6

「どうしたの?」

「あ、悪ぃ……」

「ううん。ホントにありがとう!」


ぼーっとしていた事を謝ると、オバケは首を振って土産の礼を言った。俺は手に持つ紙袋をクシャリと握り締める。


「そんなに強く握ったら壊れるよ?」

「別にいい」

「せっかく買ったんだから……」


そう言って手を伸ばしてくるオバケに、俺はわざと紙袋を突き付けた。


「なら、貰えよ!」

「あっ」


握っていた拳をパッと開くと、紙袋はすぐに落下した。咄嗟にオバケが手を伸ばす。


───分かっている。


コイツは拾うことが出来ない。


すり抜けて落ちていくんだと……。


カサリと紙袋が音を立てた。



「……ウ、ソ」

「はっ?」


唖然と呟くオバケ。そう、それは何とも不思議な光景だった。オバケの透き通る掌の上にクシャクシャの紙袋がちょこんと乗っかっていた。俺もオバケも一瞬何が起きたか分からずにソレをただジッと見つめていた。それから数分も経たずしてオバケは紙袋を優しく握り締めた。


「僕にも…触れられるモノがあったんだ」


口元を綻ばし、静かに微笑むオバケに小さな溜息を吐く。


「ソレ、欲しけりゃくれてやる!」

「うん。ありがとう」


暗い教室には、二人の声が響き渡っていた。

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