第20話 嫉妬……?

最近、皆の様子がおかしい

妙によそよそしいというか

隠れて何かしているように思える

雪乃は私に引っ付かなくなったし

早乙女さんも私に一緒に帰ろうと促さなくなった

忍先輩も麗奈先輩も最近屋上に来てないし

皆忙しいのかな……?


今日もひとりでお昼休み屋上に行こうとすると

麗奈先輩とばったり会った

あからさまに動揺している


「先輩、今からお昼ですか?」


「あぁ、最近弁当を作れなくてな……今日も学食なんだ」


「そうなんですね……」


「すまない、最近構えなくてな」


「え、いや、別にかまって欲しいわけじゃ」


「じゃあ、またな」


私が否定しようとするとそそくさと逃げてしまう麗奈先輩

私がかまって欲しい…?いやそんなまさか

ありえない、今まで孤独に生きてきたのに

あの環境が当たり前になってきてる?


「そこ邪魔だぞー」


後ろから声をかけられ振り向くと二先生が居た

弁当を持ってる…


「屋上だろ?食べよーぜ」


「え、あ、はい」


ここ数日誰にも誘われなかったから

無意識に一緒に食べる流れになった

よく考えたら先生と2人で食べること自体は初めてな気がする

少しだけ沈黙が流れたあと、おもむろに先生が口を開いた


「落ち込んでんの?」


「え、なんで?」


「なんかそんな気がしたんだよ」


「……別に」


「私じゃ相談相手にはならんかぁ〜」


たはは、と笑いながらタバコに火をつける先生

いや、生徒の前で吸わないでよ、とは思ったけど

今は突っ込む元気は無い


「お前はさ、あいつらのことウザがってたし、クラスメイトって言い方してたけど、友達なんじゃねぇの?」


「……友達って言っていいか分からなくて」


「今更だろ〜紅葉の距離感とかバグりすぎだし」


それはそうだけど……

友達か……いいのかな、私がそう言って


『困った時はあたしを頼って!』


……うん、大丈夫


「ありがとう先生、少し軽くなった」


「おぅ、今度コーヒー奢れよ〜」


「台無しです」




私は弁当を食べ終え、すぐにクラスに戻る

クラスで何人かの女子と喋っている早乙女さんを見つけた

……早乙女さんがこんな風に色んな子と喋ってること自体は珍しくないのに

最近はよく私に絡んでるせいで忘れかけてたな

……ほんの少しだけ複雑な感情を抱きつつ、話しかける


「早乙女さん……ちょっと、いい?」


「ん?どうしたの無口ちゃん?」


「出来れば……2人になれるところで」


私がそう言うとギョッと驚いた表情をして

「皆ごめんね!行ってくる!」と皆に声をかけてから廊下に行く


「ど、どうしたの?あたしに呼びかけるなんて珍しいね?」


「その……ずっと帰り誘ってくれたのに、断っててごめん」


「え?そんなこと?無口ちゃんらしーけど」


「いや、その、それで最近絡んでこなくなったから……その……ちゃんと一緒に帰るから、いつもみたいに絡んで欲しい、なぁて」


私がしどろもどろにそう言うと

早乙女さんは口に手をおおってキラキラ目を輝かせる


「か、可愛い……」


「え?」


「んもう!雪乃ちゃんの作戦やめやめ!!こんなの心苦しいよ!!!」


雪乃の作戦……??と思ってると

九十九さんや忍先輩が顔出す


「ほら、1番先に紅葉がやめると思った」


「私は麗奈だと思ったんだけどなぁ〜」


え、なになに?と思ってると

忍先輩はごめんね?と手を合わせる


「ゴールデンウィーク、愛華ちゃんが来てくれるにはどうするかって話になって…」

「急にお前に絡まなくなったら寂しくて絡んでくるんじゃねぇか、って雪乃が言ってよ」


な……


「べ、別に寂しいとかじゃ……」


「でもさっき絡んで欲しいって」


「そ、そういう意味じゃ……」


そこまで言いかけて

雪乃がニコニコしながら顔を出す


「今のお姉ちゃんなら人間不信にならずに、寂しいが勝つと思ったんだ」


「雪乃……今日ご飯抜き」


「そんな……!」


なんか凄く恥ずかしい……

雪乃の差し金とはいえ、私そんなふうに思われてたのか

…まあいいか、事実なのを認めよう

寂しかったのは……本当だし


「普段はこんな性格悪いことしないからね!ほんとだよ!?」


「先輩、今雪乃の事軽くディスった?」


「あ、いや違うのぉ〜〜!」


「で?本題言ったらどうよ?」

「あ、そうだね!ね、無口ちゃん、ゴールデンウィーク、忍先輩家でお泊まり会したいんだ!どう?」


「お泊まり会……その……行ってもいい」


「無口ちゃんの口から行きたいって言葉が出るなんて……!うん!じゃあよろしくね!」


本当にこの人達には振り回されてばかりだ

……でも、それもわるくない





【おまけ 学食中の麗奈先輩】


(あの別れ方は宜しくなかったんじゃないか……?神楽さんに嫌われてしまったらどうしよう……今からでも一緒に食べようと誘うべきか……?いやしかし、作戦を私がダメにする訳には…あぁ、私はどうしたら……)


「風紀委員長どんだけ食べるんだろ……」

「ずっと食べっぱなしだよね……」

「なんか悩んでるのかな……」



結局、忍が報告するまで学食で悶々としていたらしい

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