第32話 意外な弱点
夏休み始まって数日経った夜
私達は廃病院に集合していた
かなり昔に潰れた建物を住んでた人が
心霊スポットとして病院を建てて売り出すとかいう
かなり異例な場所だ
病人が亡くなったとかそういう話ではなく
本格的なお化け屋敷らしい
「はあ……」
「お姉ちゃん、着いてからため息ばかり」
「雪乃は楽しそうだね」
「うん、お化け屋敷初めて」
キラキラした笑顔で言う雪乃は頼もしいけど
雪乃は後輩ふたりと行くから
頼もしそうなのは先輩二人だけど、インターハイの練習で忙しくて来れていない
消去法で九十九さんになった
「ふふふ、遂に来たな、この時が……だが貴様はまだあたいに挑むレベルでは無い。出直してくるがいい。ではサラダバー」
「凪ちゃん、そんなこと言って逃げたらダメだよ」
(何故だか無性にサラダを食べたくなりました……)
「嫌やぁ逃げさせてぇ」
「私も流ちゃんもいるから大丈夫だって」
「そうですよ、頑張りましょう」
「うぅ……がんばりゅぅ……」
雪乃、友達とあんな風に喋るんだ
何だか遠くに行った気がして
嬉しい半面、凄く寂しい
雪乃がお姉ちゃん離れを頑張ってるんだ
私も、頑張ろう……
「レディースアーンドジェントルウーメン!!!」
「お、ちゃんとどっちの単語も女になってるな。お前にしちゃ珍しい」
「もぉ一色ちゃん!これぐらいの英語は、あたしにも言えます!先生と先輩たち以外は揃ったね!」
先生いないのか…流石に仕事抜け出せなかったか
順番決めが始まって、雪乃達が最初
私と九十九さんが2番目だ
「紅葉は行かねえのかよ?」
「あたし行ったことあるし、ここで待ってるよ!監視カメラから皆の怖がる姿楽しませてね!」
紅葉さんは言いたいことだけ言って
どこかへ走り去ってしまう
あの子だけズルくないか?とは思ったけど
まあいいか……
「ほら、もう順番来たぞ」
「え、あ、うん」
九十九さんの後ろに引っ付く形で中に入る
薄暗くて、所々血の跡のようなものがあって不気味だ
「せめて隣歩いてくれない?後ろだとはぐれるだろ」
「だ、だって…」
私が喋ろうとした時
『ドン!』と音が鳴って天井から骸骨が顔を出した
「ひぃ!?」と私は九十九さんにしがみついて怯える
「びびったぁ……おまえ、お化け苦手なの?」
「……うん」
「なんか意外だな…いや、昔もそうだったかも」
九十九さんは何か考えた末に手を差し伸べる
私がキョトンとしてると
「ほら、手。握ってやるから」
と私の返答を待たずに手を握って先導してくれる
その状況に、思わずドキッとしてしまう
「なんか、今思い出したけどさ。昔も夜道をこうやって歩いてたよな」
「そう……だったっけ」
「懐かしいなぁ、お前、その時もそんな感じだったぞ」
「……ごめんね、全然思い出せなくて」
「別にいいよ、こうやってまた友達になってるんだ、これ以上嬉しいことはねぇよ」
九十九さんの笑顔はどこか柔らかい
紅葉さんとかがいるとあまり喋ってくれないけど
私しかいない時は、普通に優しい女の子って感じだ
少し油断してると、また人魂のようなものが大量に出てきて
思わずビクッ!と驚いて、握ってた手を強く握ってしまう
「ウチが一緒にいるんだから、大丈夫だって」
九十九さんだって怖いはずなのに
なんてことないって顔をしてくれている
それに今の言葉……どこかで聞いたことある気がする
『ウチが一緒にいるから、大丈夫!』
……少しだけ思い出せた気がする
怖がりな私をいつも励ましてた…そんな子が
『あんたなんかといると虫唾が走るんだよね〜』
「おい……おいってば!大丈夫か?なんか震えてるぞ」
「へ?あ、ご、ごめん……」
今の……嫌な記憶まで呼び起こされてしまった
やっぱり私は、まだあの時のトラウマで
昔を思い出したくないと思っているのかもしれない
「もうそろそろ出口だぞ、がんばれ」
九十九さんにずっと励まされて、ようやく外に出れた
外には雪乃たち3人がわちゃわちゃしているのが見えた
「ごわがっだぁぁぁぁぁぁああぁあああ!」
「お疲れ様でした凪さん」
「凪ちゃんの怖がる姿面白かった」
「おどれらぁ〜あたいで遊ぶのはおもろいがぁ〜!」
そこまで会話して雪乃が私に気づいて近寄ってくる
「あ、お姉ちゃん、おかえり。大丈夫だった?」
「全然……」
「まだホラー苦手なんだね。お疲れ様…………何かあった?」
「え?なんで?」
「表情が暗いから、ホラーとは別に何かあったのかと」
「……まあ、ちょっとね。でも大丈夫、今はちゃんと友達がいるから」
「…うん、そうだね」
雪乃にまた心配させちゃったな
昔と違って、今は友達いるから、大丈夫
すると、紅葉さんが走って私達の所に来た
「あ、愛華ちゃん達いたー!んもう、どこ行ってたの?」
「どこって、お前がお化け屋敷行けって言ったんだろ?」
「えー?ひどーい!あたしまだ入ったことないのに〜」
…………んん???
「は?いや、お前入ったことあるから、ウチらだけで行けって」
「いやいや!そもそもあたしさっき来たんだよ?ちょっと遅れるってReinしたのに誰も既読つかないんだもん」
い、いや、そんなまさか……
「ねえ紅葉さん…レディースアンドジェントルウーメンってどんな意味か知ってる?」
「何それ?服の種類?」
私はその時
恐怖で倒れた
【おまけ 先生の苦悩】
あ゛〜〜〜
仕事終わんね〜〜〜〜〜〜〜
誰だよマジでこんなに貯めてたやつ〜(自分)
明日もインターハイの引率かぁ…
これは愛華達来るから手伝わせるとして…
『ピンポン』
あ?誰こんな夜遅くに
「こんばんは、先生」
「愛華か、肝試し楽しかったか〜?」
「死ぬかと思いました」
「たはは、気絶したお前見たかったなぁ〜」
「からかわないでください。あの、これ渡しに来ただけなので」
愛華の手にはアイスコーヒーだ
私の好きなコーヒーの苦さ加減を分かってる
愛華だからこその差し入れだった
「おぅサンキュ」
「じゃあまた明日、インターハイで」
それだけ言って愛華はさっさと帰ってしまう
夜遅くだから送った方が……と言う前にはいなくなっていた
これだけのために来たのかよあいつ
ん?なんか紙貼ってある
『お仕事頑張ってください』
…………なんなんだあいつ。腹立つ〜〜〜
恥ずかしいなら書くなっつの
ったく………もう少し仕事頑張るかぁ〜
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