15
人が行き交う街中で、スマホを片手に練り歩く。
『今日ヒマか?それとも大学?』
画面に記させた文字を見つめながら、溜め息を吐き返事を返す。
『暇だがオメェとは遊ばねぇ!』
スマホをポケットに突っ込んで歩き出そうとした矢先、前から来た奴とぶつかった。
「っ……」
「わっ、ごめんなさい!」
ぶつかってきた相手は俺より背の低い同年代ぐらいの男だった。ツバのついた帽子と眼鏡で顔はよく見えないが、手に持っていた空の紙コップを震わせ、いかにも怯えた様子で俺を見つめていた。かく言う俺はコーヒーが染み込んだTシャツに頭を掻き毟る。
「ホントにごめんなさい!!」
「いや。俺も余所見してたから───って、オイッ!」
平謝りで頭を下げたソイツは、いきなり俺の手を掴むと走り出した。
「とりあえず汚れを落とさないと!」
「いや、いいって!おい、コラ離せ!!」
言うことを聞かない男に連れてこられた場所は、近くにあった人気のないコインランドリーだった。中に入ると、男はいきなり『スイマセン。失礼します!』と俺の服を強引に脱がし、全自動洗濯乾燥機の中へと押し込んだ。
「これでヨシ!」
「ヨシ!じゃねーよ!!」
半分キレ気味に返すと、男は俺の方に向き直り頭を下げる。
「洗濯してお返しします!」
「それまで俺に半裸でいろってか…!?」
「あっ、そうでしたスイマセン!!」
男は謝りながら羽織っていたパーカーを脱いで手渡してきた。
「これ、良かったら……」
「いや、どう見ても小せぇだろうが!」
「スイマセン。これしか無くて…なんなら買ってきますか?」「もうコレでいい。余計な事すんな!」
「……ハイ」
忙しない男を宥めてから仕方なくそのパーカーを羽織り、店の端に置かれていた横長の椅子に座る。男は俺の目の前で立ち尽くしていたが、そこにいたら邪魔だと横に座らせた。暫くの間は二人揃って黙っていたが何を思ったのか、男はいきなり身の上話を始めた。
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