17
あの日、最後に見たオバケの姿は確かに朧だった。名前を呼んでみたが朧は既に消えており、そのまま二度と姿を現さなかった。今思えばあれは俺の生み出した幻だったんじゃないかと思っている。俺がずっと朧に言えなかった想いを後悔していたから……。
「どうしたんですか?」
ぼんやりと考え事をしていたら、男が不意に話掛けてきた。
「……別に」
そう返すと男は徐に背負っていたリュックを膝の上に乗せ、あるモノを取りした。
「あの、コレ見て下さい……」
「あっ?」
男は取り出したモノを掌に乗せながら俺に見せる。それは、ご当地限定と書かれたキーホルダーだった。
「僕が意識不明の時に握り締めていたモノなんですけど…このキーホルダー、僕の持ちモノではないんです。クシャクシャになった紙袋に入っていたこれをいつの間にか僕が握り締めていたらしくて……」
俺は男の話をそっちのけでキーホルダーを凝視する。それは修学旅行の時、オバケ───もとい、朧に買ってやったあのプレゼントに酷似していたからだ。
「不思議ですよね…?僕の知り合いに聞いたけど、皆このキーホルダーの事は知らないって…。それに僕、この地に一度たりとも行った事ないんですよ」
男は掌に乗るキーホルダーを大切そうに握り締めると、付け足すように小さく呟いた。
「でも…僕はコレを手放す気にはなれなかった」
そう口元を緩めて微笑む男に、俺は静かに口を開いた。
「なぁ、お前は────」
そう告げた時、タイミング悪く電子音が鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます