最大公約愛

柊 こころ

最大公約愛


あまりにも人は残酷だ。

この狂った世の中、どう泳いでいくか

上手く振舞っていくか、分からない。


狂った世の中で唯一の光が見えた。


桜、とても綺麗な名前だった。

だけど、病弱で病院から出られなかった。


「私は元気だよ!大丈夫!

ルイは気にしないで!」


微笑んでいるが、表情は悲しい顔をしていた。なんというか、世の中が怖いという感情なのだろう。


桜とは手紙の交換をしていた。

何気ないやり取りが、僕はとても嬉しかったんだ。

いつか、助けになれれば…と

高校の僕は勉強に励んだ。


いつか医者になりたい。

桜を助けたい。



でも、桜の病状は悲惨なものだった。


治らないと言われる

「多発性骨髄腫」


血液が全身に癌が回ってしまう。

ステージどころの話じゃなく、時間の問題まで迫っていた。



急がなきゃ、急がなきゃ。

懸命に勉強をした。この腐った世の中で

僕は何が出来るだろう。


桜の笑顔が浮かんでは

涙が零れるんだ。



必死に勉強をして、勉強して

必死に受けた医大に合格した。


これで、もしかしたら…桜を助けられるかもしれない。


でも、桜は肩の力が抜けたままの呼吸をする。

ぜぇ、ぜぇ、と。

言葉も出なくなり、口の中は乾いて血だらけになっていた。


これは、終わるかもしれない。

桜がいない世界、怖すぎる。

僕はふと思ってしまった。


それなら…





ピーーーーー



桜の寝室と共に流れる

心臓が止まる音


その音と共に

僕は



首を吊った。


これから一緒だね、桜。




狂気に満ちているかもしれない

ただ桜を愛していた。


あの苦笑い、嫌だったかな?

僕は、苦しかったよ。


でも、君の最期の姿を見て安心したよ。



キミハボクノモノ

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