12

その瞬間、ふと夢の情景が蘇る。


夕焼け色に染まる教室。


目の前のオバケと重なる様に。


突然、朧が現れた。


「君が好きだと言ってくれた。それだけで十分だよ」


此方に微笑む朧に俺は呆然とする。


「……お、ぼろッ?」

「気持ち悪かったよね?ゴメンね、新生くん」


眉を下げて申し訳なさそうに謝る朧に、俺の胸はズキリと痛んだ。


「いや、違う…アレはッ「もう良いんだ。最後に告白出来ただけでも、僕は幸せだったよ」


俺の言葉は途中で遮ぎられ、机に座りながらプラプラと動かす足を止めた朧は『ありがとう』と笑って告げた。そんな朧に手を伸ばすが、風で揺らめくカーテンが朧を隠すと、そのまま見えなくしてしまった。


「───朧ッッ!!」


気付くと朧は何処にもいなかった。目の前には真っ暗な教室がただただ広がっており、何事も無かったかの様に静まり返っている。


「ッ……!?」


そこで我に返った俺は、いつの間にか姿を消したオバケを探した。


「何処に行ったんだ?なぁ…出てこいよ!」


声を掛けてみるものの返事は無く、それから何時まで経ってもオバケは姿を現さなかった。

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