16

「なんか色々スイマセン……。僕、いつもこうなんですよ。何をやっても上手くいかなくて、数年前に目覚めた時も……」

「数年前に目覚めた?」


男は意味深な言葉を発した後、自身の首を軽く撫でた。そこには何かを巻き付けたような痣が薄らと伺える。


「その痣……」

「あ、ごめんなさい。暗かったですよね?」

「いいから。それについて答えろ!」


俺の質問にしおらしく顔を伏せた男は、ぽつり、ぽつりと話す。


「これは、その…学生時代に嫌な事があって。それで……」

「吊ったのか…?」

「……ハイ」


惚れたはれたのいざこざで自暴自棄に陥り、突発的にやったと男は告げた。幸い発見が早かった為、命を落とさずに済んだという。


「それから暫く意識不明だったらしくて、気付いた時には病院で横になってました。アハハ…」

「そーかよ」


自傷気味に笑う男に呆れながらも、俺は朧の事を思い出していた。

『好きだ』と告白したあの日以来、二度と学校に来ることは無かった朧。担任も朧のことは何一つ触れず、気付くと俺は二年に上がっていた。


そして再び出会ったのが、あのオバケの姿をした朧だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る