第33話 いいこと思いついた
今日は、忍先輩達バスケ部のインターハイ
今年は開催地が地元らしく
私達も応援に行くことにした
忍先輩には、もし良ければ参加出来るように
私も控えとしてエントリーさせたとか言ってたけど
先輩達の最後の試合だし、高校に入ってからまともに練習してないから
この最後の試合に出ていいとは思ってない
……紅葉さんは張り切ってたけどね
「おー愛華ぁ〜こっちこっち」
二先生が手招きして着いた武道館
かなり広くて、もう中では色んな選手が
ウォーミングアップしてるのが見える
その中に麗奈先輩と忍先輩も見えた
頑張ってほしいな……
「お前は2階の観客席な。もしかしたら試合出るかもしんねぇから準備運動だけはしとけよ」
「いや、あの、部員じゃない私がこんな舞台で出て大丈夫なんですかね」
「ん〜忍が良いって言ってるんだし良いんじゃね?」
そういうものでは決してないけど……
まあ、レギュラーの皆さんが上手くて
私の出る幕はないかな
二先生はそのまま忍先輩達の引率があるから別れて
紅葉さん達がいるであろう観客席に向かった
その時、ふと、通り過ぎた女の子を思わず目で追う
……あれ……あの子……
「ん?なに?僕になんか用?」
「あ、いえ、なにも……」
「…あれ?あれれれ?もしかして……神楽愛華じゃん!久しぶり〜!」
やっぱり、見たことある顔の人だ
かなり背丈が伸びてて気づけなかった
……でも…名前が思い出せない
「うわ、その顔まさか……僕のこと覚えてないの?相変わらず鈍臭いなぁ〜榎木(えのき) 燈空(あかり)だよ」
榎木さん……
『あんたがいると面白くないんだけど』
あ…………
「思い出した?あんなことあったのに忘れるとか、凄い根性してんね」
「……ごめん、出来ることなら思い出したくなかった」
「ふーん、そりゃそっか?逃げ出したもんね!クヒヒッ」
この独特な笑い方、間違いない
鮮明に、思い出してしまう
忘れたかった記憶が……
「ここにいるってことは、懲りてないの?」
「…私は出ない。仲のいい先輩の観戦」
「つまんな。せっかくまたボコせると思ったのにさ」
榎木さんは、中学時代
唯一私と同格レベルの実力をしていた子だ
だけどわざと私を目立つようにプレイさせて
気づなかった私は、まんまと罠にかかって
皆に嫌われてしまった
多分、自分より上手い私が気に食わなかったのだろう
「今はもう、あなたの方がきっと上手いよ」
「当たり前でしょ。今年も優勝してやるんだから、あんたの友達(笑)には申し訳ないね」
「……先輩達を甘く見ない方がいい」
「なに?まだ反抗する意思あるんだ?」
少しの沈黙の間、榎木さんが何か喋ろうとした時
「愛華ちゃーん!」と紅葉さんが手を振ってきた
「中々こないから遅刻したのかと思ったよ!あれ?その人は?」
「中学時代の同級生、かな」
「えー!初めまして〜!『親友の』紅葉だよ!よろしくね!」
「親友?クヒヒッ、なにそれ今時だっさい。神楽愛華にはやめといた方がいいんじゃない?どうせまた逃げるよ」
「ださい?どこが?あたし皆が友達だから、辞めるとかないよ!」
「…なにこいつ、キモ。もういい」
あからさまに不貞腐れた榎木さんは
そのままどこかへ行ってしまう
「なんか面白い子だったね?」
あれを面白い子、って言えるのは
流石紅葉さんだな
「……ありがとう紅葉さん」
「え?なんかお礼言われるようなことしたっけ?」
「……ううん、私は親友、だもんね」
「ん?うん!もちろん!」
本当にありがとう紅葉さん…おかげで少し救われた気がするよ
「なんなのあいつ……ムカつくんだけど……あ。いいこと思いついた♪クヒヒッ」
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