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修学旅行が終わりを告げると、今度は長期の夏休みが始まろうとしていた。


「明後日から夏休みだぞ?」

「良かったね!」

「なんでだよっ!!長期休暇だぞ!?」

「君って見た目のわりに学校好きだよね?」

「はぁ?ちげぇし。つか、どういう意味だコラ。何気にディスってんじゃねぇぞ!それに、お前の格好暑苦しいわっ!!」

「そうかな…?」


昼間と違い熱の籠もらなくなった放課後の教室は、少しだけマシになった温度を保っていた。そんな中でも平然と学ランを着るオバケと夏服を着ているにも関わらず、まだ暑い俺はYシャツのボタンを二三個外して窓を開けたままお化けと話していた。


「でも、違うって…わざわざ放課後に残ってるのに?」

「俺が残ってるのはテメェと一緒に話してやろうと思ってるからだよ!」

「へぇ…そうだったのか。知らなかった」

「こ、の…クソ鈍感野郎ッッ!!」


マジで知らなかったという態度にフツフツと怒りが沸き上がる。熱さのせいか、最近はやけに苛立っていた。


「だいたい、テメェ以外に残る要素が何処にあるんだよ!?」

「学校が好きだから…とか?」

「んな奴は稀だろうがッ!」

「そうかなぁ~」

「いるとするならテメェくらいだろ!!」


そう言い切るとオバケは黙ってから顔を逸らし、窓の方を向いた。開いた窓からは心地良い風が入り、俺の前髪を静かに揺らしていた。オバケは窓の外を見つめながら口を開く。


「学校かぁ……好きだったのかな?」

「さぁな」

「僕には記憶が無いからなぁ…」


夜風を浴びながらポツリと呟くオバケにバツが悪くなる。


「好きだったんじゃねーの?お前がココに現れたって事はよぉ」


溜息混じりに吐き出すと、オバケはまた俺に顔を向けた。


「そっか」

「……多分な」

「うん。きっとそうだね!」


涼しい風がまた吹くと、オバケは風を見るように顔を上げる。


「風…気持ち良いね?」

「ん。なぁ…」

「何?」

「夏休み入っても遊びに来てやるよ」


そう伝えると、オバケは『やっぱり学校好きなんだね』と笑って告げた。

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