニーは、ゆっくりと口を開いた。


「オレは……もう、死にたいなんて思わない」

「ああ」


 シャーディスの返事は短いものだった。だがその一言には様々な意味が含まれているように感じた。

 そして彼は言った。


「にいちゃん。アンタはもう、大丈夫だな」


 ジョニーはただ黙ってうなずいた。それは肯定の意ではなく、ただの相槌だっかかもしれない。ジョニーは上辺だけの相槌「よりも、今この悪魔が言った言葉の意味を咀嚼していた。


 ——そして気付けば、そこは『ナイトポップ・ファミリー』の本拠地の上空、廃れた工場を見下ろせる場所だった。シャーディスは呆けた顔のジョニーと共に地上に降り立つ。


 シャーディスは告げる。


「にいちゃん、今がその時だ。『ぶっ壊そう』ぜ」


 そうだな、その通りだ、と。ジョニーは廃工場に向け一歩足を踏み出す。

 シャーディスもそれに連なり廃工場へ歩き出す。そして。


「——ここまで招待してくれてありがとう、ジョニー・ランドゥー君」


 突如として隣の悪魔の体が爆発四散するのを、ジョニーは見届けることができなかった。


「…………ぁ、え?」


 驚愕に目を泳がせることもできない。ジョニーはその状況を正しく理解することができない。ただ自分の隣には内から爆散して粉々になったシャーディスだった『なにか』と、その数歩先に立つシルクハットの男を見比べることしかできなかった。


「あ、アンタ…………」


 ありがとう、とシルクハットの男は言った。続く言葉を理解するよりも先に、ジョニーはその状況から逃れる術を頭の中で模索していた。


「朝イチから君の姿を見ていたよ。悪魔ってのは人の弱みに付け込んで巣食おうとする。特に目の前で自殺しようだなんて考えてる人間なんてみたら、彼の目からはさぞ恰好の餌に映ったろうね」


 だからこっそりつけていたんだよ、と。ジョニーの顔色をうかがうこともなく、その男は気持ちよさそうに話し続ける。


「シャーロック・プレマートン。僕の名前さ。ああいや、今の君には僕の名前がどうとかよりも、僕が何者か、って方が気がかりだよね」


 シャーロックと名乗る男は持っていた杖を上に掲げた。サーカスの主役が口上をあげるような調子で、告げる。


「『ストレンジハウンズ』、または『魍魎狩り』、街に巣食う悪魔とか化け物を狩る、専門家さ」


 シャーロックは杖を肩に担いだ。その姿は、ジョニーにとって悪魔のようにも見えただろう。実際、先ほどのような悪夢めいた展開に巻き込まれていたなら、そうなるのは必然的な事だ。しかし今起こっていることはそうではない。


「さて」


 シャーロックが一歩前に出た。それと同時にジョニーの足が一歩後ろに下がる。

「君はもう死にたいなんて思わない、と言ったね?」


 こいつ、いったいどこからあの会話を見ていたんだ…………?


「心を入れ替えたんだね、いいことだ。でも結局君は、殺した少年のことを忘れることはできない」

「…………」


 こいつは何を言っているんだ。いや理解できる、理解できてしまう。この状況がマズイ。こいつは今自分の顔色を窺っている。『理解できる』と感じた表情を、こいつは見紛うことなく把握してしまう…………!!


「君が『吸血鬼だから』、だろう?毎日仕事場にいくついでに大型犬と戯れる少年を見て、愛情のようなものをそそいでいた。それはまるで、大切に育てた牛が肥えるのを待つような、野菜がみずみずしく光るのを待つような、チーズが熟成されるのを心待ちにするような、ね」


 ジョニーは、努めて冷静に、それでいて取り乱しているかのように取り繕った。右手には血液が集まってきている。


「ボスに命令されて殺してしまっては、吸えないもんね?血が」


 視界を徐々に広くする。呼吸がだんだんと短く、洗練されていく。


「普段どうやって身を隠しているんだい?この悪魔のように、君には羽がない、毎日のように人間の血を吸っていては、足もついちゃうと思わないかい?」


 徐々に体温が人間のそれではなくなっていく。具体的に言えば、低く、それでいて高く。


「そんな君が今日、あの場所で、悪魔と出会った。聞いてみたかったんだ。どんな感情だったんだい?」


 血流が正常に戻る。『準備』が整った。


「そしてこの場所に来た。思い付きで申し訳ないんだが、きっとアレだろう。君はなんとか自分のもとに悪魔を呼び寄せて、その力を利用し、いい加減お荷物だったファミリーを自分の人生から除外しようとした、違うかい?」


 ジョニーは『いつの間にか右手に握られていた自身の身長ほどの血で作られた大鎌』を肩に担ぎながら、嘆息をついた。


「まあ、あれか。今回もオレはついてなかった、ってことか」


 午前九時、日差しが天を目指し駆け上がるころ。

 空気が冷え、街が起こり始めるころ。


「陽光をものともしない、か」

「まさか悪魔を一撃で殺るとはな」


 二つの神秘が、ぶつかった。


  ※   ※   ※


『スキーマ・レディオゥ!!』


 無骨でかわいげのない電波放送機から流れる快活な声は、憂鬱な朝を吹き飛ばす着火剤となるだろう。事実、温かい室内でコーヒーを片手に新聞紙を広げている人種に対しては、良い目覚ましとして機能するはずだ。


 ただ、世の中の大半の人間がそうというわけではない。朝とはつまり夜の延長戦、明けない夜を体感している人種からしてみれば、決まった時間に流れるラジオなど、規則正しい生活を送ることができない人間に対しての当てつけのようなものだ。


「今日の一面はなにかな」


 ジョニーは暖かいコーヒーを片手に新聞紙を広げる。一面には、『廃工場で爆発事故』とでかでかと書かれていた。


 結論から言えば、決着はつかなかった。ただジョニーの大鎌がシャーロック・プレマートンの肩から下を吹き飛ばし、シルクハットの男の持つ杖がジョニーの肺を貫いた、というだけ。


「オレは吸血鬼だから無事だったけど、あっちはどうかな」


 喧騒が起こる前の都会を眺め、暖かい室内のなかジョニーはコーヒーをすする。

 新聞紙の片隅にうつる『史上最年少フィギアスケーター』の記事を眺めながら舌なめずりをする。


 ——うまそうだな。


 ニューヨークの朝は早い。矢継ぎ早にスクランブル交差点を我が物顔で進む彼らは、この街が今どういう状況なのかを理解しているだろうか。


 どこか路地裏では人の形をした狼が太陽に向けうなっている。

 どこかマンホールの下では数百のゴーストが夜はまだかと踊っている。

 どこか屋上では自殺する人間を眺める死神が嗤っている。


 ジョニーは新聞紙を机に置くと、ボロボロのスーツを羽織って街へと踏み出した。


「憂鬱な今日の始まりだ」

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ストレンジシティ Adeami @gudarock

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